【お知らせ】佐野君にお願いしてみました

 その日は、どこかへ出かける予定はないはずだった。

 だから俺はいつも通り目覚ましをかけて寝たのだが。


「ぐええっ!?」


 何故かタマが足の上に乗った。


「……えっ? なんでっ?」


 いつもならタマはすぐ俺の上からどくというのに、今日に限ってどく気配がない。しかも何故かタマは封筒らしきものを咥えていた。


「……なんだそれ?」


 タマは上半身を起こそうとした俺に、首を倒すようにして封筒を落とした。


「手紙? なんだろ……」


 封筒の表に何か書いてある。


「なになに……この中身を音読せよ? なんじゃそりゃ」


 うちにはポストもないのにいったい何が起きたのだろう。しかも宛名は佐野昇平様って書いてあるし。怪しいがタマの目がとても怖い。

 とりあえずタマに降りてもらい、俺は封を切った。

 タマは珍しく部屋から出ていかないで一緒にいる。読まないとただじゃおかないぞという雰囲気だ。なんなんだよいったい。


「……この度、佐野君とニワトリたちの生活の様子が書籍化することになりました」


 はい?


「カドカワBOOKSさんから12月9日(金)に出版されます。イラストレーターはしの様で、ニワトリたちを躍動感いっぱいに描いていただけています」


 自分でも何を読んでいるんだかわからない。


「Web版では語られなかったニワトリエピソードの追加の他、書下ろしが三篇も入った豪華仕様。ポチやタマが普段どこまで出かけているのか知ることができます……ってそれは俺も知りたいんだけど?」


 どゆこと?


「更に初版本には2000字程度のSSがweb上で読めるQRコード付しおりも付いてきます。佐野君が村に着いた頃のお話です。さぁ初版本を買い逃さないように是非予約をしてください。ってどこで買えるんだ? え? 本屋で予約できる? アマゾンさんでも?」


 えーと……?

 俺とニワトリたちの生活が本になるってどゆこと? ってことはもらえるのか?

 よくわからないけど起きて、タマと共に居間へ移動し、いつも通りニワトリたちに餌をあげることにした。


「……本って? なんのことだ?」

「ヨロシクー」

「ヨロシクー」

「ヨロシクー」

「え? 何? お前らわかってんの!?」


 なんだか狐につままれた気分だった。

 今日もタマとユマが卵を産んでくれて幸せになったから、それで俺はもうその怪しげな手紙のことは忘れてしまったのだった。

 贅沢に使ったオムレツがたまらん。朝から満腹である。



 その頃ニシ山では。


「……カドカワから出版するからアルファポリスから引っ越しをしないといけなかったんですね。僕とリンやテンがどのように描かれるのかも、とても楽しみです」

「タノシミダ」

「タノシミ?」


 テンとリンは身体をゆらりゆらりとさせてよくわかっていなかったが、相川が楽しそうなのでいいことにした。



ーーーーー

どうぞこれからも「前略、山暮らしを始めました。」をよろしくお願いします。

詳細はのちほど近況ノートに載せますねー。

先にアルファポリスさんに外部登録を全部してきます。忙しーい(汗

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