第265話 単独で挑む

「中等部の男子達でも憧れている人なのに、兄ちゃんが陽葵先輩を目指すの!?」

「兄ちゃんの大好きな戦争物では無いけど、信長の野望より無謀すぎるよ!!」

「兄ちゃんは織田家では無く……弱小大名家なのに…//////」


 虹心はかなり厳しい口調で言ってくれる!!

 だが、虹心はまだ言葉を続けるようだ。

 けど、弱小大名家とは一体何処を指して、虹心は言っているのだろう?


「もし、それで兄ちゃんが負けたら……今度こそ、学園に居られなくなるよ!!//////」

「いや……もしかしたら、この地域にも居られなくなるよ!!//////」


「二村さんの時は、岡谷さんが助けてくれたから良かったけど、今度もそう上手く行くとは限らないよ!!//////」


 虹心は頬を染めて、悲しい表情で言う!?

 虹心の中でも、陽葵先輩の地位は十分理解している感じだ。


「うん…。虹心の言っていることは全て事実だ…!」

「だが、高い山が有れば、その山を目指すように……男も上を、目指さなければ成らないのだ!!」


 俺は真剣な表情で虹心に言うが、虹心は呆れ返った表情で言う!?


「いや、いや、無理だって!!///(汗)」

「止めときな! 痛い目に遭ってお仕舞いだよ!!///」


「それに……学園行事以外で登山をしたことが無い人が、格好良いこと言っても全く説得力が無いよ!!」


 最後の文章は、怒りながら言う虹心!?

 虹心は、俺からの支援要請を拒否するつもりか!?

 彼女作りを応援すると言っているのに!!


「だが、虹心!」

「俺は、―――」


「お待たせ~~。虹心ちゃん!」


 俺が虹心を説得させようとしたタイミングで、陽葵先輩が戻って来てしまう。

 陽葵先輩が戻って来てしまったので、俺と虹心のとの会話も終わりに成ってしまう。


「じゃあ、虹心ちゃん。場所を教えるね~~♪」

「この駅から―――」


「はい。はい。―――」


 陽葵先輩が和やかな表情で、虹心に新倉洋菓子店の場所を教え始めて、虹心はそれを笑顔で聞いている。

 俺は澄ました表情で、グラスに入っているアイスティーをストローで飲み始める。


(虹心からの支援が期待出来ないと成ると……俺一人で挑まなければ成らないのか…)

(陽葵先輩は優しい人だからきっと、話し掛ければ普通の対応をする人だろう!)

(日本軍のカミカゼには成らない筈だ!!)


(けど、陽葵先輩と言葉のキャッチボールが出来ても、杓子定規の対応をされたら意味が無い!)

(俺は好意を求めて、陽葵先輩に話し掛けるのだから…)


「ありがとうございます。先輩!」

「凄く分かりやすかったです!!♪」


「いらっしゃーませ~~♪」

「あら、こんにちは、速見さん!!」

「お久しぶり~~。今日は七瀬ちゃんも―――」


 俺が頭で考えている間に、陽葵先輩は虹心に場所を教え終わったようだ。

 喫茶店内も、常連さんだと思われる人達が入り始め、真優美さんの陽気声が聞こえてくる。


 俺には残された時間は、もう無い!

 少しでも、陽葵先輩と交流を深めないと!!

 だが、虹心は和やかな表情で俺に話し掛ける。


「さて、兄ちゃん!」

「大分、真優美さんの店にお邪魔しちゃったし今、譲羽先輩から聞いたらケーキ屋さんの閉店は18時半だけど、ケーキ売り切ったら店を閉めちゃうんだって!!」

「だから、そろそろ行こうか!!」


(虹心は遠慮無く、俺の梯子はしごを外すな!!///)

(俺はまだ、陽葵先輩とろくに会話をしていないんだぞ!!///)

(本当に虹心は、俺への支援をしないのだな……)


 だがこのまま、虹心の言葉を了承して、俺は席を立つ訳には行かない。

 今日、陽葵先輩と面識が出来たが、学園内で気軽に声を掛けられるレベルでは無い!!


 今どうしても……この場で、橋頭堡きょうとうほを築かなければ!!

 俺は決死の覚悟(!?)で、陽葵先輩に緊張した表情で話し掛ける。


「あっ、あの……譲羽先輩!」

「譲羽先輩の趣味は何ですか…?」


 無理矢理出した言葉が、相手の趣味を聞く言葉で有った……だって、それしか思い付かなかったから…///


「えっ!? 趣味!!」

「三國君は、私の趣味を知りたいの…?」


 陽葵先輩も不思議そうな表情と言うより、不信感を持った表情で言う!!

 俺はこのまま……花と散って仕舞うのだろうか……

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