第4話 タバコ屋、セーフティゾーン(完璧)になる


 疲れが深く先に休憩したルイルイさんとアイアイさんが起き出してきたので交代とばかりにメイメイさんが休憩の為に毛布にくるまり横になった。


「美味しい!」

「見事な紅茶ね、嬉しいわ」


 二人もまたティーパックで抽出した紅茶を楽しんでいる。


「お口に合って何より…。あ、そうだ!」


 異世界と言えば塩や胡椒などの調味料が非常に高価なのがお約束だ。僕が今いる異世界も同じなのが…、興味がわいてくる。


「ちなみにこういう野営の時、みなさんはどういう物を食べるんですか?」.

 

 とりあえず尋ねてみた。


「え?フツーに干しパンに干し肉でしょ?」


 何を言ってるんだとばかりにアイアイさんが応じた。実際に見せてもらうとパンはやたら茶色く、さらには固くなった厚揚げ豆腐のような形状。干し肉はビーフジャーキーのような物を想像していたがスーパーで売っている魚の切り身くらいの大きさがあり黒ずんでいる。干し肉というより乾燥しきった塊肉の破片…みたいな感じだ。


 お湯を沸かせる状況なら干し肉を煮たり、あるいはお湯に浸したりして口にするらしい。それが無理な状況ならナイフなどで薄く削りスルメのように長いこと噛みながら食べるんだそうだ。


 それゆえに先程の場所で他の冒険者連中が言っていた水はやはり貴重品、飲み水としても携帯食を柔らかくして食べるにも必要不可欠な物なのだ。


「それで先程の場所が…」


「そう、セーフティゾーンね」


 話題が先程のダンジョン内の開けた場所についての話になり僕の問いかけにルイルイさんが応じた。


「ダンジョン内には所々なぜかモンスターが寄り付かない場所があるの。そこでは冒険者が安全に休息が取れるのよ」


「だから安全地帯セーフティゾーンと言うんですね」


「まあ…、ね。だけど寄ってこないのはモンスターだけで別の問題があったりもするんだけど…」


 ルイルイさんが肩をすくめてみせる。


「さっきのみたいな連中ですか?」


「冒険者ってね、良い人もいるにはいるけどそうでないのも少なくないんだよ。別に家柄や人格が備わってなければなれないわけじゃないしね。逆にさびれた寒村から手斧一つ、体一つでやってきた…みたいなのも多いんだ」


 ルイルイさんに代わり今度はアイアイさんが僕に応じる。


「それは自分の腕一本でやってく…みたいな?」


「そうそう!そんなのが武器持って街を歩いてるし、酒に酔って暴れたりするもんだから街の人から冒険者なんて礼儀も知らない野蛮人なんて言われたりする事もあるの」


「それじゃおちおち休息も取れないですね。そんな連中が周りにいるとか…。あるいはその時はいなくてもいつやって来るかと思うと…」


「ホントその通りだよ」


 脅威となるのはモンスターだけじゃない、冒険者ってなんだか気苦労が絶えなさそうだ。


「それじゃゆっくりしていって下さい。ここなら外の連中は入って来れないみたいだし…。もしかしたら待ち伏せしてるかも知れないし…、逆につぶしあいにでもなってれば良いのかな…。メイメイさんが起きてきたら食事にしましょう、用意できるものは少ないですけど…」


「ありがたいわ、ここは本当にセーフティゾーンね」


 微笑んだメイメイさんが印象的だった。








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