第258話 妹と先輩

 陽葵先輩は住居エリアから、喫茶店エリアに入るが、カウンター付近で立ち止まる。

 どうやら、俺たちの存在に気付いたようだ。

 陽葵先輩は穏やかな表情で、真優美さんに話し掛ける。


「あれ? お姉ちゃん!」

「お姉ちゃんの席に座っている人達は……お客さん?」


「えっ!?…///」

「えぇ……そうよ。お客さんと言うより、親友に近い関係!///」


 真優美さんは困った微笑み表情で、陽葵先輩に言う。

 俺は無事に陽葵先輩と出会えることが出来たが、真優美さんはどうするのだろうか?


 陽葵先輩はカウンター付近で立ち止まっていたが、俺たちの方へ近付いて来る!!

 何と、陽葵先輩みずからが、こちらへ来てくれるとは!!


「♪」


「……」


「……」


 俺はそれを、期待の眼差しで見ている!!

 真優美さんはそれを制止(!?)しようとはしないし、虹心も澄ました表情で見ている。

 陽葵先輩が俺たちが座っているテーブルに近付いて、真優美さんより俺たちの方へ顔を向けるが……


「あれ…?」

「あなたって……もしかして。夏の小演目開催時、舞台裏に居た子だよね?」


「…印象深い子だったから良く覚えている。あの時はお疲れ様でした!」

「今日はお姉ちゃんのお店へ、お茶をしに来てくれたの?」


 何と、陽葵先輩は虹心とは面識が有るらしくて、虹心に不思議そうな表情で話し掛けている。

 虹心は俺にそんな事を、一言も言っていなかったぞ!!

 虹心は穏やかな表情で、陽葵先輩に話し掛ける。


「あっ!」

「覚えていてくれたんですか……高等部生徒会の先輩!///」

「お久しぶりですと、こんにちは!!」


「はい! その元気な声、良く覚えています!!」

「こんにちは……えっと、ごめんなさい!///」

「名前は、まだ伺っていなかったわね!!(汗)」


 陽葵先輩は申し訳なさそうな表情で言うが、虹心は笑顔で言う。


「大丈夫ですよ!」

「では、私から自己紹介を始めますね!♪」

「中等部三年生。三國虹心と言います!」


「そして、私の正面に居る人は私の兄さんで有り、高等部二年生の武蔵と言います!!」

「私には兄が二人居まして、二人目の兄に当ります」

「今日は武蔵兄さんと、真優美さんの所へ遊びに来ました!♪」


 虹心は気を利かしてか、俺のことも同時に紹介してくれる。

 陽葵先輩は虹心の方から、俺の方へ顔を向けて軽く会釈をする!


『ぺこり』


「あっ、初めましてとこんにちは!」

「先ほど、妹に紹介された。武蔵です!!(キリッ)」


「…初めまして。譲羽ゆずりはと言います」


 俺はイケメン風を装って、爽やかな表情で陽葵先輩に挨拶をする。

 だが、陽葵先輩は俺への会話を望ます、澄ました表情で挨拶を言って、再び虹心の方に顔を向けて、今度は穏やかな表情で話し始める。

 真優美さんはそれを静かに見ている。


(俺の中では好感度抜群の挨拶で有ったのに、陽葵先輩に相手にされなかった!!(泣))


「…どう呼ぼうかな?」

「本来なら三國さんと呼びたいけど、同じ学園に兄が居るから、虹心ちゃんって呼んで良いかな?」


「はい!」

「私は、それで大丈夫ですよ。先輩!!」


「ありがとう。虹心ちゃん!」

「じゃあ、今度は、私から自己紹介をするね!!」


「高等部三年生の、譲羽陽葵ゆずりはひまりと言います!」

「虹心ちゃんの知っての通り、私は葉月高等部生徒会 副会長をしています」

「後、部活・クラブ活動の取り纏め役も兼任をしています!!」


「私は今年度で卒園(卒業)してしまうけど、後半年間よろしくね!♪」

「三國虹心ちゃん!」


 陽葵先輩は和やかな表情で、虹心に自己紹介をしている。

 陽葵先輩は虹心と面識が有るから、スムーズに会話が進んで行っている。


 俺はその光景を、澄ました表情で見ているしか無かった……

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