第30話 試験勉強です。
(学校では年度の中間に試験がある。
座学の三教科、剣術、魔術で計五教科だ。
まずは、ここで目立たないと……。
とはいえ、既に昼休みなんかにリズ、ライン、レオナと一緒に居る時点である意味目立っていると思うが、それではダメなんだろう。
まずは試験か……。
語学、数学は何とななるとして社会。
母さんの本は魔術に特化していたために、周辺の情勢は知らなかったのだ。
実際に戦いに出ると言っても王都周辺だしね)
休み時間に社会の勉強をしていると。
「やほ!」
「ケイン、来ちゃいました」
「私も来たよ」
ライン、リズ、レオナの三人が現れた。
「お付き残り三人は?」
「私がケインのところへ行くようになって、教室以外は何もしなくなったの」
「そういえば最初に会った時『俺の夢が』とか『家の出世が』とか言ってたから……。
リズに見初められるとか、近衛の騎士に取り立てられるとか、宮廷魔術師に取り立てられるとか、色々夢を持っていたみたい。
けど、完全にその鼻っ柱を折っちゃった人が居るからね」
ケインをジト目で見てラインが言う。
「そんなこと言われてもなあ」
「ヘイネル、ローグは、剣でケインに勝てないことがわかった。
それに、私もリズもケインに教わって、無詠唱で魔法が使えるようになっちゃったでしょう?
だから、ソルンは乗り遅れた感もあるかもしれない。
下手にプライドが高いからケインに教えも請えないし……」
ラインがボソリ。
初回の魔術教室以来、無詠唱の練習をしていたリズ、そしてラインは無詠唱での魔法使用を体得していた。
「でも、馬車には乗ってきてるんだろ?」
「雰囲気悪いのよ。
私としては、ケインとレオナと一緒に帰りたいな」
「ライン!
あの子達も家を背負ってきているのです。板挟みなのでしょう」
リズが注意した。
(確かになあ。王女の護衛なんて両親の期待があるだろうし……)
「ラインが教えてやればいいじゃないか」
と言うと、
「やり方なんて聞いてこないと思うわ。
四人でも仲間じゃなくてライバルと考えてるみたいよ。
私は面倒だと思うけどね」
(ここでもプライドか……。
俺が面倒臭がって、Gクラスに入ったのも原因の一つ。
最初から全力のほうが良かったのかも……)
ケインは考えていた。
「で、社会の本なんか広げて何してんの?」
ラインが聞いてきた。
「ん?
見ての通り勉強だよ。
ちょっと苦手でね」
「ケインでも苦手なものがあるんだ」
レオナがまじまじと俺を見て言った。
「歴史は好きなんだが、
地理がな……。
どの国と接しているとかが覚え辛い」
「私の家なら、正確な地図があるので、ケインに教えることができるのですが」
リズが言った。
「さすがに王城に入るのはね……」
「だったら、私の家に来る?
王城のほどじゃないけど、正確な地図があったはず」
今度はライン。
「いや、地図って国家機密でしょう?
ホイホイ見せるとは言わないの!」
ケインが言うと、
「私の家には街道図があったと思う」
最後にレオナが言った。
「私んちで勉強会しよう!
打ち上げはレオナのところだったんだから、次は私んち!
レオナが街道図を持ってくれば、私の家の地図と街道を比較しながら村や町の位置を確認できるでしょう?
そうすれば地理だって大丈夫」
「えっ?」
ケインが勝手に進む計画に驚いていると、
「それいい!お父様に言って、持って行く」
手を叩いてレオナが言った。
「良いのか?
ご両親に迷惑はかからないか?」
「屋台の打ち上げの時の話をしたら。『その子いいわね』ってお母さまが」
ラインがニッコリ。
「どんな話をしたのやら……」
ケインがヤレヤレと両手を上げる。
「えっ、夜、私がケインのベッドに入ろうとするのを止めて『今はダメだ、周りが納得しない。
俺はラインに相応しい男になるために成り上る』って言ったって!
きゃっ」
ラインはぽっと頬を染めて言った。
(その「きゃっ」は何だ?
というか、大分脚色してないか?)
「それ、俺が最後に言った奴だけだろ?
そこまでの流れとかは?」
「そんなの要らないでしょう?
結果さえあればいいの。
それに、途中の『私の裸を見た』件を言ったら面倒。
お父様玉砕覚悟で鬼神の家に攻め込むわよ?」
(何とかなると思うが、国外追放とかになりそうだ)
「とにかく、両親に『俺が頑張ってラインと婚約するつもりだ』と言いたかったと……」
ラインはコクリと頷く。
(はあ、まあいっか……。
約束してるしな……)
指をくわえて見ているリズ。
「羨ましいと?」
ケインが聞くとリズもコクリと頷く。
「俺の話とかした?」
「私は、あの打ち上げで『みんなと仲良くなった』と言いました。
すると、お母さまが目を細めて喜んでいました」
「まあ、先は長いがリズとも婚約できるように頑張るよ。
とりあえず目立つためには校内で一番ぐらいにはならないとね」
「ああ、だから勉強を」
嬉しそうにリズが笑う。
はっと、何かに気付くと、
「私もラインのところの勉強会に参加します。
いいですねライン」
とラインに言う。
「ハイハイ、かしこまりました」
こうして、ラインの家での勉強会が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます