大人が子どもを守るのは当然です。
「ここは……」
夏なのにひんやりとした空気に目を開けると、そこは岩に囲まれた、暗い牢の中だった。
「ヒメ?」
声がして、すぐそばでクレアが縛られ震えていることに気づく。
「クレア!! 大丈夫ですか!?」
「ヒメ……よかった。目、覚めて」
「怪我はないですか?」
「大丈夫。でも、気がついたらここにいて……ここ、どこ?」
不安げに青い瞳を揺らし、震えるクレアの肩を抱き寄せる。
確か、クレアが監禁されるのは、村を出てすぐの井戸の中。
井戸が転移装置になっていて、どこかの屋敷に繋がっているのだ。
何重にも重ねられた隠匿魔法のせいで、騎士団がクレアを見つけ出せたのは一週間後。
その間、彼女は躾という名の拷問をうける……
そうしてその恐怖から声を失うのだ。
守らなければ。
この小さな命を。
彼女の心を。
「大丈夫ですよ。クレアは私が守ります」
そこへ
「起きたか」
黒いマントの男たちがぞろぞろと牢の前に現れる。
「どちらが聖女だ」
真ん中の、銀糸で模様が刺繍してある上質そうなマントを着込んだ男が仲間に聞いた。
おそらくこの人が、ここで仕切っている親玉的な存在なのだろう。
ゲームでは盗賊に拐われたってなってたけど、こんな身なりの良さそうな盗賊、普通にいない。
これがゲームで
「それが……、わかっているのはパン屋の娘で、10歳の女児ということだけで……」
彼らはクレアが聖女だと知らない?
ならこれはチャンスだ。
私は一度深呼吸をしてから声を上げた。
「おじさんたち!! 私が聖女です。この間、神殿で聖女認定されました!! 聖女の私にこんなことするなんて、どうなっても知らないですよ!!」
腕の中のクレアを抱きしめる力を強め、わざと傲慢気味に言って、男たちを挑発する。
「この子はたまたま訪れた王都の方ですよ!! 解放してあげてください」
「そうかお前が……黒髪に紅水晶のような瞳。なるほど、聖女殿は珍しい色をお持ちのようだ。だが、そちらのお嬢さんを解放することはできない。聖女の力でも使って逃げられでもしたら大事だからな。そいつは人質だ。私たちに逆らうと、そのお嬢さんが痛い目に遭う」
よし、かかった。
男が牢に入り、私の黒髪をグッと掴み、強く引く。
「っ!!」
「来い。私たちの言うことをちゃんと聞くように、愚かな考えなどおこさぬように、しっかりと躾をしてから、主に引き渡すことになっている」
「やめて!!」
悲痛な声をあげクレアがこちらを目に涙を浮かべながら見る。
そんな彼女に私は微笑む。
「大丈夫ですよ。あなたは、待っていてくださいね。モミ子」
安心させるように頭を撫でて、私は男たちに着いていった。
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