熱い怒り、冷たい怒り
「ちっ、「陽炎」!!」焔から発せられる火が消え、代わりに彼女の周り、その大気が揺らぎ始める。「陽炎」は彼女の情力「
「けっ、勘のええやつやな…これじゃあなんぼうちが攻撃しても、ゴスロリ娘にうちの攻撃は届かへん………あれを使わなあかんかもしれんな、火は分が悪すぎるわ……でもまぁ、
焔は驚異的なスピードで大型ゴーレムに近づき、そしてその手の鉄棒を力一杯振り抜き叩きつける…鈍い音を立て、ゴーレムの体表が一部崩れた。すかさず焔は連打を繰り出し、がらがらと岩と泥の体が砕けてゆく。
しかし同時に、別のゴーレムが焔を叩き潰そうとその太い腕を振り下ろす。焔はそれを避け、今度はその攻撃してきたゴーレムに反撃する。だがそのゴーレムが崩れそうになると、再び別のゴーレムが焔に襲い掛かる…そうしている間に、結局壊されたゴーレムは自動で自己修復してしまった。
そう。焔が苦戦していたのは他でもない、ゴーレムの持久力が原因だったのだ。
「分かったでしょ…私の人形達は、私が願えばずっと側にいてくれるの…すぐに離れていっちゃう人間なんかとは全然違う…だから人間なんて…人間なんていらない!!」まるで
「な…くそっ!!」焔は俊敏になった岩の塊から繰り出される重い連撃を回避し、逆に怒りの乱打をお見舞いする…だが多勢に無勢、劣勢を打破することは叶わない。
「あ、しまっ…うわっ!」ふとした隙を突かれ、焔はゴーレムに捕まってしまう。「うっ…く…ぐぁ…!」ゴーレムのゴツゴツとした手に華奢な身体を締め付けられ、思わず苦悶の声を漏らす焔。
「いい顔だよ…でも残念、あなたは私の人形じゃない…だから…はやく潰れちゃえ!!」赤い目をギラギラと輝かせながら、熱に浮かされたように叫ぶ泥濘、そして……
「…感情昇華「
辺り一面が凍りついている…道も、岩も、大気すら寒々と……そしてその氷の世界に
「……」身の毛が
「うちな、この情力は「怒り」の具情者にふさわしいもんやと思ってるねん。」焔の顔、そして身体から、赤い模様が段々と薄れてゆく。
「怒りって二種類あってな…一方は、それこそ烈火の如く燃え上がる「熱い怒り」、そしてもう一方は氷のように凍てつく「冷たい怒り」…その違いは「我を忘れているか否か」…我を忘れてない分、後者の方が
「…ごめんなおじちゃん、おばちゃん…そしてふうかちゃん…この力使う度にみんなのこと思い出して……みんなとの思い出を…みんなを守れんかった自分への「怒り」を、闘いの原動力なんかにしてもうて…」
完全に氷が溶け、前に倒れ込む泥濘…そして崩れ去ったゴーレムの残骸を前に、勝者である焔はどうしてか、辛そうな表情を浮かべていた。
焔の真の力「三凍四燃」それは「燃焼」と「凍結」、二つの状態を司るもの…すなわち、正負の「熱」を完全に操作する力である。燃えたぎる彼女の「怒り」は凍てつく「憤怒」へと昇華し、火と氷、その両方を支配下に置いたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます