今、目の前にある危機【伝える真実。選ぶ未来】
己の無知と欲が招いた悲惨な現実と言う結果に対し、私たちは残酷な宣言を相談者様にしなければならなかった。
しかも霊能力者として、それを生業にしているプロの方に対してである。
相談者様がこれまで信じてきた思考を、まさにひっくり返す行為という重圧は、私にものすごい負荷を感じさせるには充分だった。
それでもやらなければならない、強烈な使命感に突き動かされた。
この時期は明らかに、好戦的思考の誰かが私の中心にいた気がする。
そう考えるとニヤリと不敵に笑う姿の天照様のイメージが浮かぶ。
『全ては心理戦、取るか取られるかだ。闇に染まり傾倒していたとしても、オセロの如く、囚われた思考を覆せ。要は魔の勢力を欠くだけだ』と平気で仰る。
『手段を選ばない魔には、真実を突きつければいい。そしてその者に選ばせれば簡単なこと。実にシンプルなことに、何故悩む』とまで煽る。
それを行わなう者の心労など微塵も考えない、それが私の知っている光の存在でもある。
身の丈に合わない報酬は、結局破滅しか引き寄せないのである。
その相談者様のホームページには、私たちが住む地方の1ヶ月分の収入と同じ金額が「最低のお祓い料金」と記載されていた。
知り合いの霊能者が持ちかけたビジネスとはいえ、それを取り仕切ってホームページを管理していた以上、相談者様にもまた責任が発生する。
そしてこの話を世に出す真の目的こそ、「果たして何をもって真実を見極めるのか」との、私なりの提言である。
結局はその霊能力にすがりたいと、お金を払うクライアントがいるからこそ、霊感商法の類は成り立つ。
つまり不幸な他人があるからこそ成立するビジネスなのだ。
そして不幸な人がいなくなれば、彼らの生活は成り立たなくなる。
彼らは生活の為に、「クライアント=不幸な人」が増える事を願うかも知れない。
能力のある人間が他人の不幸を願えば、果たしてどうなるか。
「人助け」に似て実は「闇を助長する行為」にはならないだろうか?
能力とは、神様から預かりし力。
自分の能力として使いこなして、初めて成り立つ。
能力の技術責任が対価となるなら、不当に得た代償が発生する。
己の能力を過信し、闇を助長した罪となり、借りた代償のツケが身の破滅となる。
とんでもなく恐ろしいシステムが世の中に存在するのを、まずは知らなくてはならない。
果たしてどれほどの人が、それを自覚しているだろうか?
ちなみに私たちは、あくまで本業を持つ傍らで活動する、言わば「ボランティア」の様なものだ。
私は看護師として働いているし、是宮も桜井も久我も、みんな普段は普通の会社員である。
だから私たちはこの活動で不当な利益を得る必要がないし、得たいとも思わない。
不当な利益を得る事が、実は魔に魂を売るに等しいと知っているからだ。
だからこそ、魔に魂を売って不当な利益を得、不幸な人々を生み続ける霊感商法は、この世から撲滅されなければならないと考える。
巡りめぐるガツンと案件は、直接本人に還るならまだマシで、身近な人の不幸として引き起こされることもある。
しかもなにが因果でそうなるのかは本人は分からず、健康被害として発生するのである。
実は半年前、何が起きてどうなってゆくのか、シナリオとして天照様から聞かされていた。
その未来は一瞬、その人を試し考える時間を与えるかの様に弱まった。
しかし本人が改心しないために、再度追撃するかの様に追い詰める。
こうなってしまったが最期、下される罰は情け容赦がない。
自然かつ巧妙に仕掛けられるガツンと案件。
その性質ゆえに気付きにくく、そして確実に時間差で発生する。
罪が深ければ深いほど、気づかないうちに進行し、終焉を迎える。
逆にこれ以上罪を重ねない様にと、その寿命を強制的に奪われる結末もある。
そして死して後に、気づきと使命が与えられる場合もある。
そんな死して後に気づきと使命を与えられたある方の状況を、実は現在進行形として私は見つめ続けているのだが、これは時が来たら語ろうと思う。
この罰の事実は余程、教えてあげた方が親切なのだろうとは思う。
しかし実際は、受け入れる事の出来ない人々が圧倒的多数なのである。
だからこそあえて話さない様に、今は自分を守っているのかもしれない。
必要なタイミングで、心から求められた時初めて語るのである。
それが巫としての役目とし、自覚した。
今回の相談者様はホームページを削除し、クライアント様が幸せになるための施術しか今後は行わないと約束された。
そして私と同席していた桜井は、相談者様に最後にこう言った。
「正直に真っ当に生き、嘘を吐かず、人を敬う事です。法華経に通じるその振る舞いが、世のため人のためとなり、ひいては神のため仏のためになります。貴方なら出来るはずです」と。
その数日後、約束通りホームページは閉鎖されていた。
まずはそこを窓口として集まる、負の感情の流れを断ったのである。
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