第34話 一回くらいおっきくなりたいのよ!

「キャラに合ってない?そうかしら」


「……………そうよ。学級委員とかをしてる人は普通苗字呼びをするはずよ」


「してるじゃない、学校では。それにプライベートでも立川くんは苗字呼びだし」


「私は心葉って呼び捨てるじゃん。それはなんで?敬語はいつもだし」


「敬語は話す時の基本でしょ?それに、呼び捨てるのは特別な人だからよ」


「……………っ」


 特別な人という単語に、心葉の顔は、かぁ、っと赤くなる。


「今、ドキッとしたでしょ?」


 すかさず、私は小悪魔な笑みを浮かべ、心葉の顔を覗く。


「してない」


「ならなんで顔が赤いの?」


「それは……………氷見谷とくっついてて熱いから」


「そうゆうことなら離れる?」


「…………嫌だ」


「心葉は素直で助かるわ」


 ツンデレだけど、自分が不利になったらすぐに本音を言ってくれる。

 こっちとしては凄く助かる。イジり甲斐があるし可愛いから癒される。


「あとね、学級委員とかお固く演じてるのは心葉の為でもあるのよ?」


「演じてるのは知ってるけど、私の為?」


 心葉はキョトンと小首を傾げる。


「えぇ。私は普通に過ごしていると息をするようにモテるので」


 少しドヤ顔をした。そこに続けて、


「モテたら心葉に嫉妬されちゃうし、しかも男の人と私が一緒に居るのを見たら絶対イヤでしょ?」


「最初の言葉はいらないけど………………イヤに決まってるじゃない」


「それを嫉妬って言うんじゃない」


「するわよ……………嫉妬」


 プクッと心葉は頬を膨らませる。


「でしょ?だから私は陰キャを演じているのよ。ただの清楚女子として過ごしていた

 ら男子から言い寄られて心葉と一緒にいる時間が取れないものの」


「…………氷見谷はモテたの?中学校の時」


「モテたわね。私、可愛いから」


「自分で言うのはムカつく。事実だけど」


「心葉も可愛いから安心しなさい」


 私の胸に頭を挟んでいる心葉を撫でる。


「それに、氷見谷がモテるのは胸もだよ」


 心葉は自分の胸元を眺めながら言った。


「大きいからってこと?」


「男子は大きいのが好きだからね」


「そう?私は小さい方が好きだけれど」


「それは氷見谷がおっきいからでしょ!私なんて無いに等しいんだから!ゼロΩよ!」


「感度がよくて最高じゃない」


「一回くらいおっきくなりたいのよ!」


 無い胸を涙ぐみながら揉んだ。

 知らないだろうけど、胸が大きくていい事はこれと言ってない。逆にデメリットの方が大きい。


 肩は凝るし、下を向く時や靴下を履くときなんかは見えなくて邪魔だし、走ると痛いしブラは可愛い柄のはないし。


 でも、こんなことを言うと心葉に『小さい人の気持ちが分からないからだ!』と怒鳴られてしまうのでやめておこう。

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