私と彼の1週間ー5日目ー未来の彼らー



「そういえば、未来でレイヴンに騎士の誓いをされました」

 未来のことを話すと言っても何を話せばいいのかわからない私は、とりあえず当たり障りのない存在であるレイヴンの話題を切り出した。


「レイヴン……あぁ、シード公爵家の……。そうか……彼が騎士の誓いを……」

 心底驚いたように腕を組んで言うシルヴァ様。


「あなたは騎士の誓いがどういうものか知っているのかな?」


「あ、はい。確か騎士が、守るべき王族にのみ捧げる一度しか使えない魔法だと。特に3大公爵家は、側近としてこの国の中枢を担うから、王家の人間を守る資格を得るためにもその魔法がいるんですよね? 以前未来のシリル君に教えてもらいました」


「その通り。王族以外の者に騎士の誓いをするのは例外だろう」


 図らずしもレイヴンはその王族に誓っちゃったわけだけど……。

 まさかレイヴン!!

 そこまで予想をして──!?


 ──ないな。

 レイヴンに限ってそれは。

 だってレイヴンだもん。



「だが、彼はフラフラしているように見えて、意外とそう言うものには感がきく。獣のようにね? だからきっと、その判断は間違いないだろうさ」


 ワンコだもんね。


 でも、この人はやっぱりよく人を見ている。

 爽やかで人の良さそうな方だけれど、相当な切れ者だと思う。

 そりゃそうよね。

 実力主義の騎士団の中でこの若さで騎士団長やってるんだから、一筋縄で行くはずがない。



「レオンティウス様も、レイヴンやシリル君を揶揄いながらもきちんと副騎士団長として任務をこなしていますし、なんだかんだ皆仲良く元気にやってますよ」


 私は未来の3人を思い浮かべる。

 レイヴンをレオンティウス様がいじって、先生が呆れながらそれを見て、そして先生へと飛び火する。

 なんだかんだ仲の良い幼なじみたちだ。

 早くアレンを魔王の支配から解放して、あの中へ戻してあげなきゃ。


 そして私は先生を想う。


「シルヴァ様。シルヴァ様そっくりに育ってますよ、先生は」

 そう伝えると「先生?」と聞き返し、シルヴァ様は首を傾げた。


「あ、シリル君のことです。グローリアス学園の神魔術の教師をされていて、同時に公爵としての仕事や騎士団長としての仕事もこなす、すごい人なんです!!」

「ほぅ……それはすごい」

 切れ長の目を細め感嘆の声をあげるシルヴァ様。



「でも先生、寝るのもいつも遅いし、朝はとっても早く起きて仕事してるし、過労死しないか心配です」


 いやほんと。

 もう少し休んで欲しい。

 ただあれだけ仕事ばかりしていても、目の下に隈を作ったりぐったりしていたりという、目に見えた変化は全くないのは、ある意味すごい。

 いつもの変わらない無表情のままだから、疲れているのかどうかもわかりにくいし……。



「ハハッ。ダメそうな時は、あなたが叱ってやってくれると助かる。あれは加減を知らんからな」

「はい!! 任せてください!!」

 楽しそうに笑うシルヴァ様に、私は胸をトンと自身の手で叩いて答えた。

 あなたの大事な御子息は私が守ります!!

 と心の中で決意を深めて。



「でも、レオンやレイヴンも元気そうで安心したよ。特にレイヴン。あの子は自分に自信がなさすぎる。病弱な5歳の妹君のために、色々とかげで努力しているようだが、彼女にもしものことがあったら、レイヴンは闇に堕ちていただろう。それが元気にやっていると言うことは、妹君──メルヴェラ嬢は無事、と言うことでいいのかな?」


 穏やかな問いかけに、私は首をゆっくりと縦に下ろした。


「メルヴィの体内を少しいじって、魔力の流れをスムーズにしておきました。彼女自身の努力もあって、今では運動も可能なレベルで回復しています。この間、彼女の婚約披露パーティがあったんですよ!!」


「なんとメルヴェラ嬢の!! それはめでたいことだ。レムルスが知ったらさぞ喜ぶだろうが、それは未来のお楽しみだね」

 嬉しそうに目を細めてから、悪戯っぽくシルヴァ様が笑った。

 美丈夫の笑顔が眩しい……!!

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