第28話 僕の持ってるスキルは...
「カイル。スキルというのは?」
「大抵の人は何かスキルを保持してるんだ。例えば、父上だと【一騎当千】っていうスキルを持っていて武術全般の才能が上昇する。とかね」
「じゃあ、俺の場合は、その【一騎当千】っていうスキルのおかげで、元々武器に才能があったということか?」
「そういうことになるね。そして僕は、【鑑定】というスキルを用いることで、人の名前、性別、肩書や才能、スキルを見ることができるんだ」
とりあえず、今は【鑑定】だけを伝えることにする。今回の事件の真相を語るにはそれだけで十分だからね。
「そのスキルで俺のスキルや才能を見たのか」
「では、カイル様! 俺たちのスキルとか才能まで見れてるってことですか?」
「そうだよ。正直、アレクの剣の才能は父上を超えている。だからアレクは努力をすれば父上よりも強くなるよ」
「ほ! 本当ですか!?」
「ただ、努力すればの話だよ。あくまで才能という指標があるだけ。例えば、今回僕はゴロツキに負けた。でも、ゴロツキの才能は僕より高くはなかったんだ」
「見えない要素があるということだな?」
「そうです」
「今回、僕は初めての戦闘だった。でも、向こうは僕なんかよりもっと実践を積んでいるはずだ。その差が今回の様な結果を生んでしまったんだと思う」
「では、カイル様が一人で対処できると言ったのは……」
「そうだよ。ミゲル。ゴロツキの才能が大したことがないと気づいて、簡単に勝てると思ってしまったんだよ」
「そうだったんですか……」
「ではなんで今このことを伝えようと思ったのですか? 隠し通していけたでしょう?」
「それが、今回の事件の真相につながるんだよ。僕は敵を【鑑定】した。そして、その敵の肩書には、アイルヘイロン構成員と書いてあったんだ」
「なんだと!? 本当にそう書いてあったのか!?」
父上が驚いたような表情を浮かべた。アイルヘイロンというのは何か父上の心当たりのある組織だということだ。
「よくやった。カイル。じゃあお前が負けるのも仕方がない」
「アイルヘイロンについて何か知ってるの? 父上は」
「あぁ。この組織はクラリスも知っている。なぁ?」
「そうよ。あの組織が絡んでいたのだとすると厄介だわ。あの組織のことは私たちがまだ冒険者ギルドに在籍していた時に知ったのよ。その名も闇ギルド:アイルヘイロン」
「闇ギルド?」
「闇ギルドっていうのは、殺しや盗み、誘拐何でも引き受ける何でも屋の事よ。その中でも最も厄介なのがアイルヘイロンなの。私たちが関わったのは、ある貴族の護衛の時よ。貴族が狙われていることを恐れてギルドに依頼を出した。そこで、Bランクだった私とアレスが護衛として赴いたの。夜に襲撃があったけど、私たちで何とか捕まえて背後の組織が何なのかを吐き出させようとしたの。でも、『アイルヘイロンに栄光あれ』という言葉を残して自害した。結局その貴族が狙われることはなくなったけど、真相は闇に葬られたままよ。」
「そういうことだ。カイル。何か去った男が言っていなかったか?」
「マリアには悪いけど、攫った子供を金持ちに売っているとだけ。金に成るのだと」
「悪いお兄ちゃんも同じような事を言っていました!」
「そうか。アイルヘイロンは基本的に請け負った仕事しかしないはずだ。何か大きな組織が動いているのかもしれない。後はこちらの方でやっておく。伝えてくれてありがとうな。カイル!」
「ありがとうね! カイル」
「いいよ。僕のこと嫌いになったりしないよね?」
「しないさ。俺たちの子なんだからな」
「むしろ誇らしいわよ? カイルの能力で事件の真相に近づけたんだからね」
「そう言ってくれてうれしいよ。アレクやミゲル、マリアは?」
「「「嫌いになんてなりません!!!」」
「むしろ好きになったっすよ。前よりも」
「そうです。後でしっかりと私の才能について聞かなければなりませんねぇ」
「私はどんなことがあっても一生ついていきます!」
「みんなありがとう! 僕にとって最高の仲間だよ!」
本当に泣きそうだ。本当は葛藤があるはずなのに、僕についてきてくれる。僕は本当に恵まれた人間だ。いい人に囲まれている。前世では絶対に味わえなかったことなんだから、今を大切に。
せめて、僕の周りの人だけでも守れる力を身につけよう。
――この日を境に、エルドルド家は更なる結束力を手にするのだった。そして、アレク、ミゲル、カイルはメキメキと頭角を現してくることとなる。
結局、捕まったゴロツキは、奥歯に仕込んでいた毒薬で命を絶った。しかし、その行為によって更にアイルヘイロンである可能性が高まった。【鑑定】の前では無駄な死であった。
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