第46話 もっともっともっともっと。全然足りてない。
またもやルークside
40話〜43話のルーク。
朝食中にロティは夢で見た前世の話をしてくれた。
ロティの話を聞く分にはどうやら記憶は遡って見ているようだ。
なら次に見るのは…。
次に見る前世の事を考えようとしたが辞めた。
どんなに俺が悔やもうが過ぎてしまった事を夢で見ているだけなのだ。どうにかしたくても介入出来ない。
ロティが心変わりしないよう祈るしかないのが歯痒い。
ロティが膨大な記憶を一気に思い出して混乱してないか心配したが、それは大丈夫なようだ。
寧ろ俺のように何故記憶がなかったのか、と後悔しているようだ。
その事を聞いて俺は内心嬉々としてしまう。
俺の事を覚えていなかった事が後悔と言うなら、
ロティは俺を事を好きなのだと自負までして。
またずっと一緒に居れる可能性が上がった気がして踏み込んだ質問をした。
「俺とどこまでいったかも思い出したって事でいいんだな?」
ロティは食べていたサラダを吹き出しそうになっていたが、俺は至って真剣に聞く。
ふざけているわけじゃない事が表情から伝わったのか、ロティは気恥ずかしそうにしながらも思い出したと言った。
嫌がっている様子も、拒否する様子もなく俺は心底安心してしまったのにまだ聞き足りない。
聞いておかないといけない。ロティを離したくない。
「それを踏まえて聞きたかった。まぁ、ロティから先にしてくれたし、もう1度してしまったが…。」
「うん?」
「全て思い出したらまた聞くつもりだが、
俺と…また生きてくれるだろうか。出来れば前のように恋人として…。俺は…今度はきちんと夫婦になれればいいと思ってる…。」
ド直球に言い過ぎたかと思ったが、逃げられないようにするにはしっかり言葉にしておいたほうがいい。
顔を赤くしたロティは食べ終えてフォークを置きながら答える。
「朝食の会話じゃないような気もするけど……。
う…うん。少なくとも私もルークと同じ感情だと思うから…。ただ申し訳ないのだけど、全ての記憶が揃うまではまだちょっーと我慢して欲しいところはあるけど…。」
同じ感情…。そこは違うかもしれない。
ロティが俺を想う気持ちは綺麗なものだろう。
俺がロティを想う気持ちの一部にはドロドロで汚くて醜い部分がある。
俺に溺れて、俺なしじゃ生きられなきゃ良いのにとさえ思ってしまう。
ロティは俺が記憶のない時に【俺が嫌がるなら】と離れようとしたことがある。
だが俺はロティを離してあげられそうにもない。
どうにかまた俺の元へ来るようにと行動してしまうだろう。
俺はグニーの事を罵るが、全ての感情がわからないわけでもない。そこだけはきっと少しだけ似てる。
違うのは俺とロティが相思相愛である事だ。
今のところ無理強いもさせていないはず。
今度こそ誰にも邪魔させるか。
俺は平然を装って話を続ける。
「それは分かっている。ロティの前世の関係を超えるまでのことはしない。きちんと教会に行って神様に誓うのも忘れていない。」
言葉に含みを持たせたのがバレたのか首を傾げられた。
あまり深く考えさせないよう、すかさず魔女の話をすると食い付きが凄かった。
目を輝かせ、今にも飛び出しそうに嬉しそうにする。
記憶の魔女の事を思い出したとは言えその反応には嫉妬してしまう。俺もそんな反応が欲しかった。
出来ればその時に抱きしめ合ってキスもしたかった。
ロティからのキスのせいで、堪らなく何度もしたくなる。
とりあえずロティに、記憶の魔女には王宮へ行かなくては連絡できない事、陛下やアレックスからも連絡が来ている事を伝えた。
俺自身忘れかけていたが、王宮の魔術師団にも連絡しないと後でグダグダと文句を言われそうだ。
王宮に行った時に全て纏めてやろう。
後何をしなきゃいけないのか考えながら話す俺とは違い、ロティは頭がパンクしそうなのか目は見開いて口が開いている。
そんな顔ですら愛しくて触れたくて、今にも全てぶっ飛ばしそうになってまずい。
ーッジリリリリリリリリリリリリ!!
