第四話 クロノワール城のお化け

 湖に囲まれる壮大そうだいな城。名はクロノワール。圧巻される自然の豊かさと優美ゆうびさに恵まれた王国。王女は一室にて食事を召し上がる前。使用人達は食堂に集まっていた。ローザは照れくさそうにレオンを見つめた。城にはローザの好きな赤いカーネーションの花が飾られていた。


「私、レオンがとっても大好きよ」

 そう言い、ローザはレオンをギュッと抱き締める。


「ローザ様。私はぬいぐるみではありませんよ」

 レオンはそう言う。

 ローザはレオンをギューッと抱きしめていた。


「……ローザ様。ちゃんとお食事を召し上がってくださいね」

 ヴァイクはそう言う。

 王女、ローザはアンダーバトラーのヴァイクに叱られてへこんでいた。ヴァイクは少し、長めの栗毛くりげ碧眼へきがん均整きんせいの取れた顔立ち。だが、城でも怖いで有名だ。そんなヴァイクに使用人からあだ名をつけられた。そのあだ名は城の鬼瓦おにがわらと呼ばれている。ヴァイクはレオンより背が低く、小柄こがらだ。


「ヴァイク、ごめんなさい。カイルのサンドイッチは美味しいわ」

 ローザはへこんでいた。

 家令のジョセフはエドの話に大笑いしていた。


「ギャハハ! エド、貧血ひんけつにはレバーが効くぞ。今度レバー食べたらどうだ?」


「僕はなんでこんなに顔が青白いんでしょう? 昨日、夜勤で蠟燭ろうそくを持って廊下を回っていたらアリス様にゴーストと間違われてしまいました」


 エドはそう言う。


「こんなんじゃアリスちゃんに振り向いてもらえないぞ? お? アリスちゃんがテーブルを拭いてるぞ。男に産まれたなら正々堂々、思いを伝えてきな? エド、頑張れよ!」


 ジョセフはエドに助言をした。


「アリスさん、テーブルの拭き掃除は僕がします。だから僕とその、」

 思わず、どもる。


「え? エド? からだが細くて折れちゃいそう。まぁ、そんなにお顔を赤らめて。誰かに恋でもちゃったの?」


 アリスはそう言った。


「好きなんです」


 エドはそう言う。


「誰のことを?」


 アリスはそう続ける。


「あら?」


「レオンさんが好きなんです」


 エドの口がままやいた。しまった。


「まぁ、レオンさんに恋しちゃったの? じゃあ、エドは男色だんしょく家?」

 アリスはそう言う。


「はい。僕は暖色だんしょくです。色って暖色が良いですよね」


「あら、レオンさんに? その恋実ると良いわね。私も、応援しましょうか?」


 アリスはそう言う。


「ち、違います!」


 エドは急いで、アリスに訂正した虚しくも勘違いされたままだ。


「エドは照れ屋さんなのね。これから私は休憩よ。フフ。恋、頑張ってね。エド?」


 アリスはそう言い、休憩に行く。

 エドはモヤモヤした気持ちを抱えた。

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