第13話


「こっちだ、ハニー。知り合いの異世界人の家は入り組んだ路地裏にあってな。案外してやるから付いてこい」


力いっぱいに掴まれた手が痛い。そんなにしっかり握らなくてもついて行くのに。でも、こんなに早く迷い人と接触できるなんて幸運だ。見るからに悪い人だと思ったのに、人は見かけによらないものだなぁ。

ぐいぐいと引っ張られ、スキンヘッド男の後を歩く。

それにしても、随分と細い道に入った。迷い人の家は路地裏にあると言っていたが、まだ着かないのだろうか。何度もぐねぐねと曲がったので、一人で元の通りに戻れる気がしない。


「ほんと、ばかだよなぁハニー」

「へ?」


何、と思うまもなくいきなりスキンヘッド男に突き飛ばされた。強かに尻を打ちつけた。痛い。


「異世界人なんてそうそういるもんじゃねえ。しかも旅人ならともかく、街に家構える異世界人なんざ聞いたこともねぇよ」

「なに言って」

「だから、嘘に決まってんだろ、お前をここに誘い込むための、な」


嘘……!

騙されたんだ。でもなんで自分なんか? お金だって持ってないし、目的がわからない。


「!? な、にして」


地面に倒れたままのホシオトに馬乗りになったスキンヘッド男は、ぐい、とホシオトの華奢な両腕をまとめあげ、頭の上であの太い腕に拘束される。

驚いて声も出せずにいるうちに、乱暴な手つきでシャツが引き裂かれてしまった。びりり、と嫌な音がする。


「……!!」


やだ、やめて、どいて!

恐怖で、唇が震える。ニヤニヤ笑いが近づく。

いや、いやだ。するり、と素肌の腹の辺りを撫でられて身体全身にぞわわ、と鳥肌が立つ。


「たす、けて……だれかっ」

「はは、そ〜んな蚊の鳴くような声じゃあ、誰も助けには来ないだろうなぁ。こんなとこまでのこのこと知らない男に付いてくる女も悪いだろ。警戒心なさすぎて逆にびっくりしたぜ。勉強料だと思って諦めるんだなぁ、大人しくしてりゃあ、お前も気持ちよくしてやるぜ」


もうだめだ。

いきなり知らない世界に飛ばされて、あげくこんな誰とも知らない気持ちの悪いスキンヘッド男にけがされてしまうくらいなら、死んだ方がマシだ。

ぎゅっとつぶった真っ暗な視界に、どうしてかあの男の姿が浮かんだ。


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