第27話

俺はそれを見ていることができず、思わず視線をそらせていた。



残酷な中身に綾と小恋から悲鳴が聞こえて来るかもしれない。



そう思って身構えていたのに……なにも、聞こえて来なかった。



代わりに子鬼たちからの拍手が聞こえてきて、俺はソロリと顔を上げた。



キョトンとした表情の綾と小恋。



「どうだぁ? 気に入ったか?」



鬼が得意げな表情を浮かべて2人に聞いている。



2人は目を見交わせ鬼へ向かって小さく頷いて見せている。



2人が死ぬ気配はなく、俺はひとまずホッと息を吐き出した。



「綾、中身は?」



そう聞くと、綾は箱の中に片手を入れた。



「デジカメ……だよね?」



取り出されたのは最新型のデジカメだった。



「あたしはゲームソフトだよ! これ欲しかったんだぁ!」



小恋がゲームソフト片手に喜んでいる。



「これって、どういうことかな……?」



てっきり死んでしまうと思っていた俺たちは、普通のプレゼントに困惑して鬼を見た。



「よかったなぁ! まぁ、時にはこんなサプライズも必要だろ。お前らなかなか頑張ってるしなぁ」



鬼がそう言い、ニカッと笑った。



鬼からのサプライズ……。



その言葉に拍子抜けしてしまう。



ジャンケンもあみだくじも、生死を決めるものではなかったのだ。



「よかったら、デジカメで撮影したげよーかー?」



ギャル鬼が綾へ向けてそう言って来た。



綾はとまどい、俺に視線を向ける。



「このデジカメ、普通のデジカメなんだろうな? シャッターを押した瞬間爆発するとか、拳銃の弾が発射されるとか、そんなんじゃないんだろうな?」



念には念を入れておかなきゃいけない。



しかしギャル鬼は呆れたような、面倒くさそうな顔を浮かべて俺を見た。



「こいつマジでいもってんだけどぉ!」



「はぁ? 超チキンじゃん。ダッサー」



「ただの撮影だろうが、さっさと並べよぉ!」



ギャル鬼数人に罵倒されながら促されて俺は渋々綾の隣に並んだ。



他のメンバーたちもおずおずと集まって来る。



「はい、赤鬼ぃ!」



それを合図にシャッターが下りる。



「なんだよお前ら全然笑顔じゃねぇなぁ」



鬼が不機嫌そうにそう言った。



そもそも『赤鬼ぃ』という合図を知らないし、こんな状況で笑えるはずもない。



それでもいい笑顔を浮かべなければ鬼は不機嫌になってしまう。



無条件に殺されるのは嫌なので、無理にでも笑顔を作ってもう1度撮影した。



2度とも、俺が懸念していたようなことは起こらなかった。



「さて、じゃあ、勝ち組の2人を覗いた4人でジャンケン! 同じようにあみだくじを作れ!」



鬼の指令が飛び、俺たちは顔を見合わせたのだった。

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