ギャラリーに到着

 「あ!二人共どこに行って…」夜の七時、真白と瞳が例のギャラリーの前に着くと、既に二人以外の面々は集合していた。「すみません、遅くなりました。」韋駄天に声を掛けられた瞳は少し申し訳なさそうに謝罪する。


 「…大丈夫…みたい?瞳…」韋駄天が恐る恐る声を掛けると、瞳は笑って「はい、ご心配、というよりかはご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございません。もう…落ち着きました。」と答えた。


 (…、か…)韋駄天は瞳の言葉に隠れたかすかな嘘に気付いたが、敢えて何も言わないことにした。「…なら良かった!さ、ギャラリーの人に会いに行こ!」明るく振る舞う彼女はそう言って建物のドアを開け、中に入っていった、他の者達もそれに続く。


 「…どうしたんですか血染さん、わたしの顔に何か付いてます?」真白はじっと自分を見る血染の視線に気付き、首をかしげる。すると血染は「…いや、あんたも段々とリーダーらしくなってきたなぁ、と思ってね…見てたよ、瞳を元気付けてあげてたの。」にぃ、と笑いながら真白の額を指で軽く小突いた彼女は、そのまま建物へと向かっていった。「…見てたんなら手伝ってくださいよね。」額を手でさすりながら、真白もふっと笑い、後に続いた。


 “It’s been a while Hitomi, welcome to my gallery!”

(お久しぶりです瞳さん、ようこそ我がギャラリーへ!)


 エントランスで出迎えてくれたのは、栗色で少しウェーブのかかった髪をした、知的な雰囲気の女性だ。


 ”Yeah, about two years have passed since we met last time.”

(ええ、最後に会ったのは二年前ですね。)


 瞳が流暢な英語で簡単な挨拶を済ませる。


 ”I’m really relieved that you undertake the guardian of this building, because I’m very aware of your strongness.”

(あなたがこの建物の護衛を引き受けてくれて本当に良かった、あなたの強さは重々分かっていますから。)


 そう言った後彼女は瞳の後ろに控えていた真白達を見て声を掛ける。


 ”Thank you for coming to help us, everyone. There is a lot of works which are priceless, so I really want you to protect them from the robbers!”

(ギャラリーを助ける為に来てくれてありがとうございます、皆さん。ここには数多くの貴重な作品があります、なんとしてでもあなた方には、それを盗人から守っていただきたい!)


 彼女はギャラリーのオーナーに似つかわしい、とても優雅なジェスチャーで話してくれた。一応ここにいる全員は英語を解するので、オーナーの嘆願に首肯しゅこうで応える。


 ”All right, then we’ll plan tactics, Charlotte, please tell us about “Green Bar” and the layout of this gallery.”

(それでは作戦を練るのでシャーロット、私達に「グリーン・バール」とこのギャラリーの間取りについて教えてください。)


 瞳の言葉を皮切りに、対窃盗団の戦略会議が始まろうとしていた、その時だった…



  –––真白さん…真白さん…聞こえますか…?


 どこからか声がする…これは、あの時と同じ…


 真白が目をつむり、そして開ける…すると目の前には、空と水面の世界がどこまでも広がっていた。「わたしの…心の世界…」そう呟く真白…


 「あぁ来た来た、真白さん。」彼女に話し掛けたのは「…青さん!」真白の「哀しみ」の分情、青だった。「どうしたんですか青さん?」そう尋ねる真白に、青が少し笑って答えた。「これから作戦を立てるのでしょう?でしたらわたくしの情力がきっとお役に立ちます!ただわたくしの情力は少し癖のあるシロモノでしてね、この機会に是非慣れて頂こうかと思いまして…」–––

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