緑と楽
(そういえば…わたし一人で相手を待ち受けるのって初めてだな…)
展示室の中央、真白はそんなことを考えながら武器を構え、辺りを警戒していた。
(まぁ一人であって一人でないようなものですし、大丈夫でしょう。)
彼女の心の中からそう言ったのは、真白の中の「哀しみ」の分情、青だ。
(変な感じっすよね~これ。一応多重人格に分類されるんでしょうか…にしても、同じ人間でここまで気質に差異が出るもんですかね…)
(おいてめぇら気ぃ抜くな!相手はいつどこから襲ってくるか分かんねぇんだぞ!)
黄に赤、他の感情達も各々自由に話している…というより
「まぁまぁ皆さん、喧嘩はやめましょう。それよりも…!?」
その時だった。他の者達の時と同様、部屋の電気が突然消える。
(真白さん、わたくしの情力を一瞬だけ発現させてください。最小限の情力消費で闇の中が見える筈です。)
言われた通り、真白は青の情力「
"Auch!! Ghh…"
暗闇の中から
「…あれが…わたしの最後の感情…」真白の目の前には彼女と同じ容姿、髪と目だけが緑色の少女がしゃがみこんでいた。
「…くはは、そうだったのか…成程「事実は小説より奇なり」とは上手く言ったもんだ…あぁ、意味通じてるよねぇ?あんた日本語話してたし。」
ゆらりと立ち上がったその分情は、話し方や雰囲気がどことなく血染に似ていた。
「一応挨拶しとこうか、お久しぶり。あたいはあんたの「楽しみ」の感情、そうだね…団のみんなには”Green”、
「…今まで現場で目撃されてきた人数は最大三人、しかしその構成員は四人以上だとわたしは推測した…つまり、あなたが組織のリーダー格であり司令塔でもある…違いますか?」対する真白は、緊張感を纏わせつつも己が分身に自身の推理を確認する。
「へぇ…大したもんだ、そこまで分かってたのかい…そうだよその通り、あたいらグリーン・バールは四人から成る窃盗団さ。あたいは大抵、潜入する場所から少し離れた所で指示を出したり情報を送ったりしてる…今日は何か嫌な感じがしたもんであたいも現場に
「んであれだよね、あんたが今ここに来たのは多分、このあたいをあんたに戻すためなんだろ?」そう言われた真白は素直に
「やはりあなたも…一度あなたを追い出したわたしを…嫌っていますよね…?」少しおずおずとしながら尋ねる真白に対し緑は、
「?なんであんたを嫌わないといけないんだい?むしろ感謝してるくらいだよ!」あっけらかんと返答する。「あんたがあたいを追い出してくれたおかげで、今あたいはすごく気が楽だし楽しい。そりゃそうだよね!今のあたいは「楽しみ」そのものだ、ってんだから。」予想外の答えに、真白は思わず面食らう…しかし…
「…ということは、わたしに還るのは…」「あぁ、お断りだ…ってことになるね。」緑は愉快そうに片眉を上げる。
「別にあんたに還らなくったって…いや還らない方が楽しいからね、楽しみしか残らないんだから…当然だろ?」そしてこれまた血染と同じような、妙に芝居がかった仕草と共に、真白へと言葉を投げ掛けた。
「…でもそうだねぇ、あんたがどうしても戻ってきてほしいってんなら…一つ
「ゲーム?」真白は首を
「あぁ。今夜の盗みはどうせ失敗だ、ならばこれから始めるべくは「逃走劇」さ…
「…逃げるあなたをわたしが捕まえたら…」
「あんたに還ってやってもいい。」挑戦的な目で真白を見つめる緑、どうやら真白に選択の余地はないらしい。
「…いいでしょう…そのゲーム、受けて立ちます!…但し条件があります。」
「何だい?」
「人を傷つけないこと、それから…」
「了解!そんじゃスタートだ!」
真白の話を最後まで聞かず、緑は天井付近の窓ガラスまで跳躍し、ガシャンとガラスを割って逃げ始める。
「あ!まだ話は…もう!!」
真白は珍しく語気を荒げ、黄の情力「
窓の縁に触れたとき、真白はあることに気が付く。
「…氷…?」
彼女の言う通り、窓枠には白い冷気を放つ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます