私と彼の1週間ー5日目ー【メモリーズエンド】ー
ダンジョンの奥は行き止まりで、大きく古びた鉄製の扉が一つ、ゴツゴツとした岩壁にめり込んでいるのみだ。
「さぁ、ついたわよぉ〜」
レオンティウス様が言いながらその重厚そうな鉄の扉を開く。
すると──。
「!!」
飛び込んできた眩い光に、先ほどまで暗いダンジョンの中にいた私の目はその刺激を受けてチカチカする。
先ほどまで感じることのなかった穏やかな風が流れ、暖かみのある日差しが顔を出す。
少しだけ光に慣れてきた目をかすかに開くと、目の前には一面緑で覆われた大草原が広がっていた。
「な、何これ……」
「これが、俺たちの秘密の大草原──【メモリーズエンド】だ!!」
【メモリーズエンド】──。
本で読んだことがある。
空はあれど、ここは外ではない。
魔法空間だ。
ダンジョンなどの洞窟の中に、稀に魔力溜まりの部屋が存在することがあるらしい。
魔力が溜まって、外のような不思議な部屋ができる。
季節に関係なく咲く花々。
冬でも青々とした葉や草。
雨が降ることのない青空に、穏やかな風。
人が死ぬ際には必ずここを訪れ、現世での思い出と別れを告げると言われている。
それゆえに名付けられたのが【メモリーズエンド】。
【思い出の終わり】だ。
まぁ、嘘か本当かはわからないのだけれど。
まさか生きているうちにここに来ることができるなんて。
とても素敵な場所だわ。
目の前の美しい光景に言葉を失っていると、私の隣でエリーゼがくすりと笑った。
「驚いてる? 私も最初は驚いたわ。ダンジョンにこんなに綺麗なところがあるなんてね。でもここならいつでも快適にピクニックが楽しめる。素敵でしょ?」
綺麗に微笑む彼女に見惚れながら私は「はい……素敵すぎます!!」と返す。
青い空と白い雲、穏やかに流れる風。
隣には美女。
なにこれ天国か。
「お前らはあそこの一本モロフの木の下にでも敷物敷いて待っててくれ。俺たち男衆でそこの湖で水汲んでくるから」
「4人で行くんですか?」
たかだか水汲みに行くだけで?
男4人も?
私が疑問に思っているとアレンがクスクスと笑いながら口を開いた。
「この空間の
なるほど。
そう言うことか。
なら仕方ない。
「気をつけて」
私が彼らの身を案じ言葉をかけると「えぇ、任せて。あなたのためにも私頑張っちゃうから」とレオンティウス様が色気を大放出させながら返す。
その色気はいらんです、レオンティウス様。
「エリーゼ、ヒメを頼んだぞ」
レイヴンが言うと「えぇ、任せて」とエリーゼが頷き、レイヴン、アレン、レオンティウス様が湖へと出発した。
「大丈夫か?」
シリル君が心配そうに私を見るけれど、私はふにゃりと笑って、
「はい。魔力もまだまだ残ってますし、なにがきてもへっちゃらですよ」
と返すと、彼は「そう言うことではないんだが……」と複雑そうな顔を見せる。
「エリーゼもいてくれますし、大丈夫ですよ。でもシリル君が心配なので、早く戻ってきてくださいね」
「……わかった。君がそう言うならば。すぐに終わらせてくる」
そう言って腰元の剣にそっと触れると、彼は先に出発したレイヴンたちの後を追っていった。
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