2013年9月3週

ピンポーン

「宅配便でーす」

「はーい、今行きまーす!」

「…………で、…………です。ありざしたー。」

「ありがとうございまーす。」

「ねえ、ちーちゃん?何が届いたの?」

「まあ開ければわかるから。見ててよ。」

「……。え、なにこれ?」

「知らないの!?VRディスプレイだよ!?」

「あー、なるほど。ちーちゃんこういうの好きそうだもんねー。」

「あー!あやち、ばかにしてるでしょ!」

「バカにはしてないけど、別に買わなくても良くない?くらいな感じ?」

「ふふふ、そういうこと言うから駄目なんだよ。もしかしたら若干微妙かもしれなくても最新作品を購入することで、次の新しい技術へ投資してるってことになるんだから!」

「あー、ちーちゃんの熱い何かが出ちゃった……。」

「うわー、もうめっちゃシラケてるじゃん!いいよー!あやちには貸してあげないもん!」

「ええー、それは違うじゃーん。」


さてさて、お遊びはここまで。早速ゲームを……。

あ……?


「ねえ、あやち?このゲームやってみる?」

「え!?いいの!?」

「まあわたしはいつでもできるからねー。せっかくだし、うちにいるときくらいやってみ?」

「やったー!」


ヘッドギアのあごのベルトを締めてあげて。

コントローラを両手で持たせて。

あとは、スマホの録画を始めて、テレビの上に置いといて。

準備は完了。

あとはあやちの痴態を肴にワインね。


「あ、あやち。じゃあ最初の設定するから、ちょっと待ってて。」

「えー、早くしてねー。」

「はいはい。」


さて、今日の肴は可愛い女の子。

お酒がすすむ。

最初の設定なんてほとんどなくて、わたしのお酒周りのセッティングをちゃっちゃとしていく。

ワインクーラー、よし。

サーモンとタイのカルパッチョ、よし。

チェイサー、よし。

ウェットティッシュ、よし。

最後にトイレに行っておいて。


「よし、あやち。準備完了だよ。始めよっか。」

「もー、はやくはやく!ねー、これどんなゲームなの?」

「えーっとね、街中を探索して謎解きをする系かな。そんな複雑なゲームはまだ出てないと思うから、結構簡単だと思うよ。」

「よーし、じゃああやちでもクリアできちゃうかもね!ちーちゃんが遊ぶ分なくなっちゃうかも!」

「そしたら、ゲーム代だけあやちにもらうから良いよ。」

「えー、それはちょっと……。」

「なんでよー。あやちが一人で遊びきったらそうなるでしょー。わたし遊べないんだからー。」

「あーん、ごめん-。半分あげるからー。」

「じゃあ半分こね。あ、そろそろ始まるよ。」


あやちが見えてる画面はテレビにも映ってるから、何をしてるのかはわたしに筒抜けだけど。


「ねえ、あやち。今何が見えてるの?」

「あれ、ちーちゃん画面見えないの?」

「うーん、テレビに映ってるのが設定画面だけだから、あやちにはなんか見えてるかなって。」

「今はねー、ベッドから起きたところ。たぶん今から家を出て街を見れるんじゃない?」

「ふーん、せっかくだから見えてるの言いながらやってよ。」

「えー、わかった。」


よーし、あとは声を殺してあやちの乱れる姿を見るだけ。

武器は。

うーん、特にないのかー。

ただ逃げるだけなんだ。

へー。

…………。

え、このホラーゲーム、結構怖くない?

囲まれたらもうその瞬間に終わりじゃない?

抜けれなくない?

わたしでも腰抜かしそう。

大丈夫かな。


「え、結構これ勝手に動くんだね。」

「あ、そうなの?今何してるの?」

「今玄関開けて外に出たんだけど。なんか、え、なんだろ。」

「どうしたの?」

「町が静かな気がする。」

「荒廃してるんじゃない?」

「なんで?」

「そんなことわたしも知らないよ?それを解決するんじゃないの?」

「え、これ自分で動かすの?どうするの?どこ行くの?」

「なんか適当に家に入ってみたら?」

「どうやって動くの?」

「コントローラーの左のスティック動かしてみ?」

「え、あー、動く動く。」

「たぶんその辺の家の玄関で●ボタン押したら玄関開くんじゃない?その左のとことか。」

「え、これ?」

「そうその正面の。」

「ちーちゃん画面見えてるの?」

「あ。……。うん、見えた。」

「もー!見えてるんじゃん!じゃあアドバイス頂戴ね!」

「はーい。」

「ん-。えー、ぜんぜん家入れないよ?」

「じゃあ、家がトリガーじゃないかもだね。この手の奴は、一回自分の家に戻るか、街の端っこでマップ移動するかだけど。」

「じゃあ家戻るー。」

「気を付けてね。」

「ん?何に気を付けるの?」

「分かんないけど、たぶん急にいろいろ起こるから。」

「イベントとか?」

「そんな感じ。」

「分かんないけどとりあえず家戻るよ?」

「うん。」

「……。で、どうしたらいいの?」

「…………。……。」

「ちーちゃん?」

「…………。……。」

「ちーちゃん?ねえ、へんjうわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

「うおおおおおお!!!わたしもびっくりした。」

「むりむりむりむり、なにこれなにこれ、ちーちゃん!!!!」

「あやち、大丈夫?」

「無理!もういや!なにこれ!」

「探索系謎解きホラーゲーム。」

「全然そんなこといってなかったじゃん!」

「探索系で謎解き系だとは言ったよ?」

「一番大事なところ行ってないじゃん!変な感じしたの!単純な謎解きでこんな荒廃した街なわけないじゃん!」

「さすがにバレたかー。」

「一応やってみたけど!意味わかんない化け物みたいなの飛んでくるし!ちーちゃん!早くこれ外して!」

「えー、もうちょっと遊んでみれば?」

「いーやーだー!もう絶対やらないー!」

「ホラーを怖がるのも、キャラ付けしすぎるのは良くないよ?」

「目の前に『バッ』って来たの!怖すぎる!ホラーとかそういう問題じゃないから!」

「えー、もったいない。」

「ちーちゃんが自分で遊べばいいじゃん!」

「いやー、さすがに怖かったから、わたしも遊ばないかも。」

「そんなゲーム買わないでよ!あと、あやちにやらせないでよ!」

「面白いかなーって。」

「もー!ちーちゃんなんてきらいー! 」

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