第52話 気まずい

 雑談をしようと言ったものの……………


「………………。」


「……………………。」



 俺達の間には無言が続いていた。

 室内はポテチの食べる音とが響くくらい静粛している。

 ………気まずい、ものすごく気まずい。


 そういえば、こいつと話すことなんてなかったから、話題が見つからない。それに2人きりの密室だ。超気まずい。


 でも、このまま何も話さないとここから出られない確率が高まる。てか絶対に出られない。


 極め付きは何といっても気まずい。

 ここは自分から話し掛けないと……………でもなんて話せばいい?

『今日はいい天気だな』とか?それはありきたりだし、昼間のセリフだ。今は夜だし。


『調子どう?』これはなしだな。今調子がいいわけがない。

 だとしたら、氷見谷の話題でも話そうとするか。


「千葉」


「あんた」


 話し掛けようとしたら、言葉が被ってしまった。

 これも気まずい。


「あ、先にいいよ」


「ううん、先どうぞ」


「俺はくだらない話題だから、大丈夫だ」


「…………なら、私から」


 スーっと千葉は深呼吸をすると、


「………私の話を羽彩から聞いたんでしょ?」


「――聞いたな」


「それでさ…………ありがと」


「え、お礼言われることしたか?」


 なにもしてないような気がするが。特に。それになんだこの千葉の表情。目がうるりと涙ぐんでいていつもと雰囲気が違う。


「あんた、私の話聞いて泣いてくれたんでしょ?」


「…………それね」


 氷見谷の奴、俺が泣いたこと話したのかよ………………最悪だ、恥ずかしすぎる。

 それに、なんで泣いたことでお礼を言われなきゃいけないのか?意味が分からない。


「で?なんで泣いた事にお礼を言われるんだ?別になにもしてないだろ」


「……………嬉しかったのよ」


 千葉は、少し顔を赤らめながら言った。


「嬉しい?」


「うん……………私なんかに同情してくれてさ、それに否定もしないで、逆に守ろう

 としてくれたんでしょ?」


「そこまで知ってるのか…………」


 小っ恥ずかしい。

 泣いてる所なんて人伝いだが聞かれたくはない。

 泣き虫だと思われるか、単に偽善者だと思われそうだ。


「全部羽彩から聞いたわ…………」


「マジかよ……………」


「だから、その…………ありがと」


 俺の服の袖を掴むと、上目遣いで言った。

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