閑話 万象愛
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リーシア視点
私の家族はおかしい。
まずは、パパ。
パパは人が大好きだ。全ての人を愛していると言っても過言では無い程に人類を愛している。
どんなに人類が悪い事をしたとしても、全てを肯定した。そこには何の根拠もない。人だから、という理由で人類を愛している。
次にママ。
ママは人を愛でる。自分も同じ人であるのに、ペットや玩具のように愛でて遊ぶ。
そして、人類をオモチャと思っている為、人が悪い事をしても、気にも留めない。精精、玩具やペットが愉快な事をしているとしか思っていない。
最後に私、
私は最初からおかしかった。二人の子だったからなのか、私は見るもの聞くもの考えるもの、全てが愛おしかった。
パパやママの影響ではなく、生まれた時からそうだった。私は全てを愛す狂気を人の形に押し込めてできた、決定された在るべき人形の一つとして生まれてきたのだろうと理解した。
そして、理解すると同時に、一つの能力が発現した。
おかしいと思うよね。ファンタジーじゃなく、この世は現実だから、そんなものはないと思うよね。
実際、私の能力は発火現象や氷結現象を起こすものではなかった。それはよく聞く絶対音感や瞬間記憶と同じ系統だった。
その能力の名を――構成感情認識――という。というより、名付けた。まぁ、そのまんまの意味だよ。うん。
効果は私が目視した相手を構成する感情を視れるというものだ。
頭おかしいと思うよね。実際頭はおかしいんだけど、これもまた現実なんだよね。
構成する感情を視れるというのは、円グラフで見えるんだよね。
例えば、とある政治家を視たとする。彼を構成する感情が薄っすらと円グラフとして浮き上がってくるのだ。そこには、自尊心24%保身24%金銭欲20%嫉妬12%その他20%と書かれている。
面白いでしょ。
これを視ると人の悪いところや生物の抱く感情が視えてしまう。
この能力を発現した人は確定で人間不信に陥る事だろう。
でも、私は別。生まれる前から決定付けられた狂気の愛がある。名付けるなら万象愛。全てを愛する為に生まれてきたのが、私。
悪い所を視たとしても、生まれ持った万象愛を以って、彼らを愛する事だろう。
親愛を、聖愛を、母性愛を、父性愛を、性愛を、隣人愛や人類愛を、慈愛を以って彼らを愛するだろう。
それは置いておいて、私は新しいお友達ができた!
名前はリズ=カムニバ。カッコいい女の子。でも、人を食べる事に執着している殺人鬼なんだ。そんな所も好き!
私がリズと友達になりたかったのは、人が好きなのもあるけど、初めて視る構成感情のグラフだったからだ。
彼女には二つのグラフが存在した。まず、生物には一つのグラフしか存在しない。まあ、今までの経験からだけど。
更に、彼女の構成感情が異常だった。
一つ目のグラフは異能:偽装⦅人の形⦆85%家族愛15%であった。
二つ目は飢餓(狂気:食人)100%だった。
少なからず、彼女は私と同じような異能を持っている事が分かった。これに関しては、他にも視た事があり、発現する理由も予想がついた。
だが、一番気になるのはそこではない。家族愛という項目だ。
彼女の持つ感情で、唯一人間らしい感情であり、唯一嘘偽りではない感情。
私は初めて、個人に対して興味が湧いた。
そこまで狂っていて、どうして人らしい感情を持つのか気になった。
だからね、リズ。私が愛するリズ。
リズをもっと愛する為に、リズを教えて欲しいなぁ。
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