2014年1月1週②

「寒いねー。」

「タクシー使えばよかったねー。」

「お金勿体ないよー。」

「じゃあ仕方ないね。」

「カイロがあるから大丈夫。」

「え、そんなの持ってたの?わたしも欲しい!」

「はい、ちーちゃんの分。」

「え、封空いてるじゃん!あやちの分は?」

「あるよ?」

「え、じゃあ2個持ってたの?」

「うん。」

「もー!じゃあ最初っから頂戴よー!」

「頂戴って言ったらあげようかなって。」

「いじわるー。」

「いいじゃん、あげたんだし。」

「ん-。ありがとー。」

「たぶんこの駅だよね。バスは?」

「ん-、あー、すご。伊勢神宮行きがあるよ?」

「おー、すごいね。伊勢の生活の中心ってわけだ。観光客にとっても迷わないしありがたいね。」

「あと10分くらいで出発みたいだよ。」

「了解。」



「うわー。すごい人。」

「正月三ヶ日外したのにこれなんだ。1日とかどうなるんだろうね。」

「もっとエグイんだろうね。」

「とりあえずお昼ご飯?」

「うん!伊勢うどん!あとは、イセエビが食べれそうなところもついでに探す!」

「はーい。」


「え、こんな黒いの?」

「黒いね。」

「麺も太いね。」

「太いね。」

「「いただきます。」」

「お、え、すごっ。丁度ちょっと濃いね!美味しい!」

「見た目より濃すぎないね。寒いからかな、この濃いのが丁度良い気がする。」

「このお盆を膝にのっけて狭しと食べるのも風情があるね。」

「食べにくいけどね。あやちは机で食べたい……。」

「そういうこと言わないでー。なんとか。ん-。…………。よし。」

「何してるの?」

「はい、チーズ!」

「え、えー。」

「麺すすってるあやちも可愛いよ。」

「ちょっと恥ずかしーいー!」

「いいじゃん。可愛いんだから。」

「でもー。」

「なら、仕返しにわたしのことも撮ればいいじゃん?」

「ん-。…………。いい。」

「じゃあ楽しく食べよー!」

「うん。」

「……。これって、汁飲むのかな?」

「え、あんまり飲むものじゃないんじゃない?」

「でも、飲みたくない?」

「飲みたくはないけど。」

「じゃあ、飲も。」

「え、濃くない?」

「大丈夫。寒いから。」

「それ理由になってるのかな。」

「あやちも飲むでしょ?」

「飲まないよ!」

「もったいない。」

「あやちは自分の体の方が大事だから。」

「よし!ごちそうさまー!」

「ごちそうさまでしたー。」

「じゃあ、内宮行く?」

「そうだねー。内宮行って、帰ってきて、食べ歩きながらホテルに戻る感じ?」

「おっけー!……。お?人力車?」

「そうだね。乗りたいの?」

「乗ってみたくない?」

「恥ずかしいじゃん。」

「えー、また恥ずかしがる。そんなことばっか言ってたら、何もできないよ?」

「やりたいことはちゃんとやるからいいもん!」

「とにかく、値段が……。」

「あー、いくらくらいなんだろうね。」

「相場が分かんないからさ。えーっと。10分で1000円?」


「お姉さんたち?乗りたいの?」

「あ、えーっと、乗りたいっていうか、いくらくらいなのかなーっと思って。」

「多分そこまで高くないよ?しかも、最初に値段決めるんじゃなくて、道中で適当に『もっと!』って言われたら順次延長する感じだから。」

「10分って楽しめます?」

「正直楽しみ切れないかもね。でも詰まらなかったら10分で終わりでもいいし。」

「どんなところ行くんですか?」

「そうだねー。いくつかコースがあるけど。伊勢は初めて?」

「初めてです。」

「じゃあ、穴場スポットだね。人があんまりいないけど、実は有名なところとかね。どう?」

「どうする、あやち?」

「ちーちゃん乗りたいんでしょ?いいよ。」

「ほんと!やったー!じゃあとりあえず10分お願いします!」

「あいよー!」




「お兄さんありがとうございましたー!」

「こちらこそ、ありがとうございました。」

「あやちの方がすっかり楽しんじゃってるよね。」

「だって、楽しかったんだもん!」

「やって良かったね!」

「うん!」

「また伊勢に来た時は違うコースを案内するから、 声かけてね!」

「「はーい!」」


「いやー、30分も案内してもらうことになるなんてね。」

「楽しかったねー。」

「あー、あやちもしかして。恋?」

「恋?」

「恋。」

「あー、あのお兄さんに?」

「そう。」

「ん-、あんまり微妙かな。」

「ありゃま。お兄さん失恋だね。」

「向こうも何も思ってないでしょ。」

「え、結構来てなかった?」

「うそ?」

「連絡先聞いたりとかさ。おいおい、ってちょっと思っちゃったよ?」

「え、でもあれって伊勢の情報あげるからって。」

「嘘じゃないかもしれないけど、方便に決まってるじゃん。ほぼナンパだよ?」

「へー。お店の人でも信用できないんだね。」

「あやちが無防備すぎるだけだと思うよ?」

「でも男の人ともライン交換したって。」

「だから、それも嘘じゃないかもだけど、方便だって。」

「むー。男の人って怖い。」

「おー、あやちがまた男嫌いになってしまった。世界中の男性よごめんなさいね。」

「あやちにはちーちゃんがいるしいいや!」

「でもいつまでも一緒には居れないよ?」

「だいじょーぶ!それより早く内宮いこ!」

「はいはーい。」




「なんか微妙だったね。」

「微妙って。日本の中心だよ?」

「そんなこと言われてもー。全然中見れないもん!」

「それは思った。でも仕方ないよねー、神聖な場所だって言われちゃったら。」

「そうだけどー。でも、日本人なら中みたいじゃーん。」

「わがままだなー。」

「ちーちゃんは見たくないの?」

「見たいけどー。でも仕方ないなーって。」

「でもちーちゃんは穢れてるからダメだよね。」

「また、バカにしてる?」

「だって、欲の塊で、お酒もたばこも吸って。」

「お酒は吸わないよ?」

「そうじゃないじゃん!わかるじゃん!」

「まあ。」

「あと、エッチなビデオ見るし。」

「本能じゃん?」

「だから、ちーちゃんは、仮に一般開放されても行っちゃダメだよ!」

「なんであやちにそんなこと言われなきゃいけないの。」

「そんなことより、おかげ横丁だよ!食べ歩きしよ!」

「えー、疲れたよー。それにお酒飲めないんじゃ詰まんない。」

「でも、まだ伊勢海老食べてないんだからー!」

「あー、そんなことあったねー。忘れてた。」

「じゃあちょっと調べてみる!…………。……。あ、あるある、伊勢海老食べれるお店。」

「じゃあそこいって、食べて帰ろ?」

「少しお土産も見たい!」

「あ、お酒探さなきゃ!お土産見よっか!」

「ちーちゃんって、ほんと自分の欲に忠実だよね?」

「良いことじゃん!」

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