第305話 ジレンマ

「作ることは作るけど、お店に出しているのはクッキーだけだよ!」

「プリンとかもお店に出したいけど、手作りプリンは日持ちがしないからね!!」


 俺からの質問を、笑顔で答える真優美さん。


(真優美さん。プリンも作れるんだ!)

(料理も美味しいし、こんな住宅街でお店を開いているより、繁華街で開けばもっと儲かると思うのに…)


 俺は、そんなこと思いながらクッキーを食べる。

 真優美さんは美人だから、繁華街で店を開けば一気に、有名店に成れるだろう!!


 ……


 しばらくの間。俺は真優美さんとお茶を飲みながら雑談を楽しんでいると、陽葵先輩が帰って来たらしく、玄関の方から陽葵先輩の声が聞こえてくる。


「ただいま~~♪」


 陽葵先輩の足音が……玄関から段々と、リビングの方へ近付いて来てリビングのドアが開く。


『ガチャ♪』


「お姉ちゃん。ただいま!♪」


「……あっ。三國君もこんにちは!」


 学園制服姿の陽葵先輩が、リビングに居る真優美さんに笑顔で声を掛けた後、俺の存在にも気付いて、俺には和やかな表情で声を掛けてくれる。


「お邪魔しています…。陽葵先輩!」


「お姉ちゃんの元に遊びへ来たの?」

「三國君?」


 俺は和やかな表情で陽葵先輩に言うと、陽葵先輩は微笑みながら聞いてくる。


「はい!」

「真優美さんに、少し相談したいことが有りまして…///」


「そうなんだ!」

「私が言うのも変だけど、ゆっくりして行ってね!!」


 陽葵先輩は笑顔で俺に言い終えると、それ以上の会話はせずにリビングから出て行く。


『パタン!』


 陽葵先輩の足音が遠く成っていくのを耳で聞きながら、俺は真優美さんに和やかな表情で話し掛ける。


「陽葵先輩は普段。この時間に帰って来るのですか?」


「そうねぇ~~」

「大体……この時間が多いかしらね?」


 思い出すような表情で言う真優美さん。

 俺は表情を変えずに、真優美さんに質問を続ける。


「では、この時間にうかがえば、陽葵先輩が居る可能性は高いのですよね!」


「うん……まぁ、そうだけど……三國君!」

「やっぱり、気に成る……陽葵が?」


 真優美さんが、尋ねる表情で聞いて来る!

 俺は、恥ずかしそうな表情で答え始める。


「はい……今日香ちゃんに好かれてながらでも、俺は陽葵先輩が気に成ります!///」

「出来れば、真優美さんと同じように、陽葵先輩とも親友関係を深くしたいですね!!///」


「ふん、ふん。なるほど!」

「三國君の中では今日香ちゃんより、陽葵を求めているんだ!!」


 真優美さんは顔を、にやつかせながら言う。

 けど、少し困った微笑み表情に変わって、真優美さんは言い始める。


「だけど、陽葵は異性に関心を持ってないからね…!」

いまだに浮いた話しも一つも聞かないし、陽葵の口から男性親友の名前が、出て来ることも無いし……」

「お姉ちゃんながらでも、少しは心配しているのよね~~///」


(これは、陽葵先輩に恋人はいないと捉えて良いのかな!)

(陽葵先輩を狙う男子は多いが、誰かと付き合ったとかのたぐいを一切聞かない!!)


(もし、真優美さんが陽葵先輩の仲立ちしてくれれば、俺は一気に陽葵先輩に近付けるのではないか!!)

(あっ、でも……さっき、俺は今日香ちゃんの仲介役を真優美さんに頼んでしまったな!///(汗))


 流石に、今この場で、陽葵先輩との仲を取り持って下さいと、真優美さんには言いにくい!!///

 それに真優美さんも、俺を陽葵先輩と関係を深めさせるのは警戒していた筈だ。


 今。この場で下手なことは、言わない方が良いだろう。

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