キャンピングカー購入編【本編】

義理の妹

 俺の唯一ゆいいつの資格が『普通自動車免許』だった。三日前に最終試験を合格し、見事発行された国家資格。この俺の疲れた顔写真付きの魔法カードがあれば、車の運転が許される。ここまで道のり、本当に苦労した。


かいお兄ちゃん、免許取ったのー!?」


 リビングで横になって免許をながめていると、女子高生で義理の妹『歩花あゆか』がゴロゴロと寝転ねころんで来た。今年で高校二年となり、今は夏休み中でひまらしい。


 つやのある綺麗きれいなロングヘアをサラサラと揺らし、その睫毛まつげの長い、クリクリとした大きな瞳を俺に向ける。


「実はだまっていたんだが、三日前にな」

「え~、どうしてだまってたの!」

「レンタカーを借りてサプライズしようと思ったんだけどな。残念ながら、俺は財政難。お金がなくてね」


「そっかー。でも、車に乗れるんだよね、お兄ちゃん」

「まあな」

「すっごぉーい! カッコいいなあ」


 星のようにキラキラした瞳で俺をみつめる歩花。そう尊敬の眼差しを向けられると、こそばゆいというか。



「でもなー。車を買うお金はないんだよねえ」

「でも、お兄ちゃんバイトしてるよね?」

「バイトの金は、免許費用に全て消えたよ」


 残念ながら、物流倉庫のバイトで汗水垂らして稼いだお金はもうない。親からは自分で何とかしろと言われて今までそうしてきた。車も自分で購入するんだぞ――と、獅子ししの子落としかのような死刑宣告を食らった。


 世の中は厳しい!

 自分の思い通りにはいかないものだ。


 だからこそ、この免許は俺にとってはお宝もお宝。大秘宝。この世の全てをそこに置いてきた気分だぜ。


「そうなんだー…。せっかく取れたのにね。レンタカーとか、今だとカーシェアリングとかあるよね。あれで借りよ~、で、どこか行かない!?」


 レンタカーもお金が掛かる。ガソリン満タンで返却しなきゃならないから、少し借りるだけでも一万円とか取られる。けれど、時代は進歩している。“カーシェアリング”という救世主メシアが現れた。


「なるほどなぁ、カーシェアリングか。歩花、ナイス知識だ」

「えへへ~っ。お兄ちゃんの役に立てたかな」


 スマホを取り出し、カーシェアリングについて調べる。なんと会員になれば数時間、二千~三千円程度でレンタルできると判明。しかも、ガソリンも満タンにせず返却して良いらしい。何その神対応。


 更に幸運なタイミングだった。今はキャンペーン期間中で『カード発行手数料無料』と『月額基本料金三か月無料』という特大イベントが開催されていた。



 これだ!!



「アプリで免許証を撮影して、クレジットカードで登録して審査が通れば数時間後にはアプリ登録されて乗れるらしい。さっそく登録すっか!」

「がんばって、お兄ちゃん。ファイトだよっ」


 歩花からアツい声援をもらい、俺はやる気が猛烈にでた。新品ピカピカの免許をカメラで撮影。クレジットカードは、限度額十万までの『学生向けカード』が幸いにも手元にあるので、それを使った。


 登録完了。

 これで数時間待てばいいらしい。

 無事に手続きが終われば、後は近場のステーションへ歩いて向かえばいいようだ。この辺りだと駅前にあるようだな。歩いて十五分の距離だ。


「登録は済ませた。あとは待つだけだ」

「おぉ! やったね」


 ハイタッチを交わし、歩花は上機嫌で俺の方へ抱きついてきた。兄妹なので、これくらいは普通だけど義理なので、多少なりとも緊張感があった。


 歩花とはまだ三年程度の付き合い。いや、正確に言えば子供の頃からの付き合いになるけど、それは親戚だから一度会った事があるだけ。

 最近になり、歩花の両親が離婚とか色々あったらしい。何かあって一家離散で、俺の所へ来た。最初の歩花は捨てられた猫のようにおびえていたし、沈んでいた。


 でも、そんな顔はして欲しくないと、俺は必死にギャグを連発。次第に、歩花は笑顔を取り戻し――今や、可愛い妹。


 俺としても歩花と出会えて良かった。高校生活では超絶ぼっちをの期間を三年過ごした。俺には、友達もいなければ彼女もいなかったのだ。


 大学に入ってから、人生は急変した。

 歩花と出会え、免許も取れた。


 そうだ、歩花の笑顔をやさない為にも俺は頑張り続ける。



***おねがい***

 続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。

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