私と彼の1週間ー5日目ー聖剣と聖シリル君ー



 どこかに武器は……。

 私はあたりを確認すると、すぐにレイヴンに目を止めた。

 !! そうだ──!!


「レイヴン!! その剣私に貸してください!!」

 レイヴンの腰にぶら下がる剣を指差しながら叫ぶ。

「は!? いやお前──!!」

「いいから早く!!」

「チッ……ほらよ!!」

 片手でグリム達に魔法を放ちながらもう一つの手で自分の剣を取り外し、地を滑らせるようにして私の方へと寄越してくれたレイヴン。


 おぉ……器用。

 さすが未来の魔術師団長兼グローリアス教師。


 よし、これで私も力になれる。

「いきますよぉ〜!!」

 私は借りた剣へと聖魔法を施すと、剣は瞬く間に白銀の光を放ち、光輝く剣──聖剣へと姿を変える。


 グリムは確か闇属性。

 聖魔法を纏わせた剣で深く切れば、きっと効果はあるはず!!


「シリル君!! 聖魔法を剣に!! 奴らの弱点です!! これで一気に切り込みましょう!!」


 先生の属性は氷、水、闇、聖。

 それならシリル君にも聖剣を作り出せるはず。

 

 私はすぐにシリル君へと指示を送ると、シリル君は少し驚いたように目を見開くとすぐにこくんと頷き、自身の剣を抜くとそれに聖魔法を絡み込ませた。

 薄暗いダンジョンの中でキラキラ光る聖剣が二つ。



「くらえ!! 聖剣の威力ぅぅぅぅぅぅ!!」


 私は一気に地を駆けると、グリム達に向けて聖剣で斬り込んでいく。

 反対からシリル君も同じように聖剣を使いグリムに斬りかかる。


「はあぁぁぁっ!!」

 輝く聖剣が次々とグリム達の肩に、腹に、腕に吸い込まれるように深く入っていく。


 風魔法を自身に纏わせ、グリムの攻撃にも身を翻し避けながら、確実に奴らを捉える。

 繰り返すうちにバタバタと1匹、また1匹と巨体が倒れ、私の後に屍の山が積み上がった。

 3匹倒したあたりで、反対側から剣を振るっていたシリル君がこちらを見ていることに気づいた。


 あぁ、シリル君の方も終わったのか。

 さすが。


「すげ……あの闇落ち魔物ダークスターグリム達を一瞬で……!!」

 目の前の屍の山を見て声をあげるレイヴン。


「レイヴン、剣ありがとうございました」

 魔法解除をしてから、私は彼に借りた剣を手渡す。

「お、おう」


「ヒメ、あなた……聖魔法も風魔法もどちらも使えるの?」

 エリーゼが呆然としながら声をあげる。


「えぇ、一応」

 私は曖昧に微笑んでそう答えた。

 全属性持ち《オールエレメンター》のことは言わないほうがいいだろう。

 ややこしくなりそうだし。


「すごいね。剣の腕も素晴らしいものだったし、魔法剣まで習得しているなんて。この世界に魔法剣を使うことができるのは君とシリル二人だけってことか。どこかで習っていたの?」

 

 アレンが目を大きくして興奮したようにたずねると私は「あはは……まぁちょっと」と言葉を濁すことしかできなかった。



「何にしても、ヒメの機転のおかげで助かったわ。ありがとう」

 レオンティウス様が美しい笑みを浮かべる。


 うあぁ……戦いの後でも余裕のこの色気。

 すごいです、レオンティウス様。

 さすがグローリアスの歩く18禁。


「んじゃ、気を取り直して先に進むか!! 後少しだからな!!」

 レイヴンが言って、私たちはまた歩き始める。



 奥に進むにつれて、水晶やアメジスト、ローズクォーツなどの鉱石が壁や地面に混ざるようになってきた。

 それらがエリーゼの聖魔法による光の玉に照らされて、キラキラと反射して煌めいている。

 すごく綺麗。


 それらに見惚れながら歩いていると、先頭のレイヴン、レオンティウス様、アレンから少し距離が空いてしまった。

 少し前にエリーゼとシリルが並んで歩く。

 

 あぁ、美男美女。

 お似合いの二人だなぁ……。


 シリル君の銀色の綺麗な髪にエリーゼの金髪が並ぶとよく似合う。

 私なんて地味な真っ黒い髪だもんなぁ。

 前国王が日本人だったから、そこからの遺伝なんだろうけれど……。


 この光景を、私はずっと見続けるのか。

 王位を継いで。

 うん、今のうちに慣れておかなきゃ。

 考えながら二人の後をついていったその時──。


「ガゥルルルルルルル!!」

「っ!?」

 私の背後から突如として襲いかかる闇堕ちグリム──!!


 うそ!? まだいたの!?

 剣を……!! ──あぁぁぁぁレイヴン!!

 先の方でレイヴンがこちらに気づいて駆け寄ろうとするけれど絶対に間に合わない。


 私が咄嗟に右手のひらを闇落ちグリムへと向けた瞬間──。


「はぁぁっ!!」

 グリムの首は跳ね上がり胴体と別れを告げてその場に転がった。



「シリル君!!」

「大丈夫か!?」


 剣をしまい、私の方へとかけてくるシリル君がカッコいい……!!


 薄暗い中でもキラキラと輝いて見える──そう、さっきの聖剣のように……!!

 聖剣ならぬ聖シリル君じゃないかぁぁぁぁ!!



「……大丈夫そうだな。いくぞ」

 そう言って呆れたようにため息をつきながらも、私の手を取ってレイヴン達の方へと足を進めるシリル君。


 お姉さん、どきどきが止まりませんよ、シリル君。


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