グローリアス学園閉鎖宣言
学園生と騎士団の騎士達が、次の鐘の音が鳴る頃になると続々とグローリアス校舎前の園庭に集まってきた。
普段学生と騎士が一堂に会することのない分、皆、今のこの異様な状況に戸惑いの色が見てとれる。
「なんなのかしらね。こんな夜に呼び出し、しかも騎士団もだなんて……」
「何かあったんでしょうか? 隊長方も先生方も、深刻そうな様子ですし」
集まった生徒、騎士の前に並び出ている隊長達、そして教師陣の表情は重く、真剣そのものだ。
それがまた皆の不安を助長させる。
ゴーン、ゴーーン……。
魔石灯で照らされた夜のグラウンドに響き渡るグローリアスの鐘の音。
同じ場所で聞くにしても、夜に聞くのと昼間に聞くのとでは感じ方が随分と違って聞こえる。
重苦しい空気の中、大人バージョンのフォース学園長と大司教、そして先生が全員の前へと姿を現した。
「皆、突然こんな夜に集まってもらってごめんね。今回急遽集まってもらったのは、君たちに選択してもらうためだ」
そう紡ぎ出したフォース学園長の言葉に、ざわめきが広がる。
それを手で制して、彼は落ち着いた様子で続けた。
「君たちも最近のグレミア公国とのことは耳にしたことがあるだろう。セイレはグレミア公国、そしてベラム国、ロンド国に狙われ硬直状態に陥っていた。姫君の戴冠式で落ち着くと思われていたけれど、それはなかった。グレミアは────ここ、セイレに侵攻してくる」
その発言にざわめきはより一層大きなものになって広がった。
戸惑い。
不安。
さまざまな感情が一つになる。
「クロスフォード騎士団長から詳しい話がある。静かに聞いてくれ」
そういうとフォース学園長は、背後の先生へと目くばせをし、先生はそれに頷くと前へと進み出た。
「グレミア公国の大公カルム大公は、このセイレを手に入れるために今、ベラムから武器を、ロンドから魔力増強剤を買い込んでいるようだ。そのことからしても、次期戦争になることは間違いない。そして奴らは──ここを狙ってくる……」
「ここを!?」
「グローリアスが戦場になるの!?」
「私たちどうなるの!?」
騎士達はある程度の覚悟はできていたのだろう、その時が来た、と神妙な面持ちで先生を見つめ、グローリアスの生徒からは不安の声が矢継ぎ早に上がった。
無理もない。
だってまだ15〜18の、子どもでも大人でもない微妙な時期の子達だもの。
覚悟なんてあるわけがない。
「これからグローリアスは授業どころではなくなる。先生方も戦いに備えなくてはならない。騎士はここに残り、戦争に備えて体制を整える。三カ国分の勢力だ。それに対抗するための準備で忙しくなるだろう。生徒達諸君は……ここに残っても良いというものがいれば力を求めたいが──無理強いはしない。君たちは学生だ。守られる権利がある。だから選んで欲しい。明日一日、猶予を与える。残るものは残り、去るものは去るということを明後日のHRまでに担任へ申し出るように」
それを問う先生は、傍目には表情が変わらないのだけれど、私にはその先生の苦しい表情がよく見てとれた。
そして先生の言葉が終わり、フォース学園長が再び口を開く。
「皆、ごめんね。……グローリアスは──閉鎖する──……」
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