第12話
「おう、あんたよく見たら可愛い顔してるなぁ」
「へ?」
先程のスキンヘッドの男が立ち去らずにホシオトと男たちの話を聞いていたらしい。
「そういえば、風の噂で聞いたことがあるのを思い出した。異世界から来たってやつの話だ」
「ほんと! おにーさん、それ、詳しく教えてくれない?」
おじさん、と呼ぶと反感を買うということは数日前に学んだので、明らかに狼の男より老けているスキンヘッド男をそう呼んでやる。
「まあまあ、焦るなや。ほら、酒でも飲みながら話してやるかなぁ」
げへへ、と下品な笑いを浮かべているのが少々気味が悪く、出来ればさっさと情報を聞き出して離れたい。
空いていたカウンター席に並んで座る。腰に太い腕が回され、妙に身体が密着している。
ホシオトはさりげなく離れようとするが、見た目通りの怪力らしい。びくともしない。
「ほら、お前も飲めよ、俺の奢りだぜ。俺は滅多なことがねぇかぎり奢りはしないことにしてるんだ、ハニー」
「は、ハニー……って?」
「俺、お前のこと気に入ったんだ」
「え。いや困る」
「俺は本気だぜ、お前が子どもだとか大人だとか、そんな些末なことはどうでもいい。お前のためならどんな財宝も投げ打ってやる」
「……」
真剣な表情をしている、が、卑下た笑みは隠せていない。信用しきれない。
「あ、ありがと。私もあんたのこと素敵だと思うよ。けど、あんたの知ってるっていう異世界のことが気になって気になって仕方ないんだ」
「そう焦るなよ」
運ばれてきたジョッキをぐい、と傾け、スキンヘッド男は一気に飲み干した。
「わあ、いい飲みっぷり」
嫌味のつもりで呟いたら、褒め言葉とでも受け取ったのかニヤニヤとだらしない顔になった。ニヤニヤがずずい、とホシオトに近づく。酒臭い。
「俺はな、異世界人の友達がいるんだ」
ひそひそ、と内緒話をするように小さな声で囁かれる。
異世界人の友達だって!
「その人に会わせて!」
「し! 声がでけぇよハニー。あいつはー、そう。ちと恥ずかしがり屋でな。こういう騒がしい場所には顔を出したがらん」
「そ、そうなんだ、家とかに会いに行くのは迷惑かな」
「いやいや。せっかくの客人だ。きっと歓迎してくれる。そういう奴なんだ。お前、この後暇か? ちょうど奴の家を訪ねようと思っていたところだ」
「ナイスタイミングじゃん! もちろん行くよ」
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