第36話 学校祭再びです。
学年が上がり、二回目の学校祭が近づいてきた。
その頃にはケインの身長は百八十を超える。
ベルトには及ばないまでも、やはり遺伝子は受け継いでいるようだ。
寝る前のEMSを続けたせいでバキバキである。
ケイン自身も、
(体脂肪率は一桁ぐらいじゃないだろうか……。
水に入ったら溺れるかも……)
などと思っていた。
そんな時期、ケインたちはカミラを含めてレオナの家に集まっていた。
ルンデルには許可を得てある。
まあ、菓子などの収入も増えルンデルの店も増えていた。
レオナとケインがくっつくことを期待しているルンデルは、ケインがレオナと会うこと嫌がることはなかった。
「どうぞどうぞ」というかんじである。
(王家と侯爵家との繋がりもできるから余計だろうな)
ケインはそんなことを思う。
「今度の学校祭、さすがに模擬店はしないわよね」
レオナが雰囲気を読む。
「そうですね、私は剣術魔術混合戦のトーナメントに出たいなと……」
とエリザベス。
(チラチラ俺を見ているのは、パートナーになって欲しいのかな?
でも、お付きを差し置いてそれは無理でしょう……)
苦笑いのケイン。
すると、
「私は魔術戦ね」
とラインが言う。
そんな三人を見て、
「俺は全部かなぁ……」
ケインが呟くと、
「「「全部!!」」」
と三人はケインを見て驚いていた。
「悪目立ちするなら、それくらいはしないと!」
ケインはニヤリと笑う。
「混合戦のパートナーは?」
エリザベスが期待の目で聞くが、
「一人で戦う。
確か一人でも良かったはずだよね」
とケインが言うと、
「それはそうだけど……。
不利でしょ?」
ラインが言う。
「そうです、誰かがフォローしないと……」
エリザベスも続いた。
しかし、
「でも目立つなら一人かな?」
ケインは譲らない。
「フィリップお兄様でさえ、同学年の魔法使い筆頭を連れます。
なのに一人なんて……」
エリザベスが心配そうに言ったが、
「だからいいんじゃないか。
一人で王子と魔法使いを倒す。
注目はされるだろ?」
そういうと、
(わざと一人で戦って二人に負けたとあっては、バカにされるだけだろうな。
でもそれぐらいはする必要がある)
とケインは考え、三人を見た。
「それぐらい不利な戦いに勝てないと、二人に近づくことができないってことだ」
ケインの意志が固いのを知っても、
「そうですが……やはり不利かと……」
エリザベスが心配する。
「そう思うなら、リズとラインが混合戦に出ればいい。
強い相手を倒してくれたら俺が楽になるし……。
リズとラインがどのくらい強くなったのかも知りたいしね」
ケインの提案に、
「わかりました。
私はラインと混合戦に出ます。
覚悟しておいてください、私はケインを倒すつもりで行きます」
意志の籠った目でエリザベスは言った。
ラインも頷く。
「ああ、覚悟しておくよ」
ケインは笑う。
「私は何をすればいいのよぉ」
レオナが声を上げる。
「そうだな、俺の付き人をしてくれるか?
汗を拭いたり、水を出してくれたり、カミラとそういうことをしてくれると助かる」
「えっ、ケインの汗を?」
「ああ、俺だって汗ぐらいかくぞ?」
「そっ、それはいいわね」
「「何で?ご褒美じゃない」」
レオナとエリザベス、ラインの言葉に、
「ん?
ご褒美かどうかは知らないが、リズとラインは選手だろ?
俺の手伝いはできない。
レオナならできる。
それだけの話だ」
リズとラインは仕方ないという顔をした。
「下着を洗ったりとかしても?」
レオナが聞いてくる。
「洗うのはカミラがすると思うけど……。
まあ、洗ってもらってもいいかもな」
「下着の匂いを嗅いでもいい?」
(何だか変な方向だな……)
そんなことを思うケインだが、
「それはカミラに聞いて。
そう言うのは俺に言うよりカミラに言ったほうがいいと思うぞ」
というと、
「カミラさん、いい?」
レオナがカミラに聞く。
話をニコニコと聞いていたカミラが、
「一緒に嗅ぎましょう。
そして顔をうずめるのです」
というと、
「わかりました!」
レオナがコクリと頷き、変な絆で繋がる二人が居た。
(つか、カミラは俺の下着を嗅いでいたんだな……)
知らなくていいことを知ってしまうケイン。
こうして、エリザベスとラインの剣術魔術混合戦参戦、ラインの魔術戦参戦、レオナの手伝いが決まるのだった。
トーナメントの前に予選をして剣術、魔術、混合、出場八組が決まる。
まず、この予選で勝ち上がることが優先される。
王家の流れであるフィリップ王子、エリザベス・ライン組は予選から除外されていた。
(その辺のひいきは仕方ないか……。
その分あの二人は強いのだ)
ケインは苦笑い。
剣術のトーナメントでは基本AクラスかBクラスの者たちが来る。
十人程の中から一人選ばれるという予選。
当然、ヘイネルとローグも参加していたが、上級生の剣技に敗退していった。
俺の番……。
「お前が二年の筆頭か。
俺は、三年の筆頭。
負けるわけにはいかないなぁ……」
ニヤリと笑う二年生筆頭。
「筆頭と言うなら、エリザベス殿下でしょうね。
私はただ強いだけです」
ケインが本当のことを言う。
「鬼神の息子と言うその技術。
見せてもらおうか」
(んー、〇男塾?)
模擬戦用の木剣を構える三年生筆頭。
示し合わせていたのか、周りに居る者たちも俺を狙った。
戦いを始めると、皆カミラには劣る。
ベルトにも、エリザベスにさえも劣っているのだ。
そのためケインには周りの剣筋が完全に見える。
ギリギリでかわし、相手の利き手を攻撃した。
ケイン以外の者の剣が地に落ちる。
そこで審判の声がかかり、ケインの予選通過が決まった。
「やったわね」
レオナが抱き着く。
「さすがです」
当たり前の顔のカミラ。
「「うー」」
動けないリズとライン。
(まあ、仕方ない)
魔術戦トーナメントの予選、についてはラインと重なる心配があったがこれも通過。
複合戦トーナメントについても予選を通過する。
複合戦はフィリップ王子とエリザベスが出場するために六組のみだったが、通過することができた。
(二十対一と言うのもなかなかの予選だったと思う)
「父さん、母さん。
全部予選通過したよ」
「うむ。
よくやった。」
「まあ、ケインなら当たり前ね」
いつぞやのせいかミランダのおなかは大きくなっていた。
「これで本番ですね」
カミラが言った。
「そうだろうな。
ただ、これは最初の一歩。
あの二人をこっちに連れてくるためのね」
「私の友達を、連れてきてもらえますか?」
「そのつもりだよ」
ケインはカミラと共に笑う。
その会話にニコニコと聞くベルトとミランダ。
「侯爵の娘だけでなく王女を妻にするつもりなんだから凄いわね。
でも、王女を妻にするなら、せめて侯爵ぐらいにはならないと……。
男爵、子爵、伯爵、侯爵……さて、どの爵位に成り上るのやら」
ミランダがニヤリと笑うと、
「まあ、好きにすればいい。
俺は手伝うだけだ」
ベルトは頷くのだった。
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