514.荷物が届いたらしいので
翌々日、おっちゃんから連絡があった。
実家から荷物が届いたらしい。荷物って。
「すみません、ありがとうございます。取りに行きますんで」
「おう、家にはいるからよろしくなー」
おそらくおっちゃんちに渡す物も入れてあるのだろう。タマとポチはとっくに出かけている。ユマがコキャッと首を傾げた。
「いい機会だから、そろそろメイも下ろすか」
自力で餌を取らせてもいいかもしれない。すでにシロツメクサとかそういったものは与えている。虫は取らないまでも草は自分で食べるだろう。
「ピィ」
「おっちゃんちに出かけるけど、ユマとメイはどうする?」
「イクー」
「ピヨ」
メイはどうすっかな。ユマにまたポーチを付けてもらい、そこにメイを入れて蓋をした。蓋をしたと言っても隙間はあるから息はできるし急ブレーキでもかけない限りは大丈夫だろう。よく考えたらこれぐらいの時すでにうちのニワトリたちは助手席に平気で乗ってた気がする。
あれ? もしかして俺、メイに対して過保護にしすぎか?
まぁでも一緒に育つのがいるわけじゃないもんな。本当は同い年の子がいるといいんだが、って人間の子じゃないっての。
軽トラにユマが乗ったことを確認して山を下りた。
「メイを連れて山を下りるのは初めてだなー」
「ウンー」
ユマが当たり前に相槌を打ってくれるのがなんか嬉しい。
「おっちゃんちに着いたら野菜もらおうなー」
「オヤサイー」
「ピィピィピィ」
ひよこも嬉しそうだ。にこにこしながらおっちゃんちに着いた。ユマもメイもかわいくてたまらん。
「こんにちは~」
ユマを軽トラから下ろし、ちょっと待ってもらいながら家の中に声をかけた。
「あら、昇ちゃんいらっしゃい。荷物はそこに置いてあるわよ」
「ありがとうございます。ユマとメイが一緒なんですが……」
「あらまぁ、どうしましょ!」
おばさんが嬉しそうに出てきて、ユマのところへ。
「あら、こんなところにメイちゃんが入ってるの?」
「開けると下りてしまうかもしれないんですが」
「いいじゃない。山以外ならどこにいてもいいわよ~」
おばさんがにこにこしている。出かける前にメイを地面に下ろすことはユマに伝えていた。ユマが頷くように首を動かす。ポーチからメイを出した。そして地面に下ろすと、メイはぽてぽてと歩き出した。それにユマが付いていく。普通ひよこってのは誰かに付いて歩くもんじゃないのか?
「野菜くずとか持ってくるわね~」
「ありがとうございます」
玄関の下駄箱の上に置いてある荷物はけっこう大きかった。一度軽トラに持ち帰って中身を確認した。案の定おっちゃんち宛ての包みが入っていた。それとインスタントラーメンやごはんのお供、お茶漬け、缶詰などと共に母からの手紙と招待状が入っていた。もれがあるといけないのでまず母からの手紙にざっと目を通した。
淡いピンク色の包みは湯本さんに、食べ物は俺に、そして招待状の返事はしっかりすることなどが書かれていた。内容はそれだけではなく、俺が生前贈与されたマンションと駐車場についても書かれていてげんなりした。詳しくは後で読むことにし、包みを持っておっちゃんちに戻った。
「おばさん、これ両親からなんですが……」
「まぁ! そんな気を遣わなくてもよかったのに~。はい、お野菜よ。これをあげてもらっていいかしら?」
「はい、ありがとうございます」
包みを渡し、プラスチックのトレイを受け取った。野菜くずとは言っているが、食べやすい大きさに切られた野菜も載っている。ありがたいことだと思った。
「おー、昇平来たか」
「はい。ちょっとユマとメイに餌をあげてきますね」
「ひよこも来てんのか? 俺も行くわ」
ってことでおっちゃんがつっかけを履いて出てきた。
ユマはひよこの歩みの合わせたらしく、まだ庭にいた。
「ユマ、メイ、餌だぞ」
ユマがココッと返事をした。ぽてぽてと歩いているメイを掬い上げて餌を載せたトレイの上に乗せてやった。
「ユマもメイも食べてくれ」
ユマはメイの様子を見ながら自分も野菜をつついた。なんとも微笑ましい光景である。メイは夢中になって野菜をついばんでいた。
「ユマはすげえなぁ。ひよこの動きをしっかり見てる。いい母親ってかんじだな」
「ですね。しっかり面倒を看てくれるんですよ」
「運動不足にはならねえのか?」
「それがちょっと心配ですね」
「他のニワトリに替わってもらった方がいいぞ」
「そうですね」
確かに卵を温めるのもユマだったし、世話をしているのもユマだけじゃいろいろ問題だろう。ひよこの期間は短いとはいってもユマの負担が大きすぎる。ポチやタマも含めて家族会議はした方がいいと思った。
つーか。
「……まぁ、ニワトリたちが俺の話を聞いてくれればですが……」
「頭いいんだからそれぐらいわかんだろ?」
「ですねー……」
おっちゃんは最初からうちのニワトリたちにもしっかり話してるしな。
「昇ちゃん、お昼ご飯は食べて行くのよね~?」
「え? あっ……」
そういえば何も考えずに出てきてしまった。
「食ってけ食ってけ」
「はい、お言葉に甘えます。はーい、いただいていきまーす」
後半の返事はおばさんに返したものだ。
「わかったわー」
ちょっと来る時間は考えるべきだったと反省した。そうだよ、そろそろ昼じゃないか。悪いことをしたと思ったが、おばさんはまた張り切って料理をしてくれた。
「二人だけだと張り合いがないのよね~。昇ちゃんは遠慮しないでいつでも来てくれていいんだからね」
「ありがとうございます」
おばさんが本気で言っているのがわかるだけに、あまり甘えてはいけないなと思ったのだった。
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