第32話 変幻自在

 第2回戦を行う為に、私はまた会場の中央部に居た。


 念の為に、二回戦に出場するプレイヤーの紹介だけはしておこう。


 まずは、アレクだ。

 シードで出場。噂では、現時点で最強のプレイヤーらしい。

 私的には、それよりリーシアの方が良いし、食べてみたい。女子供の方が甘みがあって、蕩けるような食感だからな。嗚呼、食べたいな。


 話を戻そう。次は、のこのこきのこだ。

 ふざけた名前だが、実力は折り紙付きだ。

 毒と薬のスペシャリストで、その場で新たな毒や薬を作れることが出来る。持久戦になることだろう。


 ヒロ、ロストという中二病患者を倒した英雄だ。

 ん?私も同類だって?何も中二病を馬鹿にしているわけではないぞ。中二病も感情の在り方の一つ。私は感情を否定することはないからな。

 あまり試合を見ていなくて、実力は不明だ。美味しそうプレイヤーを見ていたら終わってしまったのだ。つまらないものより、面白い事の方を選ぶのは普通だろう。


 4人目は烈華だ。

 彼女はオドオドしている割には図太いらしい。戦闘になると勇気溢れる行動をよくやっていた。さらに、魔物(小動物系から鳥系に、人系まで50体ぐらい)を召喚し、蹂躙していた。本人も戦っていた(自身が召喚した魔物に対して)。


 5人目、我が愚兄ことルシアだ。

 よく分からない事ばっか行っていた。


 6人目は私。

 言いたい事は早く人食べたい事。以上!


 7人目にリーシア。

 強い+可愛い=最強。あと、食べたい。


 8人目、我が麗しの姉、桜花だ。

 リアルチート勢である。私が言うな?私はそこまでだぞ。スペックがあっても、技術が足りないからな。

 是非とも、優勝して欲しい。


 次に歌紅夜姫だ。

 闇魔術と火魔術、聖魔術を使う。更に、死霊魔術も扱っていた。魔術に存在するタイムラグを符を使うことで、速攻で使用することが出来ていた。まあ、威力は落ちるが。


 そして、2回戦を現時点で勝ち残ったのが、アレク。ヒロにルシアだ。

 何故兄が烈華に勝てたのかは分からない。普通だったら負けるだろう。


 ラストにゲム。今回の死合の相手だ。

 黒髪に赤と緑のオッドアイ。あー、少し金の毛が混じっている。

 170cm前半の身長でモデル体型である。プロゲーマーだとは思えない体型だ。

 顔の特徴は胡散臭い青年みたいな顔だ。......少しだけ腹が立つな。

 衣装は近所に居るお兄さんのようなコーデをしている。



「やあ、君がリズ君だね。いや~、楽しみにしていたよ」



 とても明るい声で私に話しかけてきた。

 それよりも、此奴。わざと君付けで呼んだな。現実でも新任の先生にも男と間違われて君付けで呼ばれたことがある。......別になんとも思わないが。



「私はそこまで愉しみにしていなかったな。私は貴様を殺して、リーシアと殺し合いしたいからな、さっさと終わらせてもらう」

「これはこれは、手厳しい。でも、ボクは負けないよ」



 私は前回と同じように構える。



『3』



 目を瞑る。深く、深く、深く。私の深層へと潜り込む。



『2』



 ......。



『1』



 喰らえ。敵を喰らえ。目の前にある食材を喰らえ、平らげろ、食い尽くせ。

 血を巻き散らかせ。臓腑を引き千切れ。暴食の限りを尽くせ。



『0』



 さあ、行こう。狂った獣人形 真理よ。



『スタート』



 獣の如くゲムに喰らいに付きに行く。勿論、食べる気はない。退場になって、リーシアと殺し合いを出来なくなるからな。


 幸福に煌めく王の肉叉フェリスを前に突き出す。が、華麗に避けられる。



「《身体強化》、《変幻自在》、《身体硬化》」



 なんとなく嫌な予感がする。

 一度引くか。


 ――がシュぅっッ!!!――


 先程居た所には、手刀が落とされていた。詳しく言えば、異常な程に伸びた腕が地面にめり込んでいた。

 ......あれに当たっていたら、終わっていたな。

 第六感よ、感謝する。



「どうよ、リズ君。身体能力を上昇させ、身体を堅くし、自由自在に体を伸ばせる事が出来る。少しは興味を持ってくれたかな」

「興味は持たないが、面白くは感じる」

「それでもいいよ。じゃあ、楽しもう。ここは遊戯ゲームだ」



 遊戯ゲームか。貴様はこの世界をそう思うのか。

 まあ、人それぞれか。


 ゲムは足を私の前まで伸ばし、地面を踏みつけると、足を縮めて体を私の方向へと持って来る。拳を握っている為、そのままの勢いで殴りつけるつもりだろう。

 後ろに下がったとしても、伸縮を使って一撃を入れて来るだろう。

 ならば、ここで迎え撃つのみ!


 拳が私へと向かう。その瞬間に幸福に煌めく王の肉叉フェリスを突き出す。

 高い金属音が鳴り響く。

 なかなかSTRが高いみたいだ。押し負けそうだが、あれを使えば。



「《炎hy......なっ!?ぐっぁ!」



 炎と氷を纏わせるためにスキルを使おうとすると、腹に鋭い蹴りをされた。


 殴りだけ力を込めていると思ったら、蹴りを使うとは。STRは私以上か。

 しかも、あの蹴りは私に接近した時にその場に残ってた足での攻撃だ。

 正確に言えば、接近してきた時に身体ごと私に持って来るのではなく、足だけをその場に残していたのだ。その足を拳と肉叉が衝突した瞬間に縮めて、その勢いのままに蹴ったのだ。


 加速する勢いと強靭な身体能力、強固な筋肉。それらが私に齎す結果。それは私の腹に足が埋まっているというものだ。


 なかなかに強烈だ。HPも4割削られた。



「これで終わりじゃないよ。耐えてみせてよ、リズ」



 体が空中に浮く。

 まさかと思うが、そのまま振り回すとかしないよな。私はジェットコースターとか苦手なんだが。マジでやめろよ。

 イヤアァァァッァッッッァァアァアアア!!!

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