516.うちのニワトリも過保護みたいです
草刈りをし、飛び散った草を集める。乾いたらまとめて燃やすのだ。
以前廃屋があった辺りからも雑草が生えてきていた。ホント、どっからでも生えてくるよなと苦笑した。
「食べたい草があったら食べていいからな~」
俺にはわからないし。ドクダミがくさいってことはわかるけど。
ユマとひよこがぽてぽて歩いているのを見ていると、なんか幸せなドラマを見ているような気になる。ポチとタマが駆けているところを見るとパニック映画かなと思ってしまうのだが。(超失礼)
家に戻ってスマホを確認したら相川さんから返信が入っていた。
「明日でもいいですよ」
「ありがとうございます。じゃあ明日行きましょう」
と打ってから、メイをどうしたもんかと考えた。肩掛け鞄に入れて俺が持ち歩けばいいのか? それともユマに頼めばいいのだろうか。
メイを山に置いていくのはやっぱ考えるしなー。
「どうしよう……」
頭を抱えた。
「ユマー」
表に声をかける。
「ナーニ?」
「明日相川さんと出かけるんだけどさ、メイのことどうしよう?」
ユマがひよこの歩みを軌道修正してぽてぽてとゆっくり戻ってきた。
「オデカケー?」
コキャッとユマが首を傾げた。
「明日、相川さんと出かけるんだ」
「ンー?」
ユマが今度は反対側にコキャッと首を傾げた。そんな技もあったのか。
「ユマ、明日一緒に出かけるか? 出かけるとしたら、メイはどうしようか」
「カイモノー?」
「うん、買物に行く」
「イカナーイ」
「わかった」
ユマなりの判断基準があったらしい。ってことは相川さんにLINEを入れておいた方がいいだろう。ユマはまたひよことぽてぽて歩いていった。ユマはすっかりママだなと思った。
「明日は俺一人で向かいます」
「わかりました」
10時ぐらいに出て、ホームセンターで玄関用の網戸を見て、スーパーに寄って帰るかんじか。そろそろ雨が降りそうだが、明日は降らないといいなと思った。
ユマとひよこはけっこう長い時間表にいた。
夕方ポチとタマが帰ってきてから、明日は俺だけで相川さんと出かけるという話はした。ポチとタマがユマとひよこを見やる。それは一緒に行かなくていいのかと言っているようにも見えた。
ってそれは俺の欲目か。明日向かうのはホームセンターだからどちらにせよユマと一緒だと問題があるんだよな。いつもの駐車場に停めるだけで済むならいいんだけど。
俺はもう居間で寝ることは許されないらしい。お風呂の後は居間から追い出されてしまう。
くそう、こんなことなら(以下略
翌朝、すっきりと目覚めた。今日は雨は降らないらしい。10時過ぎにニシ山の麓から下りたところで待ち合わせをしている。
今日もポチとタマは朝飯を食べるとツッタカターと遊びに行ったが、何故か俺が出かける直前には戻ってきた。
「あれ? ポチ、タマ、どうしたんだ?」
「メイー」
「メイー、オセワー」
「ええ?」
どうやらメイが気になって戻ってきたらしい。
戸惑う俺にタマが近づいてきた。え? 何だ?
「ハヤクー、カエルー」
「アッ、ハイ」
メイが心配で戻ってはきたが、また遊びに行きたいから早く帰ってこいということらしい。過保護なんだかそうじゃないんだかさっぱりわからん。
「サノー」
ユマがひよことぽてぽてやってきた。
「ハヤクー、カエルー」
「うん、ユマも無理するなよ」
ユマの羽をそっと撫でたら、タマにつつかれた。なんでだ。
いろいろ腑に落ちない部分もあったが、「じゃあ行ってくるなー」と後ろ髪引かれながらも出かけることにした。
ニシ山の麓辺りに向かうと、相川さんの軽トラが待っていた。
「お待たせしました、行きましょう」
「はい、先に行きますね」
窓を開けて互いに言い、N町まで軽トラを走らせる。まだ窓を開けていればいいぐらいの気候だが、ホームセンターに着いたらなんか暑かった。ユマが隣にいないことが切ない。N町までの距離がとても長いものに感じられた。やっぱ隣に誰かいるかいないで変わるものだ。
「なんか、思ったより時間がかかったような気がしますね」
相川さんが苦笑した。やはりリンさんが隣にいないと違うようだ。
「ですね。今日はホームセンターだから、連れてこなくて正解なんですけど」
俺も苦笑した。
玄関用の網戸はサンプルのようなものはあった。
「玄関用の網戸ですか。確かにけっこう虫が入ってきますよね。うちも設置してもいいんですが、絶対テンが壊しそうな気がするからなぁ……」
相川さんが困ったように言う。リンさんなら手があるから自分で開閉はできるだろうがテンさんはそうもいかない。しかもテンさんは家に戻ってくる時間が読めないのだという。ガラス戸が閉まっていれば開くまで待つかもしれないが、網戸だと気づかない可能性が高い。あまり目はよくないみたいだ。
引き戸タイプの網戸とか、巻くタイプの網戸とかいろいろ見てはみた。玄関の寸法も測ってはきたが、それに合わせて発注した方がよさそうである。
「巻くタイプとかの方がいいんですかねー」
「難しいですね」
一応引き戸タイプの物と巻くタイプを注文してみた。一つは壊される覚悟はしておくものである。
ーーーーー
書籍版の特典情報が出ました。
よろしければ近況ノートをご確認くださいませー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます