2014年1月1週①

「、むく、、!ち、、、ゃん、、!、、りよ、、!」

「え?なんて?」

「だか、 、!お、、ようよ!さむ、、、!」

「あ!あれ!富士山じゃない!?」

「もー!いい、、、に!はや、、、、ようよ、、、!」

「写真撮るよ?」

「え、、、なと、、、ったら、、ないよー!」

「なに?はい、チーズ!」

「、、、さむ、、、、かz、、、、!」

「あー、髪乱れちゃってる。ボサボサだよ?」

「だから早く降りよって言ってるのに!」

「あー、そんなこと言ってたんだ。ホントに聞こえなくて。」

「風強すぎるし、メチャクチャ寒いんだけど。」

「でも、入場料払ってるんだからその分楽しまなきゃ。」

「楽しむって言っても、これ以上何もないじゃん!」

「富士山見えるよ?」

「さっき見てたじゃん!」

「ん-。水平線が「別にここじゃなくても見れるじゃん!」……。ん-。」

「もういいじゃん!早く降りようよ!」

「あー、わたしも撮ってよー。」

「こんなところでカメラ構えたら落としちゃうよ!」

「意外と大丈夫だから。早く降りたいんでしょ?早く撮ってよ。」

「もー!ん-。あー、寒くてシャッターが押せないー。」

「がんばってー!」

「はい、チーズ!」

「イエイ!……。どう?可愛く撮れた?」

「可愛い可愛い。だから早く降りよ?」

「あー、ごめんもうちょっとだけ待って。」

「今度は何?」

「タバコ吸うからそれ撮って。」

「え、なんで?」

「何でも。カッコよくない?灯台でタバコ。」

「むー。もうほんとにそれで最後ね!」

「ありがと。…………。…………。」

「ちーちゃん?」

「やびゃい。火ちゅかにゃい。もうちょっちょにゃって。」

「あと10秒ねー。」

「あとしゃんじいぼう。」

「1,2,3,「ん-!かぞえにゃいで!」……。寒いんだからー!早くしてよー!」

「……。ふー。よし!火付いた!いいよ。いろんなポーズするから、適当に何枚か撮って。」

「なんか注文増えてるし。じゃあ適当に撮るね。」

「目線は向けないから!」

「はーい。」




「あ、ノートだ。なんか書いてく?」

「ちーちゃんってそういうの好きなんだね。嫌いだと思ってた。」

「わたしを何だと思ってるんだろうね、ほんとに。何書こっか。」

「ん-。他の人は何書いてるの?」

「それをマネしたら面白くないじゃん。オリジナリティにかけるっていういうか。」

「ちーちゃんのこだわりあんまり分かんないけど。じゃあ、灯台の感想書くとか?」

「面白くないけど、そうしよっか。えーっと。『灯台ってこんな寒いんですね!他の灯台も絶対登ります!1st灯台 安乗崎!あやち&ちーちゃん参上』こんな感じでいい?」

「参上って古くない?」

「えー、もう書いちゃったよー!」

「一句書いたらいいのに。」

「ん-。わたしだってまだ全然うまくないよ?」

「良いんじゃない?むしろ味があるんじゃない?」

「ん-、じゃあちょっと時間頂戴?」

「だめー、すぐ作って!」

「えー、ん-、むー。…………。…………。初風やタバコの沁みる安乗崎。」

「いいの?それ?」

「んー、出来としては微妙だけど。即興ならこんなもんかなって。」

「どういう意味なの?」

「それは読み手が考えることだから。……。よし。こんなもんか。」

「なにそれ。あんどう、けむりおんな?」

「これで、『安藤煙女(あんどうえんじょ)』。わたしの俳号。俳句用のペンネーム。」

「へー、そんなの持ってるんだー。」

「カッコよくない?」

「カッコイイかな?だって、この煙って煙草でしょ?」

「よく分かったね。」

「俳句にそんな名前合わせるなんて、どうかと思うけど。」

「それが良くないよね。俳句なんて結構俗的なものでいいんだよ。高尚なものだって思い過ぎだよ。」

「にしてもー。」

「いいのいいの!それよりも、本当のお目当ての方に行くよ!」

「うん!いこいこー!」

「こっから大体1時間くらいみたいだね。」

「ながーい。」

「いいじゃん!座ってるだけなんだから!」

「座ってるだけってのも退屈だよねー。」

「もー。」



「あー、ねえちーちゃん!俳句あるよ!」

「えー、だれだろ。……。え、山口誓子じゃん!」

「有名な人なの?」

「有名だし、わたしが一番好きな俳人だね。うわ、ちょっと感動かも。」

「へー。」

「ちょっとー!あやちが見つけてくれたのになんでそんな冷めてるのー!」

「だって、こんな反応になるとは思わなくて。」

「いやー、素晴らしいね。えーっと。『初富士の鳥居ともなる夫婦岩』。はー。」

