道は私の中に
私は今、現実に閉じ込められている。
手には、この世にあるすべてのものを破壊するツルハシを握っている。
しかし、このツルハシは現実を破壊することができない。
矛盾みたいな話だが、現実だ。
現実は四方八方が見えない壁でできており、このツルハシでも破壊することはできない。
ゆえに、私は現実から脱出することができない。
今の私は一本のツルハシ以外、何も持っていない。
強いて言うなら、私の体にぎゅっと詰まっている臓器だろうか。
臓器ならツルハシで簡単に破壊できるが、そうした場合、非常に恐ろしい結末が待ち受けるだろうと、最初は強くためらったものだ。
しかし、この現実の中で、ツルハシで壊せる物体は、私の体しかなかった。
そしてそれは、私が現実から脱出する為の一つの正解であった。
周りの壁が硬すぎて壊せないなら、それより柔らかい自分の体に穴を開ければ良いだけのことだ。
私はツルハシを自分の胸に突き刺し、自分の心臓を切りひらいた。
私の心臓に、一本の道ができた。
私の心臓からは新しい世界が生み出された。
その道を通って、私は新しい世界へ一歩踏み出す。
何でも壊すツルハシを片手に、今度は自分の手で新しい世界を作っていくのだった。
おわり
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