二人の化け物
ライトは最初、何が起きたのか分からなかった。急に視界がホワイトアウトし、何も見えなくなった…耳も聞こえない…体のあちこちが痛いことだけは鋭敏に感じる、それに何かが焦げている匂い…
視力と聴力が段々と戻ってきて、ゆっくりと起き上がった光。彼女は周囲を見回し、そして戻った自分の感覚器官を疑った。
一座のメンバーがあちこちで倒れている…ライトは身体の痛みになど構わず、言葉にならない声を上げながら彼らの元へと向かった。舞台で何度も共演した仲間達…生活を共にした、ライトにとって家族と呼べる存在…その
ふと何かを感じ、その方向に目を向けると…座長がうつ伏せで倒れていた。ライトは急いで彼の元へと駆け寄り、そして大きく目を見開いた。「…見ての…通りだ……僕は…ここまでらしい…」ライトは血の海にガクンと膝をつき、拭った涙が再び流れるのにも構わず、震える手で座長の顔に触れる。
「結局……君の帰る場所を…見つけてあげられなかったね…許して…おくれ…」そんなことない、座長は自分に帰りたい場所をくれた…そう言いたいのに、口が震えて上手く言葉を
「…ライト…そんな顔をしちゃ…だめだ…君は…エモー…トゥス…の…看板…娘なんだから…」
座長の呼吸がどんどん弱くなってゆく。
「僕の……夢を……誰もが……自分…らしく……わらって………………」
「そんな……座長……座長ぉぉぉぉぉぉ!!!!」ライトと座長を見つけ駆け寄ってきたアクア…彼女は目の前の惨劇を見て
「……許さない……襲撃者共……皆殺しにしてやる!!!」その目を赤く輝かせ、怒気を爆発させるアクア。
「皆が…自分らしくいられる世界……」焦点を失ったライトの目が赤く染まり、そしてその色が、今度は緑に塗り潰されて不自然な赤へと変わり…そして完全な緑になる……
「安心してお休み、座長……あなたの夢は……僕が引き継ぐよ!!」
満面の笑みを浮かべた光…彼女は轟音の響く方へ、その身体を光子に変えて光速で向かった。
星一つ見えない暗闇…ぽつりぽつりと雨が降り始め、やがてその雨足が強まる…地面に水滴が激しく打ちつけられるその様子は、まるで雨音の中に悲劇を覆い隠してしまおうとする冷酷な世界の様相を呈しているかのようだ。
「……ねぇ、アクア?」ぱしゃ、ぱしゃ、と足音を立てながら、光は
「…奇遇だな…丁度私も、この世界に革命を迎えさせてやろうと思っていたところだ…」赤い目を上げて光を見据えた水面は、静かにそう答える。
「これからすべきことは山程ある……だがまずは、一座の安否確認と供養が先だ。」土砂降りの雨が、世界をひっくり返す決意をした二人の
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