第6話 太陽光発電完備の昭和レトロ商店


「おはよ〜」


「おはよう」


 朝起きて三姉妹の末っ子、アイアイと顔を合わせた僕は挨拶を交わした。彼女は身につけていた革鎧を脱ぎ平服である。そりゃあ鎧を着たままじゃゆっくり休めないだろう。野営では当然装備を外さない、寝るにしても完全に疲労は抜けないだろう。そう言えば彼女達は言ってたっけ…、依頼などで何日か野営などをして街の宿に戻ったら必ず休養日を設けると…。


「デンジ、あなたもしかして貴族なの?」


 僕の顔を覗き込むようにしてアイアイが問いかけてくる。


「違うよ。でも、どうしてそう思うの?」


「だってお湯を張ったお風呂だなんて貴族でもなきゃ…。それにあの体を洗う時に使えって言ったあのポーション?それと髪に使ったのもそうだけど…あんなの見た事も聞いた事もないわ。汚れが落ちるだけじゃなくて匂いも良いし…」


 どうやらボディソープとシャンプーが相当お気に召したようだ。


「ああ、風呂があるから僕を貴族だと?」


「そうよ。たくさんの水を得るのも大変だし、それを沸かすのも手間がかかるんだから!薪とかだってタダじゃないんだし…」


 なるほど、そういうのを簡単に用意していたから僕を貴族と思った訳だ。


「アイアイ、僕の生まれ育った所では湯水ゆみずのごとく使うって言葉があるんだ」


「湯水のごとく…?」


「うん。水が手に入りやすかったのもあるけど国土の多くが山林でね。薪になる木が手に入りやすかったんだ。そんな訳で浪費する事を湯水のごとく使うって言うんだ。そのくらい水やお湯は気軽に手に入るものだったんだ」


「へえ…、だから昨日の夜はあんなに温かい物を…。ううん、温かいだけじゃなくてすごく美味しかったけど…。お湯を沸かすのに魔導具を使ってたわよね」


「魔導具?」


「鍋でお湯を沸かす時に火を使ってなかったじゃない。見た事もない魔導具だったけど」


「ああ、IH調理家電か」


 実はこの加代田商店、見た目は昭和レトロだけど裏に回れば太陽光パネルがあったりする。あの大震災で明かりが消えた街並みを目にした当時存命だったひいばあちゃんが導入を即決したんだ。仮に大きな震災があってもこれなら電気は作り出せる、余った発電分は売れるし…そう言った理由で始めたらしい。


「だけどデンジは昨日聞いた時にモンスターを倒したりしてないんでしょ?」


「う、うん。そりゃ戦う力がないから…」


「魔導具の燃料になる魔石はどうしてるの?冒険者やギルドとのつながりもないみたいだし、そもそもいきなりここに現れたんなら買う伝手つてはあるの?」


「ああ、あれは太陽光発電で…、あっ!!」


 その瞬間僕は大変な事に気付いた。


「ここ…、ダンジョンだ。地下じゃ太陽の光は届かない…。そうなると電気は…」


 僕の背中に冷たいものが流れた。

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