第102話 ブラック企業

「それで、私はここの管理をしたら良いのかな?」

 昼食を食べて一息ついている時に、フェデリコさんが唐突に聞いてきた。

 食べながら、これまでの事情を説明をしたからだとは思うんだけど、察しが良すぎる!


「はい!是非お願いしたいのですが、宜しいのでしょうか?」

「ははっ。もちろんだよ。私の得意分野だ。それにこんなに楽しそうな事を逃す手はない!」

 楽しそうに笑い声を上げているその手元は、驚く速さで紙に何かを書き付けていた。

 そしてカリオは、そんなフェデリコの様子を見て嬉しそう。


「桜様、私達は何をしたらよろしいでしょうか?」

 フェデリコに触発されたのか、聞くタイミングをずっと測っていたのか、リリーや料理長達が期待に満ちた顔でこちらを見ている。


「リリーには温泉宿の女将さんになって欲しいんだけど、まだ温泉宿を作ってる所だから、出来るまでは宿舎の維持管理をお願いしたいな。」

「お任せ下さい!」

 さすがリリー!頼もしい!リリー女将専用の浴衣も欲しいな~。


「料理長も温泉宿が出来たら、そこの料理長として働いて欲しいんだけど、それまでは宿舎の厨房を任せて良い?」

「もちろんですとも!」

 やったぁ!料理長達は大量の料理を作るのに慣れてるから、これ以上の適任は居ないね!


「とりあえず今日は皆疲れたでしょ?温泉に浸かって疲れを落としたら、ゆっくり休んでね!」

「温泉!先程の説明で聞いてから、気になっていたのですよ!行って参ります!」

「あぁ!フェデリコ様お待ち下さい!」

 中々好奇心旺盛な様で、一目散に温泉めがけて突撃して行った。長い軟禁生活で、娯楽に飢えてるのかな。


「皆も遠慮しないで入って来てね!」

「はい!ありがとうごさいます!」

 リリーや料理長達もウキウキしてるっぽい。皆も温泉好き仲間になってくれそうで嬉しい!



 皆を見送った後は、ドワーフ達の元へ。さてさて、温泉宿の進み具合はどんな感じかな~。宿舎作った時より人数は少ないけど建物は大きいし、さすがに時間が掛かるよね。


「って何じゃこりゃーーーーーーー!!!」

 出来てるよ!?この大きさの建物が1日で出来るわけないよね!?こんなの見たらそりゃ叫んじゃうよ!?


「「桜様ーーーーー!!!!」」

 私の叫び声が聞こえたのか、ドルムとホルグが走って来た。

「何でもう温泉宿出来てるの!?」

「宿舎の温泉はすごいぞ!休憩の度に温泉に入ると、すぐに疲れがぶっ飛んでいく!おかげで作業スピードが3倍早くなった!疲れ知らずでまだまだ働けるぞ!」

「本当にあの温泉は最高です!私達の工房も、2棟分の建具が完了致しました!明日から温泉宿の建具制作に取り掛かろうと思います!」


 えっ!?そんなブラック企業みたいな働き方してたの!?やだそれ怖い!そんな無理して働いて欲しくない!これはほっとくと、際限なく働きそうな気がする。


「クレマン。明日からドワーフ達の休憩管理をお願い出来ないかな。午前中に1回、午後に1回、ご飯の時とは別に30分ぐらい強制的に。それと仕事は6時まで。それ以上は認めません!」

「かしこまりました。」


 私の言葉に衝撃を受けたのか、ドルムもホルグも固まった。

 早く作ろうとしてくれるのは嬉しいけど、無理な働き方は許しません!私はホワイトな職場を目指してるんだからね!

 これはフェデリコにも徹底してもらうように話しておかないとね。



 そして夜は新しい仲間の歓迎会!ドワーフ達の酒量制限は解除しないけど、美味しいご飯とお酒で大いに盛り上がった。


 料理長が来てくれたし、これからもっと色んな料理を作りたいな。

 そうだ!ノアさんに頼んでたケーキ型も取りに行かなきゃ!やっとケーキが作れる!!


 あ!生クリームの冷泉とか作れるんじゃない!?冷泉が作れたらケーキ作り放題だよー!ワクワクする~~~!


「桜様このお酒美味しいですね~!」

 真っ赤な顔をしたフェデリコさんが、白ワインの入ったコップを片手にやって来た。

「フェデリコさんはワインがお好きなんですね。気に入ってもらえて良かったです。」

 今度ブランデーやカクテル用のリキュールとかも作りたいな。


「ここに連れて来て貰えて本当に良かった!こんなに心が踊るのは久しぶりですよ。改めてこれからどうぞよろしくお願い致します!」

「こちらこそよろしくお願いします!頼りにしてますね!」


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