第75話 寝てた
「……………スーっ………………スーっ…………………」
しばらく静かにしていると、千葉は眠りについた。
呼吸も静かに安定していている。
さっき風邪薬は飲んだと言っていたし、それが効いてきたのだろう。
このまま安静にしていれば、体調はよくなると思う。
下に行ってご飯でも作ってあげたいところだが、ずっと手を握られてるため、身動きが取れない。
食材は大体あったし、おかゆでも作ってあげようと思ったが、がっしりと手をホールドされている。
気持ちよさそうに寝ているし、もし、手を離した時に起こしてしまったら申し訳ない。
とりあえず、千葉が起きるまで待つとするか。
それにしても、氷見谷のやつ、来るの遅くないか?
あいつ、もしかしてこの部屋に監視カメラ仕掛けて、家からここをライブビューイングしてるんじゃないのか?
全然ありえるぞ?
でも、 千葉が風邪で苦しんでいるところをカメラでずっと見てるのはありえない。
そこまでサイコパスじゃないだろうし、結構心配してたから何らかで来るのが遅れているのだろう。
「スマホでも見て時間潰しとくか~」
と、反対の手でポケットからスマホを取り出し漫画アプリを開く。
時間があるので気になっていた漫画を一気見する。
しばらく読み進めていると、徐々に瞼が重くなってくる。
「部屋あったかいし、なんかいい匂いするから眠くなるなこれ」
部屋の中には、いつも千葉から香ってくるブルージャスミンの匂いが漂い、室温も適温。
これは眠くならないわけがない。
だが寝てはいけない。
千葉の様子を見ていなきゃいけないからな。今は落ち着いているが、もしなにかあったたらすぐ対応できなくなる。
それに氷見谷が来た時になんて言われるか。
軽蔑した目で「あなたに任せて損したわ」とか言われそう。
だから、俺は起きていなきゃいけない。
なのだが……………
「…………ちょっと………」
「ん?…………ん?」
「…………起きなさいよ……あんた病人じゃないでしょ?…………」
「あ、あぁ。俺、寝ちゃってたのか」
「ぐっすりね」
漫画を読んで気を抜いていたら寝てしまっていたようだ。
自然に眠りについていたから自分が寝ていたことに全然気づかなかった。
「ごめん…………普通に寝てたわ」
「ううん、それはいいんだけど…………」
「どうした?喉乾いたか?」
「いや、その―――――手、そろそろ離してもいいんだよ?」
顔を逸らし、繋いでいる反対の手で髪をとかすと、落ち着かない様子で言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます