学園編
第32話 冒険者ギルドにて
馬車に揺られること3日、遂に王都に着いた。貴族の務めとして、移動の道中でお金を落とすという風習があるらしく、道中の宿は最もいい扱いを受けたりした。俺的には節約をしたかったがそういう訳にもいかないようだ。なかなか頭の痛い話だ。
だが幸いにも俺たちには冒険者時代に稼いだお金があるからあまりお財布的には痛くない。これまで稼いできた甲斐があった。でも、子爵家の財力からすればなかなかの額であることは言うまでもない。父上、貴方は冒険者としての方が稼げたと思いますよ……
今は王都の別邸に着いて、俺とミゲルは冒険者ギルドへ、アレクとマリアは買い出しに出かけている。別邸には最低限の家具しか置かれておらず、清掃などもされていない。マリアは買い出しに掃除と忙しいな。
俺たちが冒険者ギルドに行くのは、これからアレクとミゲルは冒険者ギルドに来ることになるだろうし、どうせなら早いこと諸々の手続きを終えてしまおうということからだった。
◆
王都の冒険者はエルドルド領の冒険者ギルドに比べて3倍ほどの大きさだ。3階建てで解体所、酒場も併設されており、なかなかの迫力だ。王都では大きな仕事も多く、高ランク冒険者も多くいる。現在Sランクとして活動している者も王都には存在する。Sランクの冒険者は、世界で5人しかいないから国にとっても大変貴重な存在だ。
Sランク冒険者の多くは各国を飛び回り依頼をこなしている。戦争時にはSランク冒険者が国に協力するかによって大きく戦況が変化すると言っても過言ではない。それほどSランク冒険者とは強大な存在なのだ。Aランク冒険者は50人程度いて、場合によればSランクより需要は高い。ある程度の強さが必要な護衛依頼などはAランクに回ってくることが多い。だが、俺たちの場合はそういう依頼は受けず、討伐依頼のみ受けてきた。貴族が貴族を守るのは少し違和感があるしな。ただ、Aランクになってからというもの、報酬の桁が変わってくる。だから、今回の旅費もいたくなかったというわけだ。
とりあえず手続きを済ませてしまおう。
冒険者ギルドに入った瞬間、中にいる者の視線が一気に集まる。
警戒する視線、感心したような視線、値踏みしたような視線、色々だ。
警戒する視線と感心したような視線は恐らく高ランクの冒険者だな。
値踏みするような視線を向けたものは、低ランク冒険者か力量を把握できないレベルの冒険者だろう。そのレベルの者、気にするほどではないだろう。何か行動を起こされれば、対処するだけだ。
視線で大体の力量を把握しながら進んでいると、先程から値踏みしたような目線を向けてきている冒険者が絡んできた。一見気さくな表情を浮かべる好青年のように見えるが、視線で分かる。こいつはただの下種だと。
「おいおい、ここは坊ちゃんが来るような場所じゃないぞ~?」
優しくいっているように見せて、こいつはこちら側を侮っている。俺もある程度の年齢になっているし、弱く見られないようにしているのだがな。何人かは『またかあいつ』って表情を浮かべている所を見ると、こいつは常習犯らしい。他人にちょっかいを出して喜ぶ部類か。大した力も持っていないくせにやるべきことではないな。
「なんだ? 何か文句でもあるのか?」
「だから、ここはお前のようなガキが来るところじゃないって言ってるんだ!」
少し言い返しただけでこのざまだ。俺たちにとってはただの害悪でしかない。
「ガキ? 俺はそれなりの力は身につけているはずだが? 少なくともお前よりかはな。そんなことも分からないのか」
あの敗北以降、僕は相手の力量を把握することを意識しながら、冒険者として行動してきた。あのような失態はもうしたくはなかったからだ。自分の力量を知り、相手の力量も図ることができればあのような失態をすることはない。だが、目の前の男はどうだろう。俺が子供だからという一面だけを見て、侮蔑に値するものだと判断した。今までは上手くいっていたのだろう。
「なっ!!!!」
「お前に取りあう時間すらも勿体ない。ミゲル行くぞ!」
「はい!」
ミゲルも俺と同じ気持ちみたいで、しっかりと値踏みしたような視線をその男に対して向けていた。ミゲルはこういう輩は嫌いだからな。
どこにでもこんな奴はいるから無視だ無視。
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