学園旅行〜先生を悩殺し隊〜
水着姿で先生を悩殺してやるんだから!!
見てなさい!! 大人の色気!!
見てなさい!! ボンキュッボン!!!!
──って、息巻いていた時期が、私にもありました。
はい、ごめんなさい。
調子乗りました。
これは……人前に出る勇気がないぞ……!!
桜色のブラトップにスカート。
ちょっと……うん、結構、露出が多い!!
イラストで見る分には可愛くて、これだ!! って思ったんだけど、いざ着てみると……は、恥ずかしい……!!
先生を悩殺するとかそれどころじゃない。
私が絶えられるかどうかよ!!
「ヒメー?」
「!!」
ま、まずい!! 皆もう着替え終わったの!?
「着替えまだー?」
「お、終わりましたー……けど……」
私が返事をした刹那──バァンッ!!
勢いよくドアが蹴破られた。
ノックぅぅぅぅっ!!!!
「あら、着替え終わってんじゃない」
「いつまで経っても来ないから、心配しましたわ」
「うぅ……ごめんなさい」
私が羞恥で縮こまりながら言うと、2人はそんな私を見てからパァッと目を輝かせた。
「ヒメあんた、似合うじゃない!!」
「えぇ!! とっても可愛いですわ!!」
あぁっ、ズイズイと近づいてこないで……!!
羞恥心が……羞恥心がぁぁっ!!
「に、似合いませんよね!? こんな子どもがこんな露出高いの!! わ、私すぐに着替えて──」
「いやいやいや!! 似合うっつってんでしょーよ!!」
「えぇ。ヒメはお胸がよく育ってますし、たまには露出をしっかりして、クロスフォード先生に意識してもらうのも有りですわよ?」
せ、先生に──意識──。
意識どころか目も合わせてもらえない私っていったい……。
あぁだめだ、落ち込んできた。
「良いから、行くわよ!! アステル達も待ってるだろうし!! ほれ、行った行った!!」
「ちょ!! クレア〜!?」
私はクレアに背中を押されながら、部屋からリビングへ、リビングから外へと押し出されていった。
「お待たせー!!」
「ですわー」
なんでこの2人こんなにルンルンなの!?
イヤだぁ〜〜〜〜!!
「遅い──ッ……ぞ……」
「……ッ!!」
言葉の途中でそれを無くして呆然と私たちを見るマロー。
だんだんとマローの顔が赤みを帯びてきて、隣ではジオルド君が赤なのか青なのかもはやよくわからない色になりながら、口をパクパクさせている。
「メルヴェラ、とてもよく似合っていますよ」
「まぁラウル様、ありがとうございます」
良いなぁメルヴィ。
こんなに良い婚約者がいて。
私の元婚約者候補は──。
私が先生の方を見てみると──……。
──固まってる。
先生が目を見開いたまま私を見て固まってる。。
これが本当の氷の騎士団長……って、そんなこと言ってる場合じゃない!!
絶対、“何やってるんだこのバカ娘”とか、“自分の年齢を考えろ”とか思ってるんだ……!!
うぅぅ……なんでも良いから見るなら何か言って〜〜!!
「ヒメ、お前……」
レイヴンが真剣な表情をしてガシッと私の両肩を掴む。
「な、なんですか? レイヴン」
勢いがなんだか怖い。
「どこにそんな美味そうなもん隠してたんだ!!」
「──は?」
食べ物なんて持ってたかしら?
そう思いながらどこかおかしいレイヴンの視線を辿ると──。
私の胸!?
「〜〜〜〜っ!!」
どこ見てんのこの万年発情犬!!
「どこ見てんですか変態っ!!」
私はレイヴンの頭めがけてゲンコツを振り上げる──が……。
ゴスッ!!
「グハァッ!!」
「先生……!!」
レイヴンの脇腹にめり込む先生の剣。
無表情で鞘に収めた状態の剣をレイヴンにめり込ませた先生は、無言でマントを脱ぎ黒の上着を脱ぐと、上着の方を私の肩へとふわりとかけてくれた。
「レイヴン、バカを言っていないで、見回りに行くぞ」
「えー!? 俺はまだこのボインを堪能してたい!!」
ボイン言うなこの発情犬。
「良いから行くぞ、駄犬」
「お、おいシリル!? おーい!!」
先生が低く言うと、レイヴンは首根っこを引っ掴まれてそのまま先生に引きづられていった。
「……いったわね」
「お兄様……」
「安定の駄犬だな」
クレアとメルヴィ、ジオルド君の冷めた目が遠くにいってしまったレイヴンを見つめる。
「でもクロスフォード先生、かっこいいことしてくれるじゃん!!」
「えぇ!! これは是非とも本に書かなければ!!」
メルヴィが燃えている……!!
それにしても……。
ふと、私は袖口に顔を寄せる。
あぁ、先生の匂いだ……。
まるで先生に包まれてるみたいで、体温が急上昇する。
でも結局さっきも目は合わせてくれなかったなぁ。
「んじゃ、時間までひと泳ぎしようぜ!!」
「そうね!!」
アステルとクレアがパタパタと海の方へと走っていく。
「僕たちも行きましょうか、メルヴェラ」
「えぇ、ラウル様」
うちの癒し系眼鏡カップルも、ラウルが差し出した手にメルヴィが手を添えて、優雅なエスコートで海の方へ歩いていった。
さすが貴族。
こんな場所でもエスコートなんて。
「お、俺たちもいくか」
やっと起動したマローがぎこちない動作で私に手を差し出す。
ん?
これはアレ?
もしかして、エスコートしてやるよ、ってやつ?
さすが爽やか貴公子マロー。
「どさくさに紛れてうちの妹に触ろうとするな」
ベシンッ、とマローが差し出した手を叩き落とす過保護な義兄ジオルド君。
「ふふ、マロー、ジオルド君、私たちもいきましょう」
私は先に行ったアステルが砂浜に敷いてくれたシートの上に、先生がさっきかけてくれた上着を畳んで置くと、マローやジオルド君と共に青く澄んだ海へと入っていった。
綺麗な海を満喫しながらも、チラチラと視界に入る先生とラティスさんが気になって、私は本日何度目かの長いため息をつくのだった。
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