第51話 灯台もと暗し

(真の伊藤さんの姿を見られたのは大収穫で有るが、二村さんが俺に好意を持っていた何て、全然気付かなかった……)


 この時点で、虹心の作戦は大成功を収めると言いたいが、俺はこのまま二村さんと関係を深められるのだろうか?

 小鞠ちゃんは俺のことを好いていてくれるけど、“異性”では無く“兄”としてだから問題は無いだろう……


「////////////」


 伊藤さんが俺に向けて話している中、二村さんは真っ赤な顔を両手でまだ隠していた。

 その光景を、虹心と小鞠ちゃんは呆然と見ていた……


(虹心と言い二村さんと言い、“灯台もと暗し”ばかりだよ……)


「ほら! 彩織!!」

「三國君に、言うことが有るでしょ!?」


 伊藤さんは発破を掛けながら、二村さんの背中を“両方の意味”で押す。

 二村さんは手で顔を隠すのを止めて、困った笑顔で話し始める。


「……三國君!///」

「今でも、仲良しだと私は思っているけど、もっと仲良しに成ろうか…?///」

「けど……親友からだよ!///」


 最後は頬を染めながら、嬉し恥ずかしそうに言う二村さん。


「……//////」


 俺は本当に、言葉が出なかった…。俺は今まで何をやっていたんだ!?

 見えない敵に恐れて、それから逃げ出して、勝手に自滅していただけでは無いか!!


 親友でも、喜んで二村さんと関係を築きたい!!

 学年、一位・二位を争う二村さんが、俺に好意を持っていたなんて……夢では無いよな!?


「……三國君は、彩織の気持ちを受け取らないの?」

「それか三國君は、やっぱりシスコン…?」


 伊藤さんが冷静な口調で、俺に突っ込みを入れてくる中、俺は二村さんに頬を染めながら、落ち着いた口調を装って話し掛ける。


「二村さん!///」

「俺は、優しいしか取り柄が無い男ですが、それでも宜しければ…!///」


「私は、優しい人が大好きだよ!♪」

「三國君!!///」

「是非、仲の良い親友からスタートしましょう!!」


 二村さんは嬉し笑顔の表情で言う。

 俺もその言葉に、元気良く返事をする。


「はい!!///」

「二村さん!!//////」


 ひょんな事から、俺は二村さんと関係が生まれた!!

 俺が言うのも変だが、俺って何処に魅力が有るのだ!?


「…これで、兄ちゃんにも春が来そうだ♪」


「……//////」


 虹心は嬉しそうに言っているが……小鞠ちゃんは、本当に呆然としていた!?

 でも、呆然では無く、茫然としている感じでも有った!!

 小鞠ちゃんは、お兄ちゃんを求めているので有って、俺を求めていない筈だが??


 ☆


「じゃあ、三國君!///」

「月曜日にね!!」


 二村さんは元気な声で、俺に別れの挨拶を言い、俺も元気な声で挨拶をする。


「はい!///」

「二村さん。月曜日に会いましょう!!」


「伊藤さんも、今日はありがとうございます!!」


「三國君…。私は何もしていないわよ」

「じゃあね…」


 俺は伊藤さんに笑顔でお礼を言うが、伊藤さんは澄ました表情で言う。

 う~ん、立派な演技力だ!!


 二村さんと伊藤さんが離れて行くのを俺は見送っていると、虹心は満面な笑顔で俺に声を掛けてくる。


「いや~~、兄ちゃんにも春が来た♪」

「私の作戦は大成功!!」


「そのお礼として、カラオケは全額、兄ちゃん持ちだね♪」


「虹心……ありがとう言いたいけど、こんなに買い物して、今からカラオケなの?」


 俺の両手には、虹心と小鞠ちゃんの買い物袋をたくさん手に持っている。

 時間まだ十分有るが、俺はさっきのやり取りで、かなり疲労を感じていた。

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