596.来週の予定などを決めていく

 よく考えたら、俺が一泊どっか出かけて、それでまたすぐ泊まりだもんな。

 メイもそうみたいなんだが、ユマは特に俺がいないのがストレスみたいだから、できるだけ側にいるようにしたい。

 でっかく育ってもまだ1年とちょっとだもんなぁ。なんかもう何年も経っているような気分でいたよ。

 ごめんな、ユマ。

 そんなことを思いながら寝た。



「……重い」


 翌朝はいつも通りタマが足の上にドーンと乗った。胸に乗らないだけましのような気もするが鉤爪とか微妙に刺さって痛いんである。

 タマは俺が目を覚ましたことを確認すると、いつも通りバッとどいてドドドドドと逃げていった。


「だからー、閉めて行けっつーのーっ!」


 襖開けたまま行くんじゃないよ、全く。夏真っ盛りでも扇風機を付けておけば眠れるんだから、山の上ってホント涼しいよな。まぁ寝苦しかったりする夜もあるんだが。

 すでに太陽は元気いっぱいだ。夏は日が長すぎる。

 今朝はタマとユマが卵を産んでくれた。土間に転がっている卵を回収し、「今日もありがとな」と礼を言う。ユマがすりっとすり寄ってくれた。はぁ、朝からとってもかわいい。ユマは癒しだ。

 俺がにまにましていたら、トトトッとメイが駆けてきてドーンと俺にぶつかった。


「わわっ、大丈夫か?」


 ちょっと驚いたけど、俺にぶつかってメイがぽてっと倒れた方が大事おおごとだと思った。メイは一瞬目を見開くと、ジタバタして起き上がり、何事もなかったかのようにタマの側へ歩いていった。


「なんなんだいったい……」


 あれはメイなりのアピールなんだろうか。首を傾げながら朝食の支度をした。

 今夜は泊まりである。

 ポチとタマには早めに帰ってきてくれと伝えて送り出した。昼を過ぎるのはかまわないが、夕方では遅いのだ。今日もユマとメイは表で過ごすらしい。俺はその間に洗濯をしたり泊まりの準備をしたりと動き回る。


「あ」


 ひと段落ついたところで山倉さんに連絡をしていなかったことを思い出した。

 スマホを確認する。桂木さんと相川さんからLINEが入っていた。みんなまめだよなぁ。


「今日は楽しみです」

「桂木さんたちもいらっしゃるんですよね? 串焼いて待ってます」


 それに短く返事をしてから山倉さんちに電話をした。


「もしもし、佐野です」

「もしもし、あら佐野さん、元気? 今年の夏もいろいろするなんて話を聞いたわよ。今替わるわね」


 山倉の奥さんが出た。そのまま世間話も覚悟したが、すぐに替わってもらえた。内心ほっとする。


「やあ、佐野君。今日はどうかしたのかな?」


 すぐ近くにいたみたいだ。時候の挨拶を交えて、すぐに本題に入った。


「こちらがお聞きするのもなんですが、今年は墓参りにいらっしゃいますか?」

「佐野君に言わせてしまってすまないな。今年は……そうだね。できれば13日から15日の間に伺えるとありがたいかな」

「14日は用があるので無理ですが、13日か15日であれば大丈夫ですよ」

「そうか。今年は14日にごみ拾いをするのかな?」

「そうです」

「そうかそうか。それは忙しいね。前と後だったら佐野君はどちらがいいのかな?」


 ちょっと考える。

 12日も養鶏場の方でごみ拾いウォークなのだ。どちらにせよ忙しいことに変わりはない。


「そうですね……13日の方がいいかもしれません」

「佐野君」

「はい」

「またごみ拾いをするんだよね?」

「はい、します」


 今年はいろいろ場所を変えてだけど。


「そうかそうか。そのごみ拾いウォークには大人も参加できるのかな?」

「できますけど……朝ものすごく早い時間から行うので……」

「ああ、私たちが参加するわけではないよ。息子と孫にどうかなと思ってね」

「圭司さんと将悟君なら大歓迎しますが、申し込みは開催前日の12時までに受け付ける形にはなります」


 そして俺は開催日と注意事項を山倉さんに話した。


「確か、ニワトリたちと歩くんだったね?」

「はい。ですが普通にごみ拾いをするだけですよ?」

「いやいや、佐野君のところのニワトリたちと一緒にいるだけで楽しそうじゃないか。13日にお伺いしよう。息子たちが参加するとしたら14日になると思うから、早めに聞いておくよ」

「はい、よろしくお願いします」


 というわけで来週の予定もパンパンになった。墓参りはできるうちにしてもらった方がいいしな。

 表に出てユマとメイの様子を見る。二羽はあまり日が当たらないところで草をつついていた。


「俺も墓参りしないとな」


 うちの山の上の墓参りもそうだが、じーちゃんの墓参りも行ってない。今度は日帰りにしないと無理矢理にでもユマが付いてきそうである。


「今日の夏祭り、平和に終わりますように」


 相川さんが妙齢の女性に声をかけられたりしたらたいへんそうだし。

 俺は山の上に向かって手を合わせた。

 心地いい風が吹いて、俺の周りをくるくると舞った後どこかへ飛んで行ったみたいだった。

 すっかり不思議なことにも慣れてしまったなと苦笑する。生活に根差しているのだから気にしてもしかたないのだ。


「おーい、ユマ、メイ、青菜食うかー?」


 二羽に声をかける。二羽は頭を上げてトトトッと駆け寄ってきた。

 ホント、かわいくてしかたなかった。



ーーーーー

明日は「山暮らし~」2巻の発売日です! どきどきですよっ!

記念SSを明日中に上げる予定です。フォロワーメールの配信もあります。

そして他にもお楽しみがあるはずっ!(明日発表です)


連載の次の更新は、3/14(火)の予定です。



KAC参加中です。

昨日上げたものがありますので、よろしければ読んでやってくださいませー。


「夜中に散歩なんてするもんじゃない」

https://kakuyomu.jp/works/16817330654162374461


お題「深夜の散歩で起きた出来事」

現ファ短編。夢破れた青年が実家に帰り、夜中に散歩したら?


これからもどうぞよろしくお願いします。

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