第14話 二人の新武装
「というわけで作ってみました、試作対物レールガン一号くんです」
机の上に置かれているのは、マットブラックが映えるゴツい狙撃銃だ。全長は約一.五メートル。小柄な叶森が持つには随分と大きめな印象である。
「話してた通り、電池は銃床部分に入れてある。危ないからあんまりぶつけたりするなよ」
「わかってるって! じゃあ早速試し撃ちしたいんだけど、いいかな⁉︎」
新しいオモチャを買ってもらった子供みたいなテンションでソワソワする叶森。可愛いけど、どっかに銃をぶつけそうで怖いな。
「まあ、そう逸るなよ。落ち着け」
試し撃ちとなると、外に出る必要がある。そうなると、できれば俺も武装しておきたい。
「さっきは不用心にもこのまま外へ出たが、危険だから碌に武装もしないで外出するのは避けたいと思うんだ」
「それはそうだね」
「とりあえず俺も武装する。簡単に作れるものでいいから、何か考えよう」
俺達は基本的に二人一組で行動することになる。叶森が遠距離担当だとすれば、俺は
「近距離で便利なのはやっぱり拳銃と剣じゃない?」
そう言って机に置いてあった拳銃(みんな大好き
「進次、昔剣道やってたじゃん」
「小中学生の時だけな」
高校に入って早一年と半年が過ぎたが、今ではすっかり腕が
「よっ、有段者!」
「二段じゃ自慢にもならんぞ」
中学生で剣道部に入っている人間は、だいたい初段か二段までなら取得しているもんだ。四段五段ならともかく、二段程度じゃぶっちゃけ自慢するだけ恥ずかしい。
「無いよりよっぽどマシだよ」
「まあ気休めにはなるか。よし、じゃあ拳銃と剣の二つにしようか」
拳銃は叶森と同じガバメントで良いとして、問題は剣だな。ただ普通に鉄の剣を作ったところで、使いこなせる自信がまるでない。
「剣の腕が足りないなら、剣の性能で補ってやればいい。SF作品に出てくる剣といえば、やはりビームサーベルか高周波ブレードが定番だよな」
ビームサーベルに関しては既に作成済みだ。エネルギー状の刃を維持する理屈が一朝一夕にはどうしても立てられなかったので超高圧ガスバーナーの要領で作ってみたが、実用にはほど遠い。金属の加工とかには向いているかもしれないが、一瞬で敵を焼き切るのは少し難しそうだ。
「高周波ブレード、かっこいいね」
「確かにかっこいい。かっこいいんだが……」
超高速で振動して物質を切断する高周波ブレード。憧れの武器の一つだ。
……だが困ったことに、科学理論が思いつかない。
「理論が思いつかないんじゃ、作れないか。……似たような武器って何があるかなぁ」
ようは、切断力が普通の剣よりも圧倒的に高ければそれでいいわけだ。楽に切れるといえば、お手軽なのはチェーンソーである。
「単分子ワイヤーを
「単分子ワイヤー?」
「ああ」
単分子ワイヤーとは、その名の通り本体を構成する物質が単一の分子でできているワイヤーのことである。分子が一つしかないので、ワイヤーの強度が桁違いに頑丈になるのだ。
単分子状態を維持するには多少のエネルギーを必要とするが、そもそもが極細のワイヤーなので質量もそこまで大きくはない。必要電力は限りなく少ないだろう。
「これならいけるぞ」
電源は、それこそ通常の電池で問題ない。ワイヤーの単分子化を維持して、かつグルグルと動かすだけならそれほど大容量の電池が必要になるわけじゃないからな。
「――――【SF】、発動」
基本の形は直刀で、刀身の部分に単分子構造の鋭利なワイヤーを張り巡らせていく。剣自体がダメージを負わないように、ワイヤーを纏わせる部分も単分子化するのを忘れない。
「……『単分子ワイヤーソード』、完成だ」
ガンメタリック色に輝く直刀。重さのほうも振り回すにはちょうどいいくらいだ。
「試し斬りしよう」
「私は試し撃ち!」
お互いの得物を担いで、俺達は家を出る。行き先は朝に角ネズミを捕まえたあの森だ。
「どんな感じかな〜!」
「はしゃぎすぎて壊すなよ」
「壊さないよ!」
まだまだMPに余裕はあるとはいえ、あまり無駄遣いしたいものでもない。できるだけ壊さないように丁寧に扱わねば。
「……意外と、んしょ、重いや」
「そりゃそうだ」
叶森が対物レールガンを背負ってよたよたとしている。まあ一〇キロ以上はある鉄の塊なんだから、軽いわけがない。
「交代しながら持っていこう」
「ごめんね……助かります」
「ま、お互い様だな」
協力し合わないと生きていけないんだから、気にする必要はない。俺も叶森の銃には大いに助けられているわけだしな。
ただ、それはそれとして重たい荷物の運搬法を考える必要性を切実に感じる俺であった。普通に重い!
――――――――――――――――――――――――
[あとがき]
※単分子ワイヤーソードの単分子状態維持に電力を消費する旨を追加しました。
(2022/07/04)
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