第55話 覚えるのも大変だ…。

慌てるルークを落ち着かせ、自分に回復をかけて傷を治す。水晶を壊してしまったものの、ベムは怒っておらず寧ろ鼻を鳴らし気合いを入れていた。


「計測玉、破壊したのはお気になさるなっ。今度はきちんと測定できる様に作りますな!とりあえず10000段階ですかな!!」


と言って息巻いていた。


魔女疑惑が浮上仕掛けたので、密かに再測定はされないよう回避しようと思ってしまう。



◇◇◇



その後魔導具とその説明書を貰い、ベムの所から離れたものの、魔術師団のところへ行くまでにルークが繋いだ私の手を心配そうに見つめるのでそれこそ穴が開くのではないかと心配になった。


私はルークに魔導具の計測玉を破壊した事を怪しまれていないか気になったが、そもそも私は前世からその前の記憶を保持しているとか、呪いをかけるとかしているからかルークは魔力に関して追及してこなかったのは少しホッとした。


だがルークは廊下を歩きながら気不味そうに私に言う。


「もしかするとロティは魔導具は使えないかもしれない…。」

「え、なんで?」


「魔力が高すぎると魔導具自体が魔力に耐えられないんだ。

制御できればいいが、制御なしで魔力を流すとさっきの水晶みたいに壊れる…。

あの女のこともあるし、これから先のことも考えたら攻撃手段の1つくらいあってほしかったのだがどうしたものか…。

ロティは回復魔法は制御しながら発動してないだろう?

制御を覚えてもらうにも時間がな…。」

「魔力制御って難しいの?」


「…俺も一度はぶつかった壁だな。制御を完璧にこなすまでは数ヶ月かかった。」

「…どうしよう。」


魔導具が一ついくらかはわからないが、総額だけ聞くとどれもお高そうで本当ならば壊したくないから使いたくない。

グニーに狙われてなきゃ一生使わなくてもいいのに。

もし不覚にもまた刺されたりして死んでしまったら後悔するし、ルークにも申し訳ないためなんとか魔導具を使えるようにしたい。


私は歩きながら貰った魔導具に説明書をつけてくれたので目を通した。



【盾の腕輪】

自分の魔力と引き換えに自分を守る全方位シールドが展開できる。

ただし、寝ている時や気を失っている時には発動しない。


【魔法攻撃変換用腕輪】

自分の魔力を引き換えに自分の使えない属性魔法の攻撃が出来る。


私の場合は回復しか使えないから何の魔法が出来るのか使ってみないとわからないが、もしかすると制御不能か魔導具破壊に繋がるかもしれないのどうしようかと悩んだが、再び説明書に目を落とす。


【身代わりのリング】

どんな攻撃も防いでくれるが、1リング付き一回まで。

使用するとリングは壊れてバラバラになる。


【ピンクの2体の兎の人形】

これは番になっていて、自分の血を染み込ませ、お互いの人形と交換し持つと相手の様子がわかる。

例えば悲しんでいると眉が下がり目から水が出る。


【宝石の蜘蛛】

普段は動かないが、髪の毛の先端を宝石蜘蛛の口に刺すとそれを食べてその髪の毛の主人の元まで案内する蜘蛛。

ただし、髪の毛は探したい人のものを使う。


【姿変えのピアス】

自分の魔力を使い自分の思うままに姿が変えられる。魔力の量で変わりたい部分や変われる時間が決まる。


【魔封じの縄】

それに巻かれた人は縄が解くまで魔力が使えない。


【魔導具破壊のピック】

持ち手は木で先は魔石でできている。この魔石の部分で魔導具を刺すと刺された魔導具は壊れる。


【注意!魔導具は魔法や物理でも壊す事は可能。

ただし魔導具は通常簡単には壊れない為、壊したい場合にはそれ相当の魔法か破壊系魔導具を必須とする。】



と説明書に書いてある。

私の場合には魔力を流すだけなのに壊してしまう可能性があるためかなりの注意が必要なのかもしれない。


後は説明書に説明はないが、一番最初にみた魔導具の姿が隠せる布もある。


ベム曰く認識阻害魔法を応用した布らしい。

本当なら透明化魔法を再現したいが、なんでも透明化は亜人や魔族のほんの一握りしか使えないそうでその魔法自体見れる機会が少ない為、認識阻害魔法で試していると話していた。


認識阻害魔法を凝縮しまくって作った結果。

透明化の再現に近くなりどんな魔導師でもその布の中に入ってしまえば姿を見つけられないらしいが欠点は何故か鼻だけ出てしまうそうだ。

布の中で鼻を隠せば問題はないみたいで魔導技巧師達の腕の凄さに驚いてしまう。


だが問題は私自身だ。

魔導具を使おうにも魔力が制御出来なければ意味がない。

こんなとこで壁にぶち当たるなど思っても見なかった。


私は説明書をしまいながらため息が出る。

どうにかしなければと最近パンク気味の頭を悩ませて魔導師団のいる所へとルークと歩いて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る