エモートゥスの過去
「……」美しい白髪を風に
「…そろそろ出てきたらどうですか?」凛としてよく通る声で、急に「誰か」に呼びかけた彼女。その声に応じる形で、一人の女の子が瓦礫の影から飛び出してきた。腰の短刀を抜いて構える瞳を「あぁ待って待って、敵意はないから!」両手で
「…?」不審な表情のまま構えを解かない彼女に苦笑しながら、その子は自己紹介をする。
「エモートゥスの諜報部門、
「…何のつもりですか…?」そんな彼女に対し、眉を
「単刀直入に言うと、あなた達に協力してほしいの…エモートゥスを止めるために。」「エモートゥスを…止める?」首を
「私達はね、元は小劇団だったの…「エモートゥス」っていう名のね。」「!」そこまでの過去は視ておらず、少し驚く瞳を横目に訊来乃は話を続ける。「今のエモートゥスにも創立メンバーが残っててね?その中に現リーダーと副リーダーもいたんだよ……今は亡き、かつての座長は本当に人格者でね…世界から取り
瞳は訊来乃の話をじっと聞いている。
「男手一つで多くの子どもを養うんだ、当然暮らしは貧しかった…それでも…暖かくて…幸福な時間だった…」
遠い目をし、昔を懐かしむ訊来乃。
「でも座長は命を奪われた……何らかの組織によってね。」
「!!!」今度こそ、瞳はその美しい青眼を大きく見開き、感情を露わにする。
「座長もまた具情者でね。自分、そして子供達の生活の為、情力を活かして傭兵となり、各地に
「結局座長は犠牲となり、その命を使って私達の命を繋いでくれた……そしてその日、二人の化け物が生まれたの…とても哀しく
「あの仮面を付けた子達ですね…」瞳の問いに訊来乃が頷く。「二人は具情者として覚醒し、襲撃者を全員返り討ちにした…そして水面は、一介の小劇団に過ぎなかったエモートゥスを世界規模の大組織にまで発展させ、光はその絶対的な力をもって、障壁となる邪魔者を次々と消していった…歪んだ理想の世界を目指すために……」
瞳はしばらく黙っていたが、「…私の情力、ご存知ですよね?」と訊来乃に尋ねる。
「えぇ、相手の過去を覗き見るものでしょ?…あぁ、そういうことね。」瞳の意図を見抜いた訊来乃は、特に気にする様子もなく言った。「いいよ、私の過去を視ても。それであなたに信じてもらえるのなら。」
一瞬の沈黙……
「………いえ、貴女を信じます。すみません、貴女の反応を試しました。どうやら今の話は信用に足る様です…それに出来ることなら私も、無闇に他者の過去を盗み視るようなことはしたくないので…」瞳は少し申し訳なさそうな笑みを浮かべ、そう言った。
「……私はもう一度エモートゥスを再興したい…あの人が…座長が目指していた、本当の意味で「みんなが元気になる場所」を…世界で苦しんでいる誰かを救う、希望の場所を…!」強い決心を秘めた表情の訊来乃は、サングラス越しにでも見てとれる。
「お願い…力を貸して…」そう言われた瞳は、力強く頷き返した。
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