第44話 出会いとはどこかに繋がっているかも知れない

 道を少し進むと、カートース街から数分くらいで砦が見える。


「ホロ様。あの砦ですわ」


 エイミーさんと妹に挟まれる形で窓から外を眺める。


「上に誰かいますね」


「あら? ホロ様。ここから見えるのですか?」


「え? 見えますね。顔色までは見えませんけど」


「凄いですわね」


 ん?


「お兄ちゃん……そんなに目が良かったんだね」


 確かに言われてみれば、前世とは比べられないくらい良く見えるな?


 異世界でもあるし、ホロくんの記憶があるからそれが当たり前だと思ってた。


「その気になれば、ここからあの砦に召喚獣を召喚して制圧も出来そうかな?」


「ホロ様。相手との交渉は全部お任せしますわ」


「分かりました。なんか弓とか持ってて物騒なので、このまま召喚獣で制圧しちゃお~」


「お兄ちゃん……怪我とかさせないようにね?」


「もちろんだよ!」


 視界の先に召喚獣のベアくんを召喚する。


 突如登場したベアくんに砦からは悲鳴があがる。聞こえないけど。


 そのまま砦を守っていた男達を軽く相撲をさせて、制圧させるように指示を送って、僕達はゆっくりと砦に向かった。




 ◇




 砦に入ると、ベアくんが一人で制圧してくれて、男達は武装を強制的に武装を破壊されて、広間に集められていた。


「お前達はなんだ!」


 入った瞬間に怒声が飛ぶ。


 ん……これでは話し合いも出来ないな。


「クラブくん~」


 クラブくんを呼び、男達に水鉄砲を撃たせる。


 男達は怒声あげる事も出来ず、クラブの痛くない水鉄砲に男達が床を這う。


「はいはい。少し静かにしてくださいね~これから話し合いをしますからね~」


 そういうと集まった人々が不安そうに僕を見つめる。


 その時。


「あ! あの時の優しいお兄ちゃん!」


 奥から僕を指さした女の子がその場で立ち上がる。


「君はカートース街まで馬車に乗せた子だね?」


 彼女の周りには、兄弟や母親も見えていた。


「皆さん! こちらのお方はとても優しい方です! まずは話し合いをしましょう!」


 母親も僕に気付き、そう話てくれた。


 周りからも少し顔色が明るくなった気がする。


「代表者さんは前に出て来てください~」


 そう話すと、クラブの水鉄砲で転がっていた男の一人が何とか立ち上がり前に歩いてくる。


「はぁはぁ……お、俺が代表だ…………」


 転びまくって疲れてそうだな。


 ベアくんと相撲も沢山やっただろうしな。


「少し落ち着いたら話し合いにしましょう。僕達は貴方達を追い出す為に来たのではないのですから」


「わ、分かつた……」


 それから妹が人々に食べ物や飲み物をご馳走する。


 ロクに食べれてもいなかったようで、腕が細くなっている子供を見てみぬふりは出来なかったから。


 何だか妹が人々から「聖女様!」と呼ばれているけど、大丈夫だろうか……、いや、大丈夫だろう。


「うちの妹を聖女様を崇めなさい!」


 ベシッ!


 最近投擲ハリセンをマスターした妹のハリセンが遠距離から飛んできた。




 ◇




「初めまして。俺はこの集団の代表をしているクリスという」


「僕はホロです」


 何となく男と握手を交わす。


 料理を振る舞ったので随分も距離間が近くなった気がする。


「それで皆さんはどうしてここに留まっているのですか?」


「俺達は元々西のアングラ王国から逃げて来た移民なんだ。向こうでは貴族の圧政が酷くてな……」


「何となく噂は聞いています」


「何とか生き残った俺達は居場所を求めて彷徨っていたが、あの街で変な連中に声を掛けられてな。ここに良い住処があるという事で、ここに集まっているのだよ」


「変な連中?」


「ああ。暗い色の赤いローブを着た連中だ」


 間違いなく【デモンシーズン】だな。


「彼らはこちらの王国で暗躍している暗殺集団なんです」


「なっ!?」


「恐らく貴方達を使って、いけないモノを運ばせるつもりだったんでしょうね。たまたまですが、昨日全滅しているので、彼らが来る事はないでしょう」


「そ、そういう事だったのか…………少しだけ届いていた食料が届かないと思ったら……」


 やっぱり食料で釣られていたか。


「きっと皆さんも彼らが怪しいのは知っていたと思います。きっと大変な思いをしながらここまでたどり着いたからこそ、最初に手を差し伸べてくれた彼らを信じたのでしょう。ですけど、本当は彼らではなく、領主様を頼るべきでした。カートース街のストーク子爵様は信頼に値する人物です。多くの孤児達もお城で簡単な仕事をしながら生活が出来てますから、皆さんにも生活支援をしてくれるはずです。僕から言えるのはここまでです。もし、この砦から出ないというのなら、強制的に出て貰うしかないので、ぜひ子爵様の差し伸べる手を手に取ってみてください」


「…………分かった。ホロくんがそこまで言うのなら、きっと信じられるだろう。まだ俺達の中には貴族を信じられる人は少ないが、生き残る為に一歩踏み出そうと思う」


「その方がいいです。もし子爵様が変な事をしたら、僕がやっつけますから。心配しないでください」


「がーははっ! ホロくんなら本当にやりそうで怖いなー」


「もちろんです! ここに来るまで男爵を二人ほど成敗して来ましたから」


「えっ?」


「なので、もし変な噂が流れたらすぐに駆け付けますから心配しないでくださいね」


「あ、あはは…………う、うん」


 あれ?


 クリスさん?


 なんでそんなに引き攣った笑顔なの?

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