「どういう意味?」

「え?書いてある通りだよ?『夫婦岩の間に富士山が見えた。いやー、年明け最初に見た富士山のまるで鳥居だね』って。」

「それの何が良いの?」

「なんでそういうこと言うかなー。」

「だって、意味わかんないもん。大したこと書いてないじゃん。」

「それが良いんじゃん!」

「へ?」

「そうなるよねー。」

「え、俳句なんて誰でも作れるじゃん!」

「そうだよ?だからわたしもやってるんじゃん。」

「へー。」

「あー、あやちがどんどん冷めていく。先行こっか。」

「はーい。」




「おかしくない?稼ぎ時じゃないの?」

「それはそうだけど、向こうだって正月くらいは休みたいんじゃない?」

「この正月の稼ぎ時終わってからでいいじゃん!せっかく地元の居酒屋で食べれると思ったのにー!」

「居酒屋好きだっけ?」

「お酒は飲めないけど、居酒屋は好きだよ?ご飯とか美味しいじゃん。」

「たしかにねー。」

「ちーちゃんはお酒も飲めたのに。」

「まー、わたしが運転手しちゃってるからねー。あやちが運転してくれればわたしも飲めるけど。」

「イセエビ食べたかったなー!」

「明日おかげ横丁で食べよ?」

「あるかな?」

「……。あるんじゃない?」

「でも、明日のお昼ご飯は伊勢うどんだから。」

「もう決まってるんだ。」

「せっかく旅行に来てるんだから、食べなきゃダメなものはリストアップしてあるよ。」

「何があるの?」

「松坂牛と、イセエビと、伊勢うどん。」

「じゃあとりあえずここで最初のメニューはクリアなわけだ。」

「ちょっとお高いし、松坂牛しか食べれないけどね。」

「もう少し少なくてもいいから、いろんなの食べたいよね。確かにそう考えると居酒屋の方が良いかもね。」

「でしょー。」

「お。きたよ。」


「お待たせいたしましたー。まずはこちら、地酒の飲み比べセットです。手前から『ざく』『はんぞう』『ほこすぎ』です。」

「ありがとうございまーす。」

「つづいてこちらが、松坂牛のサーロイン重になります。」

「うわ、すご。」

「ごゆっくりお過ごしください。」

「「はーい。」」


「本物目の前にするとやっぱすごいね。」

「ちーちゃん、リアクション大きすぎ。」

「だって、出ちゃったもんは仕方なくない?」

「だけどー。」

「いいから、食べよ?」

「それよりも、先に飲も?」

「よし!そうしよー!」

「何が美味しいかな?」

「飲んでみないと分かんない!じゃあわたしはこっちから順番に飲むね。」

「じゃあ、あやちも同じやつ飲む。」

「……。おー、美味しい!」

「これ何?」

「『ざく』だね。滅茶滅茶飲みやすい。」

「……。」

「飲める?」

「んー。微妙。あんま美味しくない……。」

「あやちに日本酒は早かったか―。」

「次のやつ飲も!」

「次はー、『はんぞう』ね。…………。……。ん-、これはわたしも微妙かも。」

「……。ん-、さっきと同じ。」

「ありゃりゃ。せめて少しくらい違いが分かればよかったけど。」

「あー!あやちのことバカにしたー!」

「だって、どっちも美味しくないじゃ厳しいじゃん。」

「むー!次の飲も!」

「はいはい、次は。『ほこすぎ』ね。…………。……。あー、まあまあだけど、『ざく』 に勝てないなー。」

「……。ん-。美味しくない。」

「ありゃ。全滅か。」

「日本酒美味しくない。」

「ちょっと好み分かれるよねー。わたしは『ざく』は好きだったなー。帰りに一本買っていこっか。」

「あやちは甘いチューハイでいいよ。」

「はいはい。そうしよーねー。じゃあ松坂牛食べよ?」

「お酒で口が苦くなっちゃった。」

「ありゃ。じゃあ、あやちの松坂牛食べてあげよっか?」

「だめー!」

「はいはい。じゃあ、いただきまーす。」

「いただきまーす!」

「うまっ。」

「おいしっ!」

「めっちゃ柔らかいし。タレもおいしいし。」

「ちーちゃん、もっと上品に言えないの?」

「美味いから美味いって言っただけじゃん!」

「なんか硬派だよね。おいしいとか、もっとかわいらしく言えばいいのに。」

「そんな本当に美味しいもの食べてるときに気使ってなんかいられないよ?」

「まー、そうだけどさー。」

「で。…………。日本酒がさらにうまい。」

「幸せそうだね。」

「幸せだね!ありがとね、あやち。」

「なんか言われるタイミングが微妙だけど。どういたしまして。」

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