269.いつだっておいしいものを食べるには ※レシピ付(いいかげん)

 いつもいろんな人に助けられて暮らしているなとしみじみ思う。

 夜は相川さんが持ってきてくれたお惣菜を温めたり、みそ漬けのシシ肉を焼いたりして夕飯にした。卵スープは多めに作っておいたから夕飯までもった。相川さんが持ってきてくれたお惣菜は中華だった。昨夜どうしても食べたくなって多めに作ってしまったのだという。レンジで温め直してもおいしいもの、ということで麻婆豆腐と腰果鶏丁(鶏肉のカシューナッツ炒め)を持ってきてくれた。夕飯が一気に豪華になった。


「佐野さんのスープもベースは鶏ガラですよね」

「ええ、卵スープはやっぱり鶏ガラかなーって」

「中華コーンスープが飲みたくなりました」

「あ、確かに飲みたいかも」


 中華料理屋で飲める中華コーンスープ、おいしいんだよな。ラーメン屋とかでは飲めない。中華料理屋じゃないとないからなかなか飲めなかった。


「コーンのホール缶とクリーム缶があれば作れますよ」

「本当ですか!?」


 さっそくレシピを聞いてメモをする。鶏ガラスープの素などは自分で味をみながらという形になりそうだ。片栗粉でとろみをつけたら身体が温まるだろう。まさかお店の味が家でも味わえるなんて思ってもみなかった。でもクリーム缶は買ってないから次買物に行ける時に買ってこようと思った。


「相川さんて、元々料理好きだったんですか?」

「……うーん、そうでもないんですけどね。おいしいものを食べたいと思った時に自分で作れたら、いつでも食べられるのではないかと考えまして」

「確かに、それはそうですよね」


 自分でおいしいものが作れたらずっとおいしいものが食べられる。それは真理だ。


「食いしん坊なんですよ」


 相川さんは苦笑した。


「食の追求は素晴らしいと思います。俺は……食べられればいい方なんで」

「でも佐野さんもいろいろ作ってますよね」

「あー……どうしても同じ味だと飽きますしね」


 山暮らしはなんだかんだいって体力勝負だ。どうせ食べるならおいしいものを……ってそういうことなんだよな。

 ガラス扉の向こうを見ようとする。もう真っ暗だ。擦りガラスの向こうはまだ雪が降っているように見えた。


「このまま明日まで降り続けますかねー」


 そうなったら迷惑だなぁと思う。TVをつける。ちょうどニュースの時間だった。

 適当にニュースを見て肝心要の天気予報を見る。明日はこの辺りは曇になっていた。明後日以降は何日かは晴れるらしい。それで少しは溶けてくれるといいのだが。


「麓の方はもう止んでいるとは思いますけど、山はなかなかですよね。裏も山が続いてますし」

「そうですよね……」


 これは覚悟しないといけないようだ。相川さんが言う通り、うちの山の南側以外は全て山なのである。そりゃあ降り出したらなかなか止まないだろう。


「ってことは明日も狩りはできなさそうですね」

「電話しておきます」


 一応みんな中止だと思っているだろうが、連絡はしておいた方がいい。相川さんは陸奥さんと戸山さんに電話をした。


「ええ、まだ佐野さんのところ降ってるんですよ。何センチメートル積もるかわかりませんし。え? はい。そっちはみぞれですか……。寒いですね」


 相川さんが電話を切る。


「明日は中止です。雪かきですね」

「そうですね……」

「ユキカキー?」


 げんなりしたらユマが反応した。


「うん、明日な。手伝ってくれると助かる」

「ユキカキー!」


 ユマがわーいというように羽をばさばさ動かした。雪かき好きなニワトリってなんだろう。面白いしかわいいな。


「ユキカキー?」

「ユキカキー?」


 ポチとタマも反応してくれた。


「雪を尾で払うんだよ。明日試してみるか?」

「イイヨー」

「イイヨー」


 よし、うちのニワトリたちは本当にいい子だ。別に手伝ってくれなくてもいい子だけどな。


「すぐに飽きたら飽きたで……うん、あまり期待はしないようにしよう」


 期待しすぎてすぐに投げ出されたら落胆が大きいし。うんうんと自分に言い聞かせる。相川さんが笑んだ。


「やってみようって思うことがすごいですよね。ためらいもなにもないのが少し羨ましいです」

「……その分とんでもないこともしますけどね」


 まさに紙一重だ。イノシシとか平気で狩ってくるし。下手したらクマとかも狩ってきそうでこわい。春は要注意だな。


「踊らにゃ損ですよ」

「見る阿呆も似たようなものですよ。踊りたくなったら踊ればいいんです。みんな性格も違うんですから」


 阿波踊りの出だしだったかな。無理して踊らなくてもいいと俺は思う。逃げてきた自分をただ正当化しているだけだが、実家にいて耐える必要もない。周りはもう気にしていないかもしれないけど、俺が嫌なのだからしかたない。


「佐野さんは優しいですよね」

「面倒くさがりなだけですよ」


 お風呂を用意して先に入ってもらった。寒い部屋に寝かせるのもアレなので、今日はみんなで居間で寝ることにした。こたつもあるし。みんな、と言ってもニワトリの方が数が多いのだが、不思議と嬉しく感じられた。オイルヒーターさまさまである。



ーーーーー

中華コーンスープ(ざっくりだけど注釈が多い)


コーン缶(クリーム)1、コーン缶(ホール)1、卵3,4個、味付け(鶏ガラスープの素大さじ2、塩胡椒、塩小さじ1 味が足りないと思ったら鶏ガラを大めに入れて調整)、水とき片栗粉(片栗粉大さじ1に対して水大さじ2)、お好みでショウガ汁少々(卵のくさみが取れる)


大きめの鍋にコーン缶(クリーム)、コーン缶(ホール)を入れ、水を1ℓ以上入れる(水の量は自分でどうにか考えよう。特に考えて入れてない。もしかしたら1.5ℓ以上入れてるかもー)

火にかけながらかき回す。(火にかけて沸騰するまで放置するとクリームが焦げる)

卵は溶いておく。水溶き片栗粉も溶いておく。(すぐ固まる)

沸騰したら味付けをして、水溶き片栗粉を入れ、再度沸騰したら卵を回し入れる。味が薄かったら足す。

すごく適当なので水の量と味付けは自分で調整してくださいな。(塩はしょっぱいので足す際は注意~。我が家の鶏ガラスープの素は李錦記の業務用の缶を使ってます。youkiの鶏ガラスープの素もいいかも)中華料理屋にある中華コーンスープがおなかいっぱい飲めます。子どもが大好きです。

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