俺の思考を読んだが如く、一喝するような音が鳴り響く。
呆れてため息をつきながらも渋々通話に出る。
通話の相手はアレックスで、アレックスの弁舌に乗せられたかのように明日王宮に行くことになってしまった。ハインツにも後で連絡しておこう。
慌てながらも時間調整をしてくれるだろう。
ロティが王宮を嫌がるなら少しの間待っていてもらうつもりだったが、ぽかんと口が開いたままでも
「私も行く…?」と疑問系ながらに行く事が決定した。
◇◇◇
タリスが宿を経営しているのは意外だったがそれは問題ではなかった。
問題はロティに興味を示した男、タリスの息子だ。
以前もパーティ内でトラブルがあったロティは、相手を嫌がったり拒否したりしないのだろうか。
ロティの直接的な拒否を見た事がないから想像するにも乏しい。
今後まだ冒険をしたいのだろうか。
というよりなぜ冒険者をしていたのだろう、家族や友人はいなかったのか。
俺に会うまでに恋人なんて作ってなかっただろうな。
今までそこを考えていなかった。
17年も会わなかったんだ、もしかしたら恋人の1人や2人はいたかも知れない。
誰かがロティを抱きしめていたり、キスをしていたら?
たかが想像しただけで心臓が抉られるみたいに痛い。
ロティの外見に釣られる輩が多い。
冒険中などに他の奴のロティを好意の目で見た時俺は耐えられるのか。
ドロドロとした感情が心の中で暴れる。
そんな事を考えてしまっていると顔が強張っていたのかロティに指摘され、意を決して俺は改めて聞いた。
「…ロティはまだ記憶を全て思い出してないから今の感情でいい、教えて欲しいんだが…。
冒険者をまだ続けたいか…?」
「え?」
そこからロティは考え込んでしまった。
口に手を当て難しい顔をしている。どんな顔を見てもロティが愛らしくてたまらない。
今すぐ抱きしめてキスして考えるのを阻止したくなる。
キス以上の事を頻繁に考えてしまうほど、俺の頭はおかしくなっている。
ロティに漸く会えて触れ合えているのに、もっと貪欲に欲しくなる。
歩きながら一考したロティは俺を見て柔かに口を開いた。
「私ね、生きるために冒険者してたの。
いつかはのんびり暮らせればいいなと思ってたんだけど、今はちょっと違ってね。
ルークと暮らしたいのもあるけど、一緒に冒険もしてみたいの。
前世の私はルークと一緒に冒険もしたかった。
でも魔法も使えなかったし、何も出来ないまま死んじゃったから。今度はルークと一緒に色んなことを出来たら嬉しい。それが答えかな。」
心臓を撃ち抜かれたようだ。
どこまでもロティは俺の事を想っていてくれる様で安心してしまう。
俺もロティと一緒ならなんでもしたい。
冒険でも生活でも遊びでも。今まで足りなかったロティを埋め尽くしたい。
歩きながら話していたこともあり、目的地に着いてしまった。
溢れんばかりの気持ちを言葉にするには時間が足りず、開き掛けた口を無理に閉じてギルドに入った。
◇◇◇
ギルドの2人に挨拶が終わるとロティはしみじみと感情に浸っている様だった。
(…終わりか?挨拶…。他に行きたい所はないのだろうか。)
ロティは前世も前前世も友達という存在がいなかった様な気がする。
前前世は俺が親友兼恋人みたいなものだったし、
前世は俺探しで友達を作る暇がなかったはず。
強いて言うなら記憶の魔女とは仲良さげだった。
だが魔女と友達だというのは特殊だろう。
魔女の方からそれを望まなければ普通の人間じゃ相手になんかされないのだ。
だからかもう他に行きたいところがないと言われても不思議じゃない。
多少固まるロティの表情を見てちょうど昼時なのを思い出し、話題を変えるためもあって昼食を誘った。
昼食は美味かったが、代金を払う時にロティが普通に金を出そうとしたのには驚き、呆れた顔をしてしまった。
なのにロティも何故か俺に強気で挑んできた。
「ルーク…。これから一緒に暮らすんでしょ?ずっとルークが払うつもり?」
全くもってその通りなのになぜそれを怒られた様に言われているのかが意味がわからない。
「これから、と言うよりもう一緒に住んでる。寧ろこれからはロティに一銭も出させる気がない。何のために100年以上働いたと思っているんだ?」
「一銭も…って、いやいやいや、おかしい…。今後の収入とかどうする気なの…?
何のためって…、何のため?」
今後の収入も何も、王宮を5.6個建てたいとか、毎日新しい魔導具を100個欲しいとか言われない限りは死ぬまで生きれるだけの蓄えがある。むしろ余るだろう。
それよりもロティが全く俺の意図に気付いていないようで、頼りにされていないのが気に掛かり溜息をついた。
素早く代金を払いロティを連れて店を出た。
(ロティにはきちんと直接的に言わないといけないか。)
そう思った俺はロティには気恥ずかしくなろうが思った事を伝えるよう決心した。
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