機械仕掛けのコウノトリ 17

 彼の口から平然と「デザインベイビー」という名前が出たことに私は驚いた。


私が彼を選んだ決め手は彼が子供を見る時の細く目尻を下げた包み込む優しい笑顔だったから。


しかし、最近になって政府でも認可し、一般家庭でも選択できるようになったそれは、確かに今というタイミングで妊娠した私にはちょうどぴったりだったのかもしれない。


しかし、私がこの資料を最初に見た時に感じたのは嫌悪感だった。それは確かな言葉を持って心臓から私の脳に訴えかけていた。


「これは違う」「人として許されることじゃない」と。


しかし、同時に思うのは私という普通の人間が普通を自覚してから歩んだ道のりの無味な感触であった。


私はまだ新しい命が宿ったばかりの腹をさすった。


この子が産まれて育つ世界はもっとシビアなものになる。元から才能の種を授けられた子供たちが同級生の中に溢れかえり、私とは比較にならないほどの差をつけられながら、先の長い人生を見据えなければならない。


愛し合う奇跡によって生まれる命という私たちの中の倫理は、金で選べた可能性を親のエゴによって捨てられたという傲慢さに簡単に塗り変わる。


それはこの子たちへの本当の愛なのか?


そう思うと私の中に突発的に沸いた嫌悪感は、支持を失った政治家のように萎み主張が聞こえなくなっていく。


彼が「わからないまま決めることが一番悪いことだと思うから、少し話を聞いてみない?」とまた優しい笑みで私を見た。


私は「そうね。生まれて生きていかないいけないのはこの子だから」とまたお腹をさすった。


私の手のひらが火照り、熱が腹の底に届いていくようだった。

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