第78話 伊藤と二村

「彩織とは……幼なじみと言う程の関係で無いわ」

「私が葉月学園に入園する直前に、彩織の一家が近所に引っ越して来たのよ」

「近所同士の関係だから、自然と親友にね……」


「けど、さっき言ったように、彩織の性格はそんな性格だから案の定、男子の親友はたくさん出来たけど、女子達からは私と同じで煙たがれて居たわ!」

「それでも、彩織は私のような自衛行動は一切せずに、そのやり方を続けた……」


「結果的に……本当の親友は私と後は、クラブ活動内でしか居ないのでは…?」

「三國君のクラス内でも、彩織と本当に仲良く話している、女子は居ないでしょう?」


 伊藤さんに落ち着いた口調で言われたので、俺は教室内の状況を思い出してみる……


(……二村さんが女子に話し掛ければ、女子は普通に言葉を返すが……女子たち自らが、二村さんに来ることは、確かに少ないな!)

(二村さんは何時も笑顔が絶えない人だから、そう言われるまで、疑問に感じなかった……)


「でしょ! 三國君…」


 伊藤さんは、同意を求める口調で言う。

 俺はそれを、驚いた口調で返事をする。


「……今まで、気付かなかった!」


「…気付く訳無いよ!」

「彩織も一人で居るのは嫌な子だから、相手にされなくても、自ら輪の中に入りに行く子だから」


 伊藤さんは少しだけだが、興奮した表情で話す。


「凄い行動力だね……。二村さん!」


「……三國君は彩織のクラブ活動。何処か知っている?」


「確か……卓球だったよね」


「そう! 卓球!!」

「卓球は、ソフトボールやバスケットの様なチームワークは必要なくて、一人若しくは二人でプレーするから、彩織がクラブ内で極端に干される事は無いわ!」


 やはり二村さんが深く絡む部分は、感情が表に出て来る伊藤さん。

 親友だから、当然か。


 俺は『干された』のキーワードが気に成って、伊藤さんに少し“びっくり”しながら質問をする。


「二村さんは過去に、干された事が有るのですか!?」


「……完全に干される事は無かったけど、クラスメイトの女子達から嫌がらせは受けたとは聞いたわ!」


「美人も、色々と大変なんですね……」


 俺は呟くと、伊藤さんは少し微笑みながら話してくる。


「……三國君。少しは理解してくれた?」

「普通の人より少し顔立ちが良いだけで、“ちやほや”されて喜ぶ女性も居るけど、私の場合は普通が良かった……」


「……私も早く、彼氏を作るべきかね?」

「そうすれば……彼氏が私を守ってくれるはず」


「伊藤さんなら直ぐに、素敵な彼氏が出来ますよ!」


 俺は笑顔で伊藤さんに声を掛けるが、伊藤さんの表情は、少し落ち込んだ表情で言い始める。


「……心に決めた人が居るけど、私の口から言うのもね」

「それに、その人に迷惑が掛かるわ!」


(伊藤さんに告白されて、迷惑する男性何て居ないよ!?)

(もしかして……彼女が既に居る男性とか!?)

(そう成ると兄の虹心では無いが、どうしようも出来ないな…)


「でも、私のことは良いわ!」

「まずは、三國君と彩織ね!!」

「三國君は、急遽現れたライバルに悩んで、私の所に相談へ来たで良いのよね?」


 伊藤さんはさっきまでと打って変わって、力強い表情で言い始める!?

 それだけ、俺や二村さんを心配しているのか!??


「はい!」

「そう成ります!!」


「昨日の今日の関係だから、進展はこれからだし、三國君も彩織の事は知っている様で知らないでしょ!」


 伊藤さんは澄ました表情では無く、やや興奮気味口調で言う!

 俺にとっては心強いが……


「はい。正にその通りです」

「二村さんの、RailのIDすら知りません……」


「あの時……彩織は、三國君に教えてなかったからね!」


 伊藤さんは呆れた口調で言う。


(伊藤さんも気付いていたんだ!?)

(それなら、その時に伊藤さんがアドバイスをすれば良かったのに!///)


 俺は一瞬そう感じたが、変な所で伊藤さんを恨んでも仕方なかった。

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