作ろうシロル先生1号


「ぺくちん!! うぅ〜〜〜」


 雪の降るなか、私は首をキュッと縮こまらせ、シャベルを片手にクロスフォード家の玄関前で雪をかき集めていた。


 玄関前には既に私が一人で集めた雪の山が出来上がり、私の身長の半分ほどの高さになっている。


「……お前、何してる?」


 訝しげに声をかけてきたのは、グレーのマフラーとイヤーマフラー、コートに身を包み、ミンクの手袋をはめ、完全防寒を決め込んでいるジオルド君だった。


「あ! ジオルド君! っぺくちん!」

「そんな変なくしゃみをするな。大体そんな格好でいるから寒いんだバカ」


 悪態をつきながらも自分のまいているマフラーを取って、コートのみで防寒をしていた私の首にぐるぐると巻いてやる。


 ……紳士だ。


「ありがとうございます」

「で、何してたんだ?」

 ジオルド君は私の隣に出来上がった雪の山を呆れたように見ながら聞いた。


「雪を集めて、作りたいものがありまして、こうやって」

 言いながら私は、手に持っている大きなシャベルを見せる。


「……おい。お前もう魔法使えるんだろ? だったら魔法使えばいいだろう」

「…………氷属性の魔法、苦手なんですよ、私」

 私は悔しさに口をへの字に曲げて視線を落とす。


 他の属性は上級のものも使えるようになったにも関わらず、氷属性はいまだに初級だ。

 よっぽど相性が悪いらしい。

 大好きな先生の属性なのに。


「じゃぁ諦めろよ」

「それは嫌」

 私の食い気味の拒否に、ジオルド君は言葉を詰まらせる。

「とはいっても、僕はまだ魔法開花してないし……」


 カチャ……


 視線を彷徨わせどうしたものかと考えていると、玄関の大きな扉が開いた。


「先生!」

「兄上!」

 あぁ、今日もうちの先生は素敵だ。


「……何をしている?」

 眉間に皺を寄せ、先生が尋ねる。


「ちょうどよかった!! 先生、もっとたくさん、ここ雪、降らせませんか? ぁ、ちょっと固めておいてもらえると助かります」

 私が言うと、訝しげに私を見ながらも先生は無言で手のひらを突き出す。


 シュンッ──


 先生の氷魔法により、一瞬で私の隣には私の身長の倍ほどの雪が、少し固まった状態で現れた。


「これでいいか?」

「わぁ!! ありがとうございます!」

 そう礼を言うと、私は持っていたシャベルをその場に置いて、小さめのスコップを取り出し、浮遊した。



 そして────



 シャリッ、シャリッ


 上の方から手寧に削り出した。


 それはもう、真剣に。


「お、おい、何して……」

「やめておけ。聞いていない」

 すごい集中力と速さで削ること20分。




「できた!!」



「これは……!!」


 そびえ立つ、雪で作られた……


「見てください!! 雪像のクロスフォード先生!! その名も、シロル先生1号です!!」


「……」

「……」


 あまりの衝撃に声を出すこともできないのか、口を開けたままシロル先生1号を見上げる先生とジオルド君。


 それはそうだ。

 ものすごくリアルに作り上げたのだから。


「あ、このままじゃすぐ溶けちゃいますね!」


 そう言うと私は、手のひらをシロル先生1号に向け、霧のような水をだして吹きかけ、次に風魔法となけなしの氷魔法を組み合わせ、それを包み込み固め始めた。


「できたぁー!! これでそう簡単には崩れませんよ!! いやぁ〜、先生がいてよかった! 雪まつりとかだと、雪を運んでくるのに一週間ぐらいかかるらしいですし、そこから固めて掘って濡らして凍らせるともっとかかりますからね!」


 達成感のこもった笑顔で額の汗を拭う。



「お前……才能の無駄遣いって言葉、知ってるか?」


「よく言われます!」


「……」



 だが悔いはない!!


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