今、目の前にある危機【魔障】
8月に入ってから、おかしな怪我ばかり要子の身に起きた。
温泉の風呂場のタイルで滑ったはずなのに、何かが足に刺さったのである。
しかし異物は見えない。
以前も気がついたら足の裏が血だらけになり、病院でレントゲンを取ると異物があると言われるものの、肉眼では確認できず何度となく通院したこともあった。
その異物はいつも参拝する神社さんの御手水をかけた途端、痛みはなくなり、異物騒ぎも落ち着いた。
霊障が物質まで変化させる現象も起こっていたので、今回も同じ現象かなと、観察していた。
しかし次の日には、今度は自転車で転び怪我をし、その翌々日には気がついたら足の甲がえぐられたような怪我を負い、気づいたら血だらけとなる事件が発生した。
流石におかしいと思いながら病院を受診すると、全治1ヶ月の診断が下った。
『足を引っ張る』という言葉があるように、要子に執着していながらも怨みつらみから会わなくなった親族の問題。
そして惡蝋略の件で相談を受けた時、我が家に能力者の方の生き霊が来ていたので、両方の影響だろうなと判断していた。
8/14朝からおかしな眠気に襲われていた。
これも霊障魔障の類だと感じ、肩を払い柏手を打った。
その瞬間、腕につけていた時計の文字盤が粉々に砕け散った。
流石にこれには堪忍袋の緒がキレた。
時計は何本壊れたり、ガラスに穴が空いたら気が済むのだと、かなり本気で苛立った。
それまでの生霊事件も含めて、すべて本人に還るものとして容認してきた。
しかし、どれだけ我慢すればいい?
どれだけ血が滲むような悔しさを積み重ねればいい?
寄せては返る波のように、結局自分のところへ還っていくことを知らないからできる暴挙であり、人を恨むとは実に残念な思考。
それでも私は自分の怒りを鎮めなければない。
悪業は全て自分に還るから、だから自分の心まで悪に染める必要はないと、自分を律してきた。
ただ希(こいねが)わくは、正しいものが正しいものとして機能する世の中になることを。
私は巫、だからこそ常にフラットを目指す。
怒りに支配されそうになる自分を抑え、粉々になったガラスを瀬織津姫に託した。
闇は救いも安定もない。ただ苦しみしかない。
本当の闇も光も知っているからこそ、己を正すしかなかった。
疑心暗鬼になり、他人を信じることができず、もちろん自分のことも信じることができなかったあの日。
それでも前を向け、立ち上がれ、負けるなと声がした。
苦しみの先の光を知っているからこそ、乗り越えられた。
それは神様からの贈り物。
巫としての使命と引き換えに、私は生きる事を喜びに変えられる人生を手に入れた。
自分を制するとは、良い意味での自己のマインドコントロール。
それが出来なくなると、崩れてしまう。
あの時の闇に戻りたいのかと問われる。
そうなのだ。
少し前の自分も、その苦しみの中にいた。
闇に救いなどないのだ。
自分が強烈な光になるしかないと、強く思う。
オカルトやファンタジー小説として、物書きできることならば、どれほど楽だろうかと思ってしまう時がある。
しかし、この葛藤こそ全て真実。
恐怖を怒りのパワーに変えて、貫くは己の正義。
真っ当な世界が、闇に負けるはずがない。
本当にそれが正しいことならばと、自分に言い聞かせモチベーションを保ったとしても、更なる困難はやってくる。
考え方を変え、前へ進もうとしてもやってくる試練。
襲われる感情や怒り。
コントロール出来ず、要子と衝突した。
伝わらない現実や、苛立ちに本当は絶望していた。
感情にのみこまれたのは、伝える努力をしてこなかった棚上げ問題だった。
要子にとっては、ガツンと案件だろう。
それは要子が自分でコントロール出来ず、他者に当たることが起因していた。
昨晩も生きているものではない声がうるさくて寝れないと、キレて当たってきていた。
それでも仕事で出かける私は、朝から小言は言いたくない。
まして叱るタイミングを間違えば、酩酊状態に等しい相手に喧嘩を売る様な結末を何度も経験した。
その様な状態の要子は、翌日には全く覚えていないのである。
そんな経緯もあり、自分のせいでひき起こす現実に、気持ちのコントロールができない結果、他者に当たったとしても、それを自覚させなければ変われない。
しかし、そうでもしなければ守ることも支えることもできない現状があった。
だからこその選択でも、限界が発生する。
流れを変える時、とてつもないエネルギーを必要とする。
衝突しなければ真の意味を理解できないのだ。
何故なら学べないから。
学ぶ必要性と、変わるチャンスを奪ったのは私。
だからこそのガツンと案件。
しかしそこに霊障が絡む。
復讐や失脚を願う要子に執着する親族と、そして能力者が複雑に絡んでいた。
生き霊が出入りする鏡に、封印を施したとしても完全ではなく、負の感情を得て物象を変える。
外にむけていたはずの姿見の鏡は、いつしか向きを変えていた。
その鏡に映る先で、私と要子は言い争いになっていた。
その後、ぐるぐるポンがいると感じた箇所に塩を撒き、姿見の鏡の向きを変えたことで霊障は治った。
その翌日、相談者経由で私の元に式神を向かわせていたこと。
その能力者は騒がしい霊のために、夜も眠れないと言う。
それはまさに要子に出ていた霊障と同じである事に気がつた。
そして私はいわく付きの鏡を処分することにした。
処分場に行くまでの間、運転に集中ができず、危ない目に遭いながらやっと処分できた。
しかしその瞬間から、車の中にハエが入っていることに気がついた。
窓を開けても外に出ても、戻ってくる。
あり得ないだろうと思うものの、この手の霊障も経験していた。
今でもゾッとする体験は、いつか話すかと思う。
自宅につき、殺虫剤を撒こうとした時、気づいた。
スライドドア内側のゴム部分に、圧死している死骸があったのだ。
途中で柏手を打った際、車内の空気が変わった事を要子と二人で確認しいていたので、もしかするとその時に圧死したのかも知れない。
これらは魔が引き起こす魔障です。
この様なとんでもない出来事は、おそらく信じ難いと思います。
しかし、これが私の日常なのